IoT市場の鍵は「シェアリングエコノミー」にある：台湾Advantechが語る戦略（1/2 ページ）

IoT市場における3つのフェーズ

林口キャンパス （クリックで拡大）

　Advantech（以下、アドバンテック）は2016年10月27〜29日、第2期工事を終えたばかりの台湾・林口キャンパスで、顧客やパートナーを対象としたカンファレンス「2016 Advantech Embedded IoT Partner Summit」を開催した。

　産業用PCなど組み込み機器において高いシェアを持つ同社。2010年から新しいビジョン「インテリジェントプラネットの実現」を掲げ、IoT事業に大きく舵を切った。具体的には、センサーモジュールやゲートウェイなどのハードウェアと、収集したデータをクラウドサービスで活用するためのソフトウェアプラットフォーム「WISE-PaaS」^＊）を提供している。

＊）WISE-PaaS：Wireless IoT Solutions Embedded Platform as a Service

　同社CEOのKC Liu氏は、IoT市場の成長における同社の役割として3つのフェーズを挙げる。1つ目は、「IoT Devices」である。同社のビジネスの中心であるIoT Devicesだが、付加価値を提供するには、ハードウェアだけでなくソフトウェアやクラウドも含めたプラットフォームを提供しなければならない。そこで、2つ目のフェーズが、「IoT SRP（Solution Ready Package）／EIS（Edge Intelligence Server）」となる。現在、市場が立ち上がりつつあるIoT SRP／EISは、2025年にかけて成長すると予測している。

「EIS」の概要 （クリックで拡大）

　3つ目は、実際のサービスまで落とし込んだ「IoT Cloud Services」である。IoT Cloud Servicesでは、システムインテグレーター（SI）を中心とした同社の顧客がIoTビジネスを迅速に始められるよう、プラットフォームの拡充を進めていくという。

鍵はシェアリングエコノミー

　KC Liu氏は、成長するIoT市場に向けて「当社は、これまでのようなクローズな組織ではなく、“シェアリングプラットフォームカンパニー”へと変革している」と語る。

　WISE-PaaSでは、アライアンスを通じたエコシステムの構築を進めている。半導体やワイヤレス分野、システムインテグレーターで大手メーカーが名を連ねており（下記図を参照）、特にクラウド分野におけるアライアンスは注力しているようにみえる。Microsoftの「Microsoft Azure」と日本IBMの「SoftLayer」「Bluemix」との連携が既に可能であり、カンファレンスではARMの「mbed」との連携も強化すると発表した。

アドバンテックのパートナー一覧 （クリックで拡大）

　アドバンテックは、WISE-PaaSにおけるエコシステムの構築を“シェアリングエコノミー”と呼ぶ。同社PresidentのChaney Ho氏は、「それぞれのパートナーが協働して1つの価値を創ることにシェアという意味を込めた。AppleのiPhoneは、ハードウェアだけでなく、iOSやアプリの登場が大きな価値となっている。IoTも全て同じと考えている。付加価値を提供するには、ハードウェアの提供だけで終わってはいけない」と語る。

「シェアリングプラットフォーム」におけるビジネスモデル。アドバンテックのビジネスの中心は、あくまでセンサーモジュールやゲートウェイなどのハードウェア部分となる （クリックで拡大）

　また、これまで単独で存在していた3つの事業部「Embedded IoT」「Industrial IoT」「Service IoT」も、互いにノウハウを共有しながら事業を行う体制に移行したという。IoT戦略に対するこれまでの進捗については、「2010年から新たなビジョンを掲げてから、ビジネス的にも順調に推移している」（Chaney Ho氏）と強調した。