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「人身事故での遅延」が裁判沙汰にならない理由から見えた、鉄道会社の律義さ世界を「数字」で回してみよう(34) 人身事故(5/11 ページ)

» 2016年09月12日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「飛び込み」は本当に“安い”のか

 では次に、(2)飛び込み以外の自殺のコストを再検討してみたいと思います。

 前々回に、鉄道を使った飛び込み自殺は、他の自殺手段と比べて、コスト(初期投資 + 実施手段 + 苦痛のトータルコスト)が安く、鉄道を使った飛び込み自殺は、自殺したい人にとって最適戦略であることを示しました。

 しかし、私は、他の自殺でも、低コストであることを示したいと思っているのです。

 もし、鉄道を使った飛び込み自殺よりも低いあるいは同程度のコストであれば、そちらをお勧めできるようになります。そうなれば、自殺したい人にとっても、鉄道の利用者である私たちにとってもWin-Winの関係になります

 さて、私が今回着目したのは「首吊り」です。

 首吊りは、本連載第1回でもご報告した通り、自殺の中でも最もポピュラーな自殺方法で、自殺全体の半分以上(65%)を占めています。

 「首吊り」は、わが国の法制度とも強い関連があります。わが国は、「首吊り」を刑罰の執行の手段として採用しているからです ―― つまり、絞首刑です。

 他の国では電気イス、ガス室、絞首刑、銃殺刑など、各種あるようですが、それでも、死刑執行を実施している国では、絞首刑はポピュラーなようです(今回は、死刑制度の是非については、スコープ外とします)。

 私が自殺の手段として「首吊り」に着目するのは、日本国憲法の第36条に、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」との規定があるからです。

 私はこれまで、法律の条文を結構な量、読んできたのですが、「絶対に」という文言が含まれる法文を初めて見ました。正直、ギョっとしました(少なくとも、私が仕事で係わっている特許法などの知的財産権法には、「絶対に」という言葉は「絶対に」ないです)。

 日本は、死刑制度を維持している国家で、かつ、憲法36条との関係上、「絞首刑は絶対に残酷ではない」ことになっています。つまり、自殺の手段としての「首吊り」は残酷でありえない、ということで、だから、確定死刑囚の人は、安心してもよいです☺


―― って、納得できるかぁ!


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