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燃えにくく、重さも半分の太陽電池モジュールシリコーンゴム封止材で実現(1/2 ページ)

産業技術総合研究所と信越化学工業は共同で、シリコーンゴムでできたシート状の封止材を用いた結晶シリコン太陽電池モジュールを開発した。軽量で燃えにくいという特長を備える。

» 2016年09月06日 13時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

電気自動車への搭載に向く新モジュール

 産業技術総合研究所太陽光発電研究センターの上級主任研究員である原浩二郎氏らは信越化学工業と共同で、シリコーンゴムでできたシート状の封止材を用いた結晶シリコン太陽電池モジュールを開発したと発表した。軽量で燃えにくいなどの特長を持ち、自動車への搭載などに適しているという。

開発した太陽電池モジュールの外観(左)と、燃焼試験中の様子(右上)、試験後の裏面(右下) 出典:産業技術総合研究所

 開発した新しい太陽電池モジュールは、重量の大きいガラス基板や可燃性の有機部材を用いず、シリコーンゴム封止材を用いた。産総研によると、シリコーンゴム封止材の太陽電池への応用は1980年代に製造された実績があり、「設置から現在まで約30年の屋外設置においても安定して発電量を維持している報告例もある」という。さらに信越化学は、従来のモジュール製造装置や工程が利用できる太陽電池用のシリコーンゴムシート封止材を開発。その上で、信越化学は産総研と共同で太陽電池モジュールを作製し、信頼性評価を行い、屋内環境試験において優れた信頼性を示すことを既に明らかにしている。

 しかし、シリコーン封止材は一般的に用いられるエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)封止材よりも比較的高コストでありEVA封止材の代替とするとモジュールコストの増加を伴うため、シリコーン封止材の導入が難しかった。

コストを抑制したモジュール

 そうした中で産総研と信越化学は、シリコーン封止材の使用によるモジュールコストの増加を抑制しつつ、難燃性などのシリコーンの特長を生かした新しい太陽電池モジュールを開発するに至った。

 開発したモジュールは、厚さ約500μmのシリコーンゴムシート封止材と、厚さ約50μmの難燃性の高分子フィルム表面材、裏面材に絶縁処理をしたアルミ合金板で構成され、ガラス表面材を用いない「サブストレート構造」とした。

従来型モジュール(上)と開発した新モジュール(下)の模式図 (クリックで拡大) 出典:産業技術総合研究所

 なお、一般的な従来型のモジュールは、結晶シリコン太陽電池を厚さ約3mmの白板強化ガラスでできた表面材、EVA封止材、バックシート(裏面材)で封入した「スーパーストレート構造」を採用。加えて、反り防止や架台への設置、固定などのためにアルミフレームが取り付けられている。

 サブストレート構造の新モジュールではアルミフレームを用いず、アルミ合金の裏面材により直接かつ簡単にモジュールを固定できる。従来モジュールに用いられるガラスやバックシート、アルミフレームなどの部材を削減することで、比較的に高コストのシリコーン封止材を利用した場合のモジュール全体のコストの増加を抑制した。

 難燃材料であるシリコーン封止材や高分子フィルム表面材と、金属のアルミ合金裏面材を用いることで、モジュール全体を難燃化することができ、さらには、アルミ合金板の厚さを抑えることで軽量化することもできる。産総研によると今回、試作したモジュールは「同じサイズの従来型モジュールの約半分の重量」としている。

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