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» 2016年07月26日 10時30分 UPDATE

山裏でもリアルタイム制御:遅延50ミリ秒未満のロボット向け無線中継技術 (1/2)

情報通信研究機構と産業技術総合研究所の研究グループは、制御用の電波が届かない場所にあるロボットを他のロボットを経由して遠隔制御し、その状態を監視する技術を開発したと発表した。

[庄司智昭,EE Times Japan]

ロボットを途切れなく遠隔制御

 情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは2016年7月25日、制御用の電波が届かない場所(見通し外)にあるロボットを他のロボットを経由して遠隔制御し、その状態を監視する技術を開発したと発表した。

 操縦者が広い範囲を移動するロボットを遠隔制御するためには、電波による無線通信が用いられることが多い。しかし、ロボットが厚い壁や建物、山など障害物の反対側に回り込んだ場合、電波は遮られて通信が切れ、遠隔制御ができなくなる。その場合、ロボット側から送られる位置や姿勢などのデータも届かなくなってしまう。

 これまでも他のロボットを経由して目的のロボットを制御するアドホックマルチホップ通信はあった。アドホックマルチホップ通信の多くは、主にインターネット用として設計された無線LAN技術をそのまま流用しているため、制御には適しておらず、複数のロボットを経由し、通信経路が周囲の環境の変化に応じて切り替わった場合に通信が1度切れてしまい、その間、制御が停止してしまうという課題があった。

 また、多くのロボットは、制御用の電波として2.4GHz帯を活用しているが、2.4GHz帯は、PCやスマートフォンに標準搭載されている無線LANだけでなく、電子レンジなどにも使われている。つまり、混信を受けるリスクがあるとともに、障害物による遮蔽(しゃへい)や減衰を受けやすいという課題もあったという。

システムの概念図 (クリックで拡大) 出典:NICT

 今回発表した技術を用いることで、操縦者とロボットが見通し外の位置関係でも、無線が同時に複数局に対して送信する性質を活用して、制御データとテレメトリーデータを、中継局を経由する通信経路によって冗長性を持たせて伝送できる。これにより、ロボットを途切れなく遠隔制御することを可能にしたという。

 電波が伝わりにくい建物内や災害時のロボットによる調査だけでなく、山間部でのドローンの低高度飛行によるモニタリング調査や物資の配送などへの応用、さらには、複数のロボットやドローンが自律的にお互いに協調し合いながら高い信頼性を持つ無線ネットワークを構成するシステム実現の基盤になることが期待される。

時分割多元接続方式を制御に採用

 NICTは、同技術を実現したポイントとして、「通信方式を“ロボットの制御用”であることに特化し、中継伝送することを前提として、応答遅延時間が小さく、かつ、通信信号同士が互いに干渉しないことを両立させた新たな通信手順(アクセス制御プロトコル)を設計、開発したこと」を挙げている。

 具体的には、制御局と中継局間、中継局とロボット局間などの各経路に対し、通信信号をやりとりする時間のタイミングをあらかじめ割り振る「時分割多元接続方式」を、ロボット制御用として採用。データ伝送における時間スロットを効率的に使用できるとともに、通信路を確保するために応答遅延時間を一定に保つことができる。途中の中継局を経由しても、ロボットが受信する制御データの“鮮度”を一定に保つとした。

画像はイメージです

 また、従来の通信方式では端末の位置が固定、もしくは、あまり頻繁に動かない場合を前提としており、時間がかかっても必要なデータを全て送るために、通信開始前に中継経路の探索や設定などが行われている。同技術はこの手順をなくし、移動する端末を対象とした制御用として単純化した。異なる経路を経由して受信される信号を時分割多元接続方式を用いて常に全て受信し、受信側でどちらか強い信号だけを受け取るという手法を、ロボット制御用の中継方式として初めて採用したという。

 これらの技術により、これまで条件によって数十ミリ秒〜数百ミリ秒まで変動していた中継局経由の応答遅延時間を、今回の開発装置では制御データの送信周期である50ミリ秒以内に抑えた。制御の不安定化の回避を可能にするとともに、中継経路がロボットの移動によって変更された時に発生する通信の切断をなくすことが可能になる。

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