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» 2016年12月14日 11時30分 UPDATE

“当事者”に聞く:シーメンスのメンター買収、EDA業界への影響は (1/3)

2016年11月、Siemens(シーメンス)によるMentor Graphics(メンター・グラフィックス)の買収が発表され、業界に衝撃が走った。この買収は、実際のところ設計ツール業界、とりわけEDA業界にどのような影響を与えるのだろうか。Siemens PLM SoftwareとMentorのキーパーソンに直接、その疑問をぶつけてみた。

[Junko Yoshida,EE Times]

大きな話題を呼んだ買収案件

 Siemens(シーメンス)が2016年11月14日(ドイツ時間)にMentor Graphics(メンター・グラフィックス、以下Mentor)の買収計画を発表して以来、半導体業界はこの買収による影響を探っている。

 その問いに関しては今のところ、答えよりも疑問の方が多い。

 この買収で心配されるのは、半導体設計向け独立EDAベンダーとしてのMentorの将来だ。Mentorが買収されると、残る大手EDAベンダーはSynopsysとCadence Design Systemsの2社のみになり、EDAツールベンダー間の市場競争が大きく減少するであろうことも懸念される。

 そもそも、SiemensはなぜMentorを買収したいのだろうか。Siemensは、IC設計事業の何を知っているのか。この買収は、特にIC EDAユーザーにどのような変化をもたらすのか。観測筋は、この買収によって、EDA業界がMentorのチェアマン兼CEO(最高経営責任者)で同業界のレジェンドといわれるWally Rhines氏を失うのではないかと懸念している。

Chuck Grindstaff氏

 EE Timesは、Rhines氏と、Siemens PLM(Product Lifecycle Management) Softwareのエグゼクティブチェアマンを務めるChuck Grindstaff氏に意見を聞いた。

 Siemens PLM SoftwareはSiemensのデジタルファクトリー事業部の1部門で、Mentorは同部門に統合されるとみられる。母体となるSiemensの2016会計年度(同年9月30日を末日とする)の売上高は、796億ユーロ(約9.6兆円)だった。同期間におけるSiemensデジタルファクトリー事業部の売上高は、102億ユーロ(約1.2兆円)だった。

 EE TimesはRhines氏とGrindstaff氏に、この買収の目的と同買収が顧客に与える影響について聞いた。

Rhine氏の引退はない

Wally Rhines氏

 インタビューでは、次のようなことが明らかになった。

 まず、Rhines氏は引退するつもりはないらしい。買収完了後の去就について尋ねると、Rhines氏は笑いながら「引退はしない」と答えた。新生Siemensに加わる意向があるかを確認すると、「力になれるのであれば尽力したい」と述べた。

 Siemens PLM SoftwareのGrindstaff氏に「IC EDAユーザーは、Mentorのツールの今後とSiemensのサポート体制について心配している」と伝えると、同氏は「不安を感じるのはもっともだ」とユーザーの心情に理解を示した上で、「だが、それは当社についてご存じないからだ」と述べた。

 製造技術に関するSiemensの手腕には定評がある。特に、デジタルファクトリー事業部は、製造プロセスを管理する幅広いハードウェアとソフトウェアポートフォリオを提供することを目指している。Grindstaff氏は、「当事業部は、マシンツールやセンサー、アクチュエータなど現代の工場に必要な製品を多岐にわたって提供している」と説明している。

 Grindstaff氏は、「Siemensは過去10年間、成長軌道に乗っている。当社は、製造機器を自動化するだけでなく、顧客の製品設計やシミュレーション、検証を支援するツールチェーンも提供している」と話した。

 Siemensのこうした事業形態を考えると、同社はMentorの買収によって、組み込みソフトウェアやSoC(System on Chip)設計、EDAツール分野を拡充できるといえる。

市場拡大を模索するSiemens

 Siemensはこれまで、IC設計ツール事業にはまったく携わってこなかった。

 Grindstaff氏は、「IC EDAは、Siemensの市場を拡充する」と認めている。同氏は、「Siemens PLM SoftwareとMentorは既に、自動車メーカーやティア1サプライヤーの顧客を共有している。われわれは長年にわたって協力し、良好なパートナーシップを築いてきた」と述べている。

 Siemens PLM Softwareはこれまで、CADやCAMなど機械構造の設計ツールに注力してきた。Grindstaff氏は、「Mentorの買収により、当社はソフトウェア開発ツール、機械構造の設計ツール、そしてEDAツールを“フル装備”で提供できるようになり、顧客は最適なツールを連携して利用できるようになる」と述べる。

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