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» 2016年07月19日 10時30分 UPDATE

より高速/大容量化へ、革新続く無線通信技術:テラヘルツ波帯無線、通信速度は光通信の領域に (2/3)

[馬本隆綱,EE Times Japan]

送信パワーは30μWだが……

 試作した送信回路のチップは、外形寸法が3×2mmである。中間周波数(IF)信号と局部発振器(LO)信号を重畳して、最終段のキュービックミキサーに入力する。これによって、IF信号から300GHz帯へと、変調信号を歪ませることなく、周波数変換を行うことができる。また、キュービックミキサーを32個並列接続して電力を結合する技術も開発した。これによって、テラヘルツ波帯信号の出力レベルを高めることができたという。

左は開発した送信回路のブロック図、右は送信機の実測結果 (クリックで拡大) 出典:広島大学

 藤島氏は、テラヘルツ波帯無線通信における通信距離にも言及した。藤島氏らが開発したCMOSプロセスによる300GHz帯送信機の送信パワーは30μWと小さい。ただ、「通信距離を決める要素は送信パワーだけでない。アンテナの利得や変調方式、ビットエラーレート、周波数などにも依存する」という。

 テラヘルツ波帯送信機は、ミリ波帯(57〜66GHz)を用いた無線通信システムに比べて、同等の送信パワーであれば、アンテナ利得が高くないと通信できる距離は短くなる。通信帯域を絞り、利得が24dBiのアンテナ(アンテナ直径1cm)を用いると、30μW程度の送信パワーであっても、通信距離は1mに達する。利得が70dBi(同1m)のアンテナを用いると、計算上の通信距離は10kmになるという。

 また、テラヘルツ波帯無線通信になると、アンテナ利得を0dBi、受信時SNRを0dBと規格化した場合に、シンボルレートは化合物半導体や光ミキサーを用いた送信機と比べて、大きな差異はないという。

300GHz帯のCMOS送信機における無線実験結果と、テラヘルツ波帯送信機の比較 (クリックで拡大) 出典:広島大学

 利用すべき周波数範囲として藤島氏は、下限が265〜275GHz、上限は大気減衰のピークとなる325GHzと話す。また、製造コストの面から、既存の無線システムとハードウェア互換性を持たせるため、バンド幅は2.16GHzの整数倍にすることが重要であると述べた。

300GHz帯チャンネルプラン (クリックで拡大) 出典:広島大学

 藤島氏は、高速で大容量のデータ伝送を可能とするテラヘルツ波帯無線通信の応用分野や将来性についても触れた。現在は光ファイバーを利用しているような用途で、無線通信への切り替えが進むとみている。例えば、データセンターに設置された装置間、あるいは機器内をワイヤレスで接続することができる。8K映像を非圧縮で伝送することも可能となる。

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