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ペロブスカイト太陽電池の安定性が6倍向上、NIMS新規添加剤を開発

物質・材料研究機構(NIMS)は2016年10月、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に用いる新規添加剤を開発し、光照射下での安定性を6倍以上に向上させることに成功したと発表した。

» 2016年10月11日 10時30分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

「単結晶シリコン太陽電池に匹敵するものを」

 物質・材料研究機構(NIMS)エネルギー・環境材料研究拠点の韓礼元氏らの研究グループは2016年10月、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に用いる新規添加剤を開発し、光照射下での安定性を6倍以上に向上させることに成功したと発表した。

 ペロブスカイト太陽電池は、塗布法などの方法で安価に製造でき、研究レベルでは既に20%を超える効率が得られていることから注目を集める。有機無機ペロブスカイト材料を光吸収層とし、電子ホール輸送層を介して光生成キャリアを取り出す構造だ。

 いくつかのセル構造の中でも、酸化チタン、ペロブスカイト、ホール輸送層で構成された順セル構造のペロブスカイト太陽電池は、最も高い効率を示している。しかし、安定性が非常に低くなっており、光照射のない状態でも劣化が進み、200時間で約3割も変換効率が低下してしまう。そのため、安定性が低い原因の究明と、新規材料開発による長期安定性の向上が、実用化のために大きな課題となっていたという。

図1a:順セル構造ペロブスカイト太陽電池の模式図/図1b:ピリジン誘導体の分子構造(左)と青色で示すアルキル基のついた新規ピリジン誘導体の分子構造(右) (クリックで拡大) 出典:NIMS

 同研究グループは今回、図1aに示すセル構造において、新規添加剤の開発によって、安定性の大幅な向上を実現した。一般的な順セル構造のペロブスカイト太陽電池において、ホール輸送層の導電性を増加させるためには、ピリジン系の添加剤ターシャリーブチルピリジン(TBP)が用いられている(図1b)。同研究グループは、従来使用されているTBPは安定でなく、ペロブスカイト層と化学反応が生じることを突き止めた。

 TBP溶液をペロブスカイト層に塗ると、ペロブスカイト膜が黄色くなる。X線回折により、黄色い物質は、ペロブスカイト結晶が分解してPbI2−(TBP)xという錯体が形成されたことによるもので、ペロブスカイト太陽電池の性能が低下する原因になっていたのだ(図2)。また、赤外フーリエ分光(FT-IR)による計測で、反応は主にピリジン環にある窒素原子(N)と、ペロブスカイト結晶の間で生じることも分かったとする。

 そこで、窒素原子の隣接する位置にアルキル基を導入し、新規ピリジン誘導体2-アミルピリジン(2-Py)を合成。窒素とペロブスカイト結晶との立体障害効果*)によって、この化学反応を抑制することが可能になったという(図2)。

*)立体障害効果:2つの反応原子を空間的に近づくのを防ぐこと。

図2:TBPとペロブスカイト結晶の反応によってできるPBI2-(TBP)x錯体(左上)と、新規ピリジン誘導体のアルキル基の立体障害によるペロブスカイト結晶との反応抑制の説明図(右上)。下図はX線回折チャートを示す 出典:NIMS

 この結果、新規ピリジン誘導体を用いたペロブスカイト太陽電池は、暗所では1000時間を経ても性能の低下は生じなかった。連続光照射下でも、初期の変換効率から85%まで劣化する時間が、従来の添加剤の場合は25時間弱だったが、新規添加材で150時間まで伸ばすことができている。つまり、6倍以上の安定性の改善に成功した。

 今回の成果は、ペロブスカイト太陽電池の安定性を改善する新たなアプローチであり実用化を妨げる課題の解決につながることが期待される。同研究グループはリリース上で、「今後、安定性とともに効率向上にも取り組み、単結晶シリコン太陽電池に匹敵する高効率で、低コストのペロブスカイト太陽電池実現を目指す」と述べている。

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