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ルネサス成長へ材料はあるが「意欲足りない」ルネサス 社長兼CEO 呉文精氏(3/4 ページ)

» 2016年07月08日 12時10分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

経営の自由度がないのは望ましくない

――ルネサス株式の約70%を持つ大株主である産業革新機構の株式売却禁止期間が解け、売却先が注目されている。

呉CEO 株主が誰であろうと、企業はその価値を上げることに尽きる。ただ、われわれに経営の自由度がないカタチになるのは、私も、経営陣も、社員も望ましくないと思っている。

――古巣の日本電産も買収に意欲を見せている。

呉CEO 日本電産も(ルネサスにとって)良いお客さんであり、既に8社のお客さんに出資いただいているように、お客さんにある程度の株を持ってもらうことは、非常にありがたいこと。けれども、グローバルな半導体業界の流れは、電機メーカーの1部門や子会社では、負けパターンになっている。

 現在、出資をしてもらっている8社のお客さんからは、「自分の傘下に入ってやってくれ」とは言われていない。(出資する8社の企業に対し)厳しい時期に助けてもらったことへ恩返しするならば、ルネサスがグローバルな半導体メーカーとして成功することだと思っている。そのためにも、どういう株主構成が良いかを考えれば、特定のメーカーの傘下、というのは望ましくないと思っている。これは、経営陣も同じであり、革新機構にも経営陣の考えとして伝えている。

 ただし、あくまでも、革新機構の持っている株式の話であり、われわれにどこに、いつ売るかなどの決定権はない。革新機構にはわれわれの成長戦略、経営陣の考えを伝えてあり、革新機構は「はい、そうですか」という状況で、それ以上でも、それ以下でもない。

 現時点では、革新機構に私を含めた経営陣にルネサスの経営を任されているので、われわれをサポートしてもらっていると思っている。(産業革新機構の判断によって)経営のやるべきことは変わらず、それで不安に思うことない。社員にも、ルネサスがグローバルに戦える半導体メーカーになるように、余計なことを考えず、一緒に戦ってほしいと話している。

海外役員も意思決定に加える

――経営のグローバル化を進める方針も打ち出している。具体的にどういったことを行うのか。

呉CEO 1つは、会議体の見直し。現在、米国と欧州にそれぞれシニアバイスプレジデント(SVP)が1人ずついるが、業績進捗報告会には参加しているものの、あまり経営の意思決定を行う会議に加わっていない。英語の資料を作って、会議をして、意思決定の会議に海外の2人のSVPを加えることも考えている。

 これまでは、いろいろなことが日本、本社で決まり、海外に指令として流してきた。しかし、マーケットは結構、海外が大きくなっている。(本社のある東京・)豊洲の部屋で、ドイツ、米国の顧客の考え、中国のスペック分からない。成長戦略を立てる上で、これまで通りに進めれば、海外の声が反映されないので、ぜひ、意思決定にSVPを加えていく。既に、欧米のトップとは月に1時間、1対1で議題を決めない会話をしている。通常の業務以外に、困ったこと、言いたいことを直接話せる場を作ることを約束している。

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