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だから減らない? 鉄道への飛び込みは“お手軽”か世界を「数字」で回してみよう(32) 人身事故(1/8 ページ)

このシリーズを始めて以来、「鉄道を使った自殺は、他の自殺より“軽い”ような気がする」という印象を拭えずにいます。そこで今回、なぜ“軽い”と感じるのか、それを具体的に検討してみました。

» 2016年07月19日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]
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「世界を『数字』で回してみよう」現在のテーマは「人身事故」。日常的に電車を使っている人なら、一度は怒りを覚えたことがある……というのが本当のところではないでしょうか。今回のシリーズでは、このテーマに思い切って踏み込み、「人身事故」を冷静に分析します。⇒連載バックナンバーはこちらから



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泥酔した人をホームで見かけたら……?

 もう10年以上にもなるでしょうか、私は会社で「傾聴」をテーマとした、主任向けの研修を受け(させられ)ていました。その日は「自分の性格を分析する」というテーマで、研修を受けていた全員に1つのテーマが出されました。

『帰宅時に、駅のホームで泥酔して駅のホームを、ふらふらと歩いている男性を見ました。あなたは、この男性に対してどうしますか?』

 研修生の多くが、「ホームから転落しそうになったらすぐつかめるよう、その男性の側を歩く」とか、「『危ないですよ』と注意する」などの意見を出す中、私だけは異なる見方を持っていました。

その男性をずっと見守って、ホームに落ちていく様(さま)を、じっくりと観察する

 酔客がホームに落ちていく様子など、そうそう見られる光景ではありません。

 そして、この観察は、鉄道の人身事故を防止するシステムを考案する研究員として、得難いチャンスでもあります 。

―― と、その理由を丁寧に説明したものの、

 教室は水を打ったように静まり返り、研修者(講師も含めて)、全員がドン引きしているのが感じられました。

 あ、これはマズい ―― と、機敏に空気を読んだ私は、慌てて付け加えました。

「あ、そうそう私と帰宅方向と同じホームに落ちていくかもしれない場合は、殴り倒してでも、その男性がホームから落ちるのを止めますよ。帰宅の電車を止められたら、困りますからね、はっはっはっ

と、軽いジョークをかましてフォローしたつもりだったのですが ―― 教室の空気をさらに凍らせただけでした。

 そして、その後、その研修は、ずっと盛り下がったままでした。

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