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» 2016年11月29日 11時30分 UPDATE

Over the AI ――AIの向こう側に(5):沈黙する人工知能 〜なぜAIは米大統領選の予測に使われなかったのか (6/9)

[江端智一,EE Times Japan]

獲得投票数で勝負が決まるとしたら

 そこで、もし、これが、一般の選挙のように、獲得投票数で勝負が決まるものであったと仮定した時、今回のシミュレーション結果はどのようなものになるかを、調べてみたくなりました。

 以下に、これまでのシミュレーションと全く同じ乱数、有権者数を使って投票を行い、それを、選挙人獲得数に置き替えてみたものを示します。

 先ほどの2つのケース、"50.00%:50.00%"と、"49.99%:50.01%"のいずれにおいても、1万回のシミュレーションの全てで、クリントンさんとトランプさんの獲得選挙人数は、269人対269人の同点となり、勝負がつきません(標準偏差が0という、バラツキ絶無の結果となります)。

 この場合は、合衆国憲法修正12条により、下院の投票によって大統領が決せられることになりますが、普通に考えれば、この結果が自然だと思います。

 では、逆に、先ほどの投票比率が"49.99%:50.01%"のケース(勝率が50.76%→99.61%に跳ね上がるケース)を、この投票者数で決する普通の選挙に置き換えた場合、どれくらいの投票数の差が必要になるかを逆算してみました。

 普通の選挙であれば、トランプさんが選挙人を391人獲得するには、有権者の73%近くの票数を獲得しなければなりません。つまり「圧勝」することが必要です。

 仮に、今回のトランプさんの「306人」という選挙人獲得数であっても、そこそこ「目に見える勝利(56%程度の票の獲得)」が必要となります。

 今回、最終投票数は、クリントンさんが5917万票を獲得したのに対して、トランプさんは5904万票となっており、普通の直接選挙であれば、クリントンさんの勝ちです。

 しかし、もし投票数に応じた選挙人を選ぶのであれば、269人対269人の引き分けになり、下院で決戦投票となっていたはずですので、下院で過半数を占める共和党員の投票により、最後にトランプさんの勝ちになると思います。

 このように、普通の選挙と比較してみると、現行の合衆国大統領選挙の仕組みが、いかに「気持ちが悪い」ものであるかを理解できるかと思います。

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