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eCall向けバックアップ電源を長寿命化する充電IC数カ月放置した車でも大丈夫(1/2 ページ)

Intersil(インターシル)は「第9回 国際カーエレクトロニクス技術展」(2017年1月18〜20日、東京ビッグサイト)で、「eCall」などの自動緊急通報システム向けに、充電IC「ISL78693」を発表した。自動緊急通報システムのバックアップ電源の充電状態をより長い期間、維持できるようになる。

» 2017年01月26日 09時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

自動緊急通報システムの導入が広がる

 自動車が衝突事故などを起こした際に緊急対応機関に自動で通報する、自動緊急通報システムの導入が世界的に広まっている。欧州では、2018年4月以降、「eCall」システムを新型車に搭載することが義務化される。ロシアでも、「ERA-GLONASS」を新型車に搭載することが2017年1月から義務化された。日本では2015年11月に、NPO法人の救急ヘリ病院ネットワーク、トヨタ自動車、本田技研工業、日本緊急通報サービスが共同で、「D-Call Net」の試験運用を開始したと発表している。

自動緊急通報システムの概念。緊急通報のあと、GPSで位置を特定し、最寄りの緊急コールセンターに救助を求める(クリックで拡大) 出典:総務省

 こうした背景から、車載向けテレマティクス製品の世界市場は、2021年までに年率19%で成長するとIHSは予測している。

 自動緊急通報システムを自動車に導入する際、課題となるのがバックアップ電源だ。普段から自動車を使っていれば問題はない。だが、日常生活で自動車を使わない場合、自動車が数カ月間、駐車場に放置されたままということもあるだろう。こういったケースでも、事故が発生した時には同システムが問題なく稼働するよう、バックアップ電源の充電状態はより長い期間、維持されている必要がある。

 Intersil(インターシル)が展示会で発表した「ISL78693」は、LiFePO4(リン酸鉄リチウム)を用いたリチウムイオン2次電池向けのシングルセル充電ICである。主な用途は、eCallなどの自動緊急通信システムのバックアップ電源で、上述したような課題を解決することを狙う。

 Intersilのオートモーティブ部門でStrategic Marketing Managerを務めるEdward J. Kohler氏は、「LiFePO4(リン酸鉄リチウム)を用いたリチウムイオン2次電池は安定性が高いため、車載向けでは好まれる傾向が強い。ただし、スマートフォンなどに搭載されているリチウムイオン2次電池とは異なる充電プロファイルが必要になるので、充電ICは、LiFePO4リチウムイオン2次電池向けに、専用に設計されることが理想的だ」と説明する。

 ISL78693の出力電圧は3.6Vと低く、リーク電流は標準で700nA、最大でも3μAに抑えられている。バッテリー電圧が2.6Vまでは小電流でトリクル充電を行い、2.6V以上になると、より高い電流(定電流)で充電する。バッテリー電圧が3.6Vに達すると充電は終了する。充電電流は1Aまでプログラム可能になっている。この他、ISL78693はバッテリー温度の監視機能も搭載している。「これらの機能により、バックアップ電源の動作時間をより長くできる」(Kohler氏)

「ISL78693」は、バッテリー電圧が2.6Vになるまではトリクル充電を行う(クリックで拡大) 出典:Intersil

 ISL78693は、AEC-Q100 Grade-3に準拠している。外形寸法は3×3mmで10ピンDFNパッケージを採用。1000個購入時の単価は0.99米ドルだ。評価ボードも56米ドルで提供されている。

ISL78693の評価ボード。「第9回 国際カーエレクトロニクス技術展」で展示した(クリックで拡大)

 ISL78693は、Intersilの既存の充電IC「ISL78692」と端子互換性を備えている。「ISL78692は、ISL78693に比べて出力電圧などが高く、LiFePO4リチウムイオン2次電池向けとしては理想的ではなかった」(Kohler氏)

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