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生き残りへ辛うじて挑戦権を得たルネサス再編進む半導体業界の中で(2/3 ページ)

» 2016年09月13日 15時35分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

弱点補うパートナー

 Intersilの主力は、電源用半導体を中心にしたアナログ半導体だ。ルネサスも、これまで「アナログ&パワー事業」として同半導体を展開してきたが、マイコンやSoC事業に比べ、世界的な競争力は弱かった。そうした点で、Intersilは、ルネサスにとって、事業を補完する“良きパートナー”であることは間違いない。

Intersilの概要 (クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 地域別売上高を見ても、Intersilは、地元米国とアジアが大半を占め、逆に日本や欧州での売り上げ規模は小さい。ルネサスがIntersil製品を扱うことで、日本や欧州での売り上げ拡大も十分見込める。さらに、Intersilは、産業機器向け、宇宙航空向け、サーバ向けなどを得意とするものの、自動車向けの売り上げ規模は小さく、ルネサスが自動車向けでテコ入れできる余地は小さくない。

両社の売り上げ構成 (クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 ルネサスとIntersilは補完関係にあるものの、懸念材料もある。

買収後のアナログ半導体シェアは3%

 まず、アナログ半導体市場におけるルネサスの存在感はIntersilを買収しただけでは、あまり増さないだろう。現状、アナログ半導体市場におけるルネサスのシェアは2%程度であり、Intersilのシェアは1%程度。合わせても、3%程度にとどまる。一方で、アナログ半導体メーカーの再編が進んでいる。ON Semiconductorは、間もなくFairchild Semiconductorの買収を完了させる見込みである上、Analog DevicesはLinear Technologyを買収することで合意した。アナログ半導体シェア上位企業のM&Aにより、ルネサスはIntersilを買収しても、シェア上位陣との差は開くことになる。

IC Insightによる2015年のアナログICサプライヤーランキング 出典:IC Insights

 「アナログ半導体市場は寡占化進んでいる。そこに一石を投じる千載一遇のチャンスだった」(呉氏)とするが、今回の買収はその“寡占化するアナログ半導体市場”で生き残るための挑戦権を得ただけにすぎない。生き残りを図るためには、相当な勢いで、Texas InstrumentやAnalog Devices、Infineonなどのシェア上位陣を追い上げなければならない。

 まだ再編途上のアナログ半導体分野での売り上げ規模、シェアを考えるのであれば、もう1段のM&Aを仕掛ける必要がある。だが、ルネサスには、その余力はあまりないだろう。従って、ルネサスはIntersil買収効果を最大限、かつ、迅速に発揮しなければならないことになる。

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