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売上高3000億円超の世界へ「野武士を組織化する」太陽誘電 社長 登坂正一氏インタビュー(1/5 ページ)

太陽誘電は、主力のコンデンサー、インダクター、通信用フィルターを中心にスマートフォン向けが好調で、2016年3月期に過去最高となる売上高2403億円を達成した。今後も中期的には売上高3000億円の大台突破を狙う方針。事業規模拡大に向けた経営戦略を同社社長の登坂正一氏に聞いた。

» 2017年01月16日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

スマートフォン向け好調も「今のままでは難しい」

 太陽誘電は中期的な売上高目標として3000億円を掲げる。そうした中で、2016年3月期、競争優位性のある「スーパーハイエンド商品」を中心にスマートフォン向けビジネスが好調で、過去最高となる売上高2403億円を達成した。売上高3000億円達成へ順調に歩を進めているように見えるが、2015年11月から社長を務める登坂正一氏は「今のままでは、達成は難しい」と語る。

 売上高3000億円達成に向けての課題はどこにあるのか、そしてどう課題を克服していくのか。製品開発戦略などとともに登坂氏にインタビューした。

2016年は為替変動に「ある程度うまく対応」

EE Times Japan(以下、EETJ) 2015年11月の社長就任から1年が経過しました。

登坂正一氏 社長就任当時、円安が進んだことで業績は良かった。ただ、過去の業績を見ると、6年ほどの周期で業績はアップダウンしているため、再び為替が円高に振れて業績が悪化する可能性が高く、備えようと、就任時に社員に話をした。“備え”とは、例え円高が進んでも、公表している業績計画数値は少なくとも達成できるようにということ。そういう意味では、1年たった今、ある程度、うまくいったかと思う。

登坂正一氏

EETJ この1年、為替の変動とともに、主力用途であるスマートフォン市場の成長鈍化も顕著になってきました。

登坂氏 スマートフォンの出荷台数の成長は鈍ってきたのは事実だが、中国などの新興国市場で主流を占める端末は“ミドルエンド”と呼ばれているものの、ハイエンド端末とほとんど遜色のない機能を備えるようになり、搭載部品点数は増加している。そのため、われわれの部品販売個数も増えている。特に、フィルター(通信デバイス)の販売数量が伸び、コンデンサーの数量も増えている。

 スマートフォンの出荷台数の成長鈍化は、悲観することはない。ただ、中国など新興市場は、変化が激しく、いつどうなるかは分からないので、常に注意していく必要はある。

新事業で38%が目標

EETJ 用途別の売り上げ構成比をみると、現状、スマートフォン向けがほぼ5割になっています。

登坂氏 絶対的に、スマートフォンの世界出荷台数は多く、部品の搭載点数も多い。良い悪いは別にして、結果的に、売り上げ規模は大きくなり、売り上げの5割がスマートフォンになってしまうということ。そこを無視して語ることはできない。

 ただ、スマートフォンなどこれまでの用途市場とは別に、新たに注力すべき市場として産業機器、自動車、医療、エネルギーを掲げている。これら、注力すべき市場の売り上げ比率を38%まで引き上げたいとは考えている。既にこれら新しい注力市場での売り上げは着実に上がってきており、全社売り上げの23%に達している。

EETJ 目標の「38%」という数字の根拠は?

登坂氏 (デザインなどの分野で最も美しい比率とされる)“黄金比”に由来する(黄金比=1:1.618≒38:62)。

 これまでの地球の生命もこの黄金比を使って生き残ってきたという。これからは、変化が大きくなるだろう。そこで、我々も黄金比に倣い、62%は既存、伝統を守ったところで、38%は、新しい革新のあるところで、それぞれビジネスを展開しなければ、生き残れないと考えている。だから、意識的に、自動車や産業機器といった太陽誘電にとって新しい市場での事業規模を大きくしようと考えている。

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