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半導体業界、次なる買収ターゲットは?M&Aの嵐が収まる気配はなく(1/5 ページ)

半導体業界におけるM&Aの嵐は収まる気配がない。2016年も、2015年ほどの数ではないものの、大規模な買収が相次いでいる。では、現時点で買収のターゲットとなりそうな“残っている企業”はどこなのだろうか。

» 2016年09月13日 10時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

大型M&Aが続く半導体業界

 2016年の世界半導体業界は、これまでの9カ月近くで既に、2015年に続く超大型合併買収の波に襲われた年となっている。2015年と異なっているのは、2016年の方が買収契約の数が少ないにもかかわらず、買収金額がかなり高額の案件があるという点だ。例えばソフトバンクは、ARMを3兆円超の現金で買収すると発表している。

 このように買収金額が上昇していることを受け、湧き上がってくる疑問は、「現在買収ターゲットとして残っている企業は?」「“掘り出し物”といえる企業は?」などではないだろうか。

 半導体メーカーが引き続き買収に意欲的である要因としては、半導体業界の成長が全体的に減速していることの他、コストの上昇、ベンチャーキャピタルによる投資の減少、利益率の低さなどが挙げられる。

 しかし、米国の市場調査会社であるIC Insightsでマーケットリサーチ担当シニアアナリストを務めるRob Lineback氏は、EE Timesのインタビューに対し、「2016年の半導体市場では、“残存効果”が起こっている。メーカー各社は現在も、2015年に発表された合併買収に反応しながら、有利な地位を得ようと画策している」と述べる。「つまり、M&Aの波によって、さらなる波が引き起こされているのだ。買収がうまくいかなかった(あるいは買収合戦に乗り遅れた)企業が次のターゲットとなっている。こうした状況が落ち着くまでには、この先1年を要するだろう」

買収先が減っていく?

 英国のプロフェッショナルサービスファームPricewaterhouseCoopers(PwC)のコンサルタントであり、US Semiconductor Advisoryの責任者を務めるRakesh Mehrotra氏と、同じくコンサルタントでUS Technology Deals Leaderを務めるRob Fisher氏は2016年8月、EE Timesの取材に対し、「合併買収の余地はまだ十分にある。過去18カ月間と比べると、ペースはやや遅くなるものの、合併買収の波は今後も続くだろう」と述べている。

2016年第1四半期半導体メーカー売上高ランキング
16Q1順位 15Q1順位 社名 15年Q1売上高 16年Q1売上高 前年同期比の成長率
1 1 Intel 12,067 13,115 9%
2 2 Samsung Electronics 9,336 9,340 0%
3 3 TSMC 6,995 6,122 ▲12%
4 7 Broadcom 3,679 3,550 ▲4%
5 4 Qualcomm 4,434 3,337 ▲25%
6 5 SK Hynix 4,380 3,063 ▲30%
7 6 Micron Technology 4,061 2,930 ▲28%
8 8 Texas Instruments 2,940 2,840 ▲5%
9 10 東芝 2,619 2,446 ▲7%
10 9 NXP Semiconductors 2,636 2,224 ▲16%
11 12 Infineon Technologies 1,666 1,776 7%
12 13 MediaTek 1,506 1,691 12%
13 11 STMicroelectronics 1,700 1,601 ▲6%
14 14 ルネサス エレクトロニクス 1,470 1,415 ▲4%
15 17 Apple 1,260 1,390 10%
16 15 GLOBALFOUNDRIES 1,436 1,360 ▲5%
17 20 NVIDIA 1,118 1,285 15%
18 16 ソニー 1,272 1,125 ▲12%
19 18 UMC 1,140 1,034 ▲9%
20 21 AMD 1,030 832 ▲19%
    上位20社合計 66,745 62,440 ▲6%
売上高の単位は百万米ドル。出典:IC Insights

 また両氏は、「今後は、よく似たレベルの中規模メーカーが、規模を拡大するために合併買収を行うとみられる。また、合併買収を試みたもののうまく実行できなかった企業が、より規模の大きい企業の買収ターゲットとなるだろう」と述べる。

 EE Timesは、どの企業が次なる買収ターゲットになるのかを確認すべく、複数の業界アナリストや観測筋にインタビューを行った。どのメーカーが、なぜ必要とされるのか、その理由について説明していきたい。

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