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» 2016年11月15日 13時30分 UPDATE

先行きは不透明:米大統領選でトランプ氏が勝利、技術市場は混沌へ

Donald J. Trump(ドナルド・トランプ)氏が米大統領選で勝利を収めた今、米国シリコンバレーから見た今後の展望は、不確実としか言いようがないようだ。

[Rick Merritt,EE Times]

技術市場はどうなるのか

 Donald J. Trump(ドナルド・トランプ)氏が、米大統領選で逆転勝利を収めた。技術市場では、貿易や移民などをめぐる同氏の見解に対して反発が生じていることから、今後混乱が生じると予想される。次期大統領に就任するトランプ氏が、法人税や連邦政府の研究開発支出など、技術関連の最重要課題についてどのような立場を取るつもりなのかは、今のところ不明だ。

 米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)はこれまで長年にわたり、環太平洋経済連携協定(TPP)などの自由貿易をはじめとする貿易協定を推進するとともに、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)などの理数系高等学位を持つ外国人移民の受け入れ緩和を提唱してきた。

 トランプ氏は、今回の選挙活動の中で、「米国の製造業を復活させるためには、既存の貿易協定を破棄して、再交渉する必要がある」と断言している。Appleの故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏がかつて、オバマ大統領との会談の中で、「製造業は海外に流出し、米国内には戻ってこない」と語ったことは広く知られている。

 米国の技術関連企業の経営幹部たちは、今後、貿易戦争がぼっ発し、関税の引き上げが予測されるとして、懸念を表明している。これらの技術関連企業は現在、その売上高の大半を米国外から得ているためだ。

 技術業界は、これまで長年にわたり、米国内でSTEM分野の高等学位を取得した学生が外国に流出する割合が、年々上昇していることについて懸念してきた。才能ある人材にとって、米国内にとどまることは難しいと感じるようだ。

 トランプ氏は、特にメキシコ人やイスラム教徒などの移民の受け入れ制限を強化することを政治要綱に掲げ、選挙運動を行ってきた。同氏の主張は、時に不快なほど大胆であることから、多くの人々が疑心暗鬼にとらわれるのではないかという不安がかき立てられた。

 トランプ氏が、連邦政府による技術研究開発へのサポートについて、どのような立ち位置を取るつもりなのかは、まだ分からない。しかし同氏は、技術分野への意思決定に影響力を及ぼすことになるだろう。

 オバマ大統領は、半導体企業幹部によるワーキンググループを設立しており、2017年初めには、さまざまな戦略的課題に直面している半導体市場に対し、数十億米ドル規模の投資を提示する予定だという。またオバマ政権は、「NSCI(National Strategic Computing Initiative:国家戦略コンピューティングイニシアチブ)」も設立し、米国立研究所向けにエクサスケールレベルのスーパーコンピュータを数種類開発する取り組みを進めている。ただ、その開発資金として35億〜55億米ドルが予定されているものの、まだ正式には決定されていない。

法人税率の引き下げは?

 また、トランプ氏が税制改革についてどう考えているのかも不明だ。米国の法定法人税率は35%と、他のどの国よりも高いため、SIAはこの引き下げを求めてきた。

 この税率の問題は、EU(欧州連合)において、Appleがアイルランドをタックスヘイブン(租税回避地)として利用していたことが注目された時に浮上した。

 トランプ氏は、オバマ政権の医療保険制度改革(オバマケア)を廃止する考えであることを明言している。これが実現すれば、広範にわたる影響が及ぶことになるだろう。ただし現時点で、技術分野への影響を特定することは難しい。

エンジニアらが公開質問状を提出

 計算機科学者であるVint Cerf氏や、Qualcomm(クアルコム)のエグゼクティブチェアマンであるPaul E. Jacobs氏、ベテラン投資家のVinod Khosla氏、Appleの創業者の1人であるSteve Wozniak氏など、さまざまな技術関連企業の経営幹部や投資家、エンジニアたちが、2016年11月8日の大統領選挙投票に先立ち、トランプ氏の見解に反対する公開質問状を提出している。その中の一部には、「われわれは、米国が、チャンスや創造性を育み、公平な場を提供することができる包容力のある国だと確信している。しかし、トランプ氏にその考えはないようだ」と記されている。

 The New York Timesの報道によると、2016年11月8日の夜、米国サンフランシスコ近郊のオークランド市やバークレイ市などのでは、数百人規模の若者たちが、トランプ氏の勝利に対する抗議デモを行ったという。

 結局のところ、トランプ氏がこれまでの選挙活動の中で行ってきた発言の内容は、大胆ではあるが非常に曖昧だといえる。同氏の次期大統領への就任が決定したばかりの今、技術市場だけでなく全世界が今後どうなっていくのかは、全く分からない。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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