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NTT、250Gビット/秒の短距離光伝送に成功4波長多重で1Tビット/秒の光伝送も可能に

NTTは、独自開発の帯域ダブラ技術を用い、光強度変調方式で250Gビット/秒の短距離光伝送に成功した。4波長を多重化すれば1Tビット/秒の光伝送が可能となる。

» 2016年09月28日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

「帯域ダブラ技術」でD-Aコンの性能限界を超える

 NTTは2016年9月、独自開発の帯域ダブラ技術を用い、光強度変調方式で250Gビット/秒の短距離光伝送に成功したと発表した。4波長を多重化することで、1Tビット/秒の光伝送が可能になるとみている。

 今回NTTが開発した帯域ダブラ技術は、デジタル信号処理ICから出力される信号の速度を2倍にすることができる技術である。これによって、より高速な信号出力時にネックになっているD-Aコンバーターの周波数帯域制限に関わる課題を解決することができるという。

 デジタル信号処理ICは、DSP部とD-Aコンバーター部で構成されており、このIC内部で前置信号処理を行う。この処理によって入力信号を、D-Aコンバーター出力限界速度以下の低周波帯域に変換し、2系統の信号として並列に出力する。これらの出力信号をデジタル信号処理ICの外部に接続したアナログ多重化器(AMUX:Analog Multiplexer)で1つの信号に合成することで、高速信号の出力を可能とする技術である。

 同時に、AMUXで生成される余分な信号については、AMUXで合成するときに打ち消しあうように逆算し、前置信号処理の際に2系統の信号を設定するなどの工夫も行った。

今回開発した帯域ダブラ技術と従来技術の比較 (クリックで拡大) 出典:NTT

 伝送システムでは300Gビット/秒の速度を達成するために、周波数帯域として約60GHzが必要となる。ところが従来のデジタル信号処理IC技術では、D-Aコンバーター部で約30GHzの周波数帯域制限があり、そのままで300Gビット/秒の伝送を行うことはできなかった。

 NTTは、今回開発した帯域ダブラ技術を用いて、30GHz帯域の2系統の信号を並列に生成し、AMUXで合成することによって周波数帯域60GHzを実現した。さらに、ADSLなどで用いられるデジタル変調方式「DMT(Discrete MultiTone)」技術を応用することで、「250Gビット/秒で10kmの光伝送を世界で初めて実現した」と主張する。

伝送実験の構成イメージ図。実験ではデジタル信号処理ICを模擬するため、PCで送信データを作成し、任意波形発生装置で信号を生成した (クリックで拡大) 出典:NTT
伝送速度に対するビット誤り率の測定結果 (クリックで拡大) 出典:NTT

 開発成果についてNTTは、4波長を多重化することで1Tビット/秒級の短距離光伝送など、大容量通信の実現につながる光伝送技術とみている。

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