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中国のメモリ市場、2017年はどう動くのか(後編)台頭しつつあるメーカーは?(2/3 ページ)

» 2016年12月27日 13時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

中国に残された選択肢は?

 中国が、実績あるメモリメーカーを勢いに任せて買収することができない場合、コアとなるメモリ技術を入手することは可能なのだろうか。または、合弁企業を設立するという選択肢はあり得るのだろうか。

 うわさの発端は、Tsinghua Unigroupが、3D NANDフラッシュを製造するためのライセンス契約を締結すべく、Micronに接触したとする報道だ。

 IC InsightsのLineback氏は、このシナリオについては疑問視しているようだ。同氏は、「中国の投資グループや企業にとって、最大手のDRAMまたは不揮発性メモリ技術メーカーを買収することは、決して容易ではない。間違いなく、韓国や日本、米国などの各国政府が、そのような買収契約を阻止しようとするためだ。パートナー契約の締結でさえ、入念な調査が行われるだろう」と述べている。

 また同氏は、「NANDフラッシュとDRAMがこの先10年の間、メモリ技術として、どれくらい長く存続することができるのかについても、検討する必要がある。中国は韓国のように、日本からDRAM市場の主導権を奪い、DRAM市場で成功を収めることができるのだろうか。台湾はここ20年間、韓国の巨大メーカーから主導権を奪うことができずにいる」と述べる。

 Ernst氏は、「中国に唯一残された実行可能な選択肢は、ライセンス契約の締結だ」と指摘する。

 同氏は、「中国の特許庁や科学技術部、商務部などは、中国企業のライセンス能力を高めるための主要なイニシアチブに取り組んでいる。TsinghuaとYRST、XMCがこうしたイニシアチブに従い、Huaweiなどの手法を追随し、特許ライセンス供与サービスを手掛ける企業を使って3D NANDフラッシュ関連の重要な特許を利用できるようになったとしても、決して驚くようなことではないだろう」と述べる。

 同氏は、「例えば、Micronはかつて、Round Rock Researchなどの特許不実施主体(NPE:Non-Practicing Entity)に、特許を売却したことがある」と指摘する。Round Rock Researchは、米国ニュージャージー州に拠点を置く技術調査および特許ライセンス企業で、米国や欧州、アジアなどの交付済み特許や係属中の特許出願など、数千種類に及ぶ幅広い特許ポートフォリオを築いているという。

 Ernst氏は、「Micronは、複数のクロスライセンス契約に関与している。このようなライセンス契約締結を慎重に手配するIPサービス専業企業としては、Quatela Lynch McCurdyや、ニューヨークに拠点を置くIPコンサルタントであるRochester、XiaomiのIPコンサルティング企業Zhiguなどが挙げられる」と説明する。

 同氏は、「CFIUS(対米外国投資委員会)でさえも、このような企業の存在を検知することは難しいかもしれないが、少なくとも阻止することは可能だ。ただ、こうした企業の動きを阻止するために必要な法律文書が整備されているかどうかは不明だ」と述べる。

 同氏は最後に、「XMCは遅かれ早かれ、3D NANDフラッシュ技術のライセンス供与を実現できるようになるだろう」と結論付けた。

 だが、Lineback氏は、TsinghuaとXMCがMicronから3D NANDフラッシュ技術を獲得するという点に関しては懐疑的な見解を示している。同氏は、IntelとMicronの3D XPointを例に挙げ、「Intelは当面は、3D XPointをライセンス供与する予定はないと思われる」と述べている。

 ただし、中国のパートナー企業とIntelのような大手多国籍企業間の関係はひと言で語れるような単純なものではない。Lineback氏は、「Intelは2014年9月に、15億米ドルを投じてTsinghua Unigroupの株式の20%を獲得する計画を発表した。Intelは当時、中国とその他のアジア地域で同社の携帯電話向けのアーキテクチャと通信ソリューションの採用を進める手段として、こうした戦略を取った」と説明している。

 EE Timesが業界筋にインタビューしたところによると、中国政府は当初、YRSTでNANDフラッシュとDRAMの両方を製造する計画だったという。だが、過去数カ月の間に、YRSTの関係者は考えを変えたようだ。同社は現在、「フラッシュメモリの製造に集中する」としている。

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