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64ビット4コアCPUが5ドル、中国メーカーの価格破壊製品分解で探るアジアの新トレンド(15)(1/3 ページ)

「PINE64」は、「ラズパイ3」同様、64ビットのシングルボード・コンピュータである。だが、価格はラズパイ3のおよそ半分。それにもかかわらず、搭載しているチップの性能は、ラズパイ3を上回るものもある。PINE64の分解から見えてきたのは、中国チップメーカーによるCPUの“価格破壊”であった。

» 2017年04月10日 11時30分 公開

「ラズパイ3」に先行した64ビットのシングルボード・コンピュータ

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 およそ1年前の2016年3月、シングルボード・コンピュータ「Raspberry Pi」の最新版として「Raspberry Pi 3(ラズパイ3)」が発売された。ラズパイ3では、基本機能はそのままに、CPUが64ビット化されている。

 だが、64ビットのシングルボード・コンピュータではラズパイよりも先に64ビット化に取り組んでいるメーカーがあった。PINE64である。

 図1は、2016年に発売された64ビットシングルボード・コンピュータ「PINE64」の梱包および基板の様子である。

図1:2016年に登場した64ビットシングルボード・コンピュータ「PINE64」(クリックで拡大)出典:テカナリエレポート

 PINE64はクラウドファウンディングKickstarterで2015年に資金を調達し、当初の予定ではラズパイ3よりも先に64ビット版として発売されるはずであった。若干の不具合があったようで、その修正に時間がかかった結果、ラズパイ3に販売時期で先を越されてしまった。だが、その直後にリリースされ、滑り出しは上々のようだ。

驚異的な低価格

 PINE64は、驚異的な低価格を実現している点でも話題をさらった。ラズパイ3が64ビット4コアで35米ドルであることに対して、PINE64は同じCPU構成で、512MバイトのRAMを搭載したバージョンは15米ドル、RAMが1Gバイトのバージョンでも19米ドルという価格設定になっている。本家ラズパイ3のおよそ半額で64ビットのシングルボード・コンピュータをスタートできるというわけだ。対応するOSプラットフォームは、Android、Linux、Windows、OpenWrt、openHAB、XBMC/Kodiなどである。

 図2はPINE64 の基板上の主要チップの構成である。中国Allwinner Technology(以下、Allwinner)のアプリケーション・プロセッサ「A64」と、同チップの電力性能を最適化するための電源ICがセットで搭載されている。

図2:PINE64の中核チップは中国メーカーの製品である(クリックで拡大)出典:テカナリエレポート

 電源ICは中国X-Powersのチップ「AXP803」である。電圧を20mV刻みで、周波数などに応じてプロセッサに供給することによって、全体の電力最適化を行う構造になっている。同社は「電源IC」と呼ばずに、「Multi-Core High Performance System」と呼んでいる。

 AXP803はA64とセットで活用され、PINE64だけでなく、同じ仕様の中国製シングルボード・コンピュータの数機種にもそのまま採用されている。PINE64やラズパイ3よりもひと回り小さい「NanoPi A64」、Windows10が走る「Orange Pi Win」、IROON Technologyの「Banana Pi M63」などだ。

 AllwinnerのA64プロセッサは、上記のように既に複数の会社の複数のシングルボード・コンピュータに採用される、最も採用例の多いプロセッサの1つになっている。

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