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» 2017年04月24日 10時00分 UPDATE

モーター専用回路の活用:高性能マイコンを活用した複数モーターを制御するシステムの設計について

洗濯機やエアコンなどの家電機器をはじめとして、複数のモーターを同時に制御するアプリケーションは多い。昨今では、複数のモーター制御を安全を担保しながら実現しなければならず、設計者の悩みの種になっている。そこで今回は最新の高性能マイコンを活用した複数のモーター制御システム設計方法を空調システムを例に挙げて紹介する。

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 ここ数年の技術進展の結果、洗濯機やエアコン、その他の家電機器を含む幅広い用途において、マイクロコントローラー(MCU)の利用が急速に拡大してきた。こうした製品は、最新のモーター制御アルゴリズムによって制御を行えば、高効率で静かな動作になるという恩恵が得られる。MCUの存在により、完成した家電機器としての制御のみならず、IoT(Internet of Things)アプリケーションのためのM2M(Machine to Machine)の適用も促進される。メーカーは、より高効率、より低い動作ノイズ、より高度の機能安全性を、コスト効率を保ちながら提供できるのだ。

 複数個のモーターの同時制御が要求される最新機器を開発する設計者にとって、モーター制御は1つの課題になる。設計者は、一層の複雑化に対処するとともに、機器故障を含むあらゆる条件において安全動作を保証しなければならないからだ。

 図1に示す空調システムを考えてみよう。

図1:1つの空調システムには、屋内ユニットの1個以上のファン、屋外ユニットのコンプレッサーやファンなどで、複数個のモーターが使用される

 この場合、複数個のモーターを制御しなければならない。屋内ユニットとして1個以上のファン、屋外ユニットとしてコンプレッサーや1個以上のファンに、モーターが使われる。これらのモーターは全て、効率よく、低いノイズレベルで動作しなければならない。そして、過電流、過度な発熱、機械的不具合のような故障を高信頼で検知し、フェイルセーフ機能を保証しなければならない。

機能(構成)の最適化

 図2は、永久磁石同期モーター(PMSM: Permanent Magnet Synchronous Motors)のモーター制御に通常使用されるベクトル制御と磁界方向制御(FOC: field orientated control)のアルゴリズムを示す。左側のライトブルーのブロックは、ソフトウェアで実装され、座標変換(クラーク/パーク変換および、それらの逆変換)とPID(Proportional, Integral, Derivative)制御の機能を含む。

図2:ソフトウェア、内部ハードウェアおよび、外部ハードウェアにブロック分けしたACモーター制御用インバーターアルゴリズム

 “内部ハードウェア”はマイクロコントローラーの周辺回路から構成され、ソフトウェアブロックの効率的な実行を可能にする。A-Dコンバーター(ADC)は、PWM(Pulse Width Modulation)に同期するモーター巻線電流を測定し、その結果を制御アルゴリズムにフィードバックするために使用される。制御アルゴリズムの出力は、PWMを使ってモーターを駆動するインバーターの内部の電力スイッチに送らなければならない。この過程には、パワートランジスタのスイッチング速度の制約に対応させるためのデッドタイム挿入が含まれる。

 内蔵のマルチファンクションタイマー(Multi-Function Timer/MFT)は、各出力位相成分(u、v、w)の基本PWMパルスだけでなく、デッドタイムを含むそれぞれの相補信号(u-、v-、w-)も発生する。これらは、出力ブリッジのハイサイドとローサイドのスイッチを駆動するために使用される。この例では、内蔵のクアッドポジション/回転カウンター(QPRC: Quadrature Position and Revolution Counter)回路がローター位置情報を取得するために使用される。FOCアルゴリズムを実行するために必要なローター位置情報は、サーボドライブなどの産業用途向けPMSMモーターに搭載されることの多い光学式あるいは磁気式エンコーダーによって取得される。家庭向けなどの用途では、このブロックは通常「センサーレス」制御を利用して実装される。センサーレス制御では、ローター位置そのものを計測する代わりに、モーター電流の測定値からモーターの数学モデルを使用してローター位置を計算する。

 単一のMCUにより複数のモーターを制御する場合、こうした数値計算を効率的かつリアルタイムに実行するには複雑な構造のソフトウェアが必要になり、その開発は難しく、デバッグにも長期間を要し、モーターが要求レベルの品質と信頼性で動作することを試験し実証するのも困難である。MFTやQPRCなどの組込み周辺回路がMCUの演算負荷を低減することで、複数モーターの制御を単純化する。

 MFTを複数備えれば、複数個のモーターを制御するための信号が単一のMCUによって生成できる。例えば、サイプレス社の高性能MCU「FM4ファミリー S6E2H」に組み込まれた3つのMFTは、3相モーターを制御するためのPWMを最大18チャンネル(すなわち相補ペアを9つ)発生できる。各MFTユニットは、3つのフリーランタイマーと6つの出力比較ユニット(OCU: Output Compare Unit)、4つの入力キャプチャーユニット、3つのADC起動ユニット、3つの波形生成ユニット(WFG: WaveForm Generator)から構成される。これらに加えて、MFTは緊急停止やノイズキャンセラーユニットをサポートする。

 MFTは複数ステップでPWM波形を発生する。フリーランタイマーがPWM発生のためのタイムベースを作り、PWMの分解能と周波数を決定する。出力比較ユニット(OCU)は、3つの出力位相のそれぞれに対するデューティサイクル信号RT1、3、5を決定する(注:図3に示す構成例では3つだけの出力比較ユニットが使用されている)。波形生成器は対応する相補信号RTO0〜RTO5を発生する。これらの信号は、RT信号から自動挿入されたデッドタイムを含んでおり、FETあるいはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワートランジスタを制御できる。波形生成器は、故障に起因する過電流などの事象の発生時にPWMを直ちに停止するようにも働く。この動作は、ソフトウェアの介入なしで実行され、フェイルセーフ動作を可能とする。

図3:マルチファンクションタイマーによるPWM波形発生

 波形生成器内のノイズキャンセラーユニットは、有効な過電流事象のみを検出可能にする。つまり、短いスパイクノイズに対しては動作しない。そうした過電流事象が発生すると、波形生成器がMCU出力ピンをRTO0‐RTO5から通常のGPIO機能に戻すよう切り替える。この動作により、初期化過程で対応レジスタを事前プログラミングすることによって定義された所望のフェイルセーフ状態(すなわち、出力High、出力Low、あるいは高インピーダンス)を可能にする。ハードウェアでのPWMシャットダウンに加え、アプリケーションレベルでの不具合対処を可能にするための割り込みが発生できる。

 QPRCは、直交エンコーダーを使用するモーター制御システムにおいて重要な働きをする。QPRCは、2つの直交信号とオプションのゼロインデックス信号である3つの入力チャンネル、AIN、BINおよびZINを特徴とする。QPRCは、これらの信号からローター位置とともに回転方向を検出できる。回転カウンターを付加すれば、各回転に対応するインクリメント(増分)あるいはデクリメント(減分)の情報が得られる。この機能によりローターの多回転にわたる絶対位置情報が得られる。この機能は、リニアドライバー、ギアボックス、その他の位置決めアプリケーションなどの用途に有効だ。

マルチモーター設計

 図4は、サイプレス社の高性能MCU「FM4ファミリー S6E2H」を中核として構築した空調システムのシステムブロック図だ。

図4:多数のモーターを制御する空調システムのシステムブロック図

 屋外ユニットにはコンプレッサーとファンがあり、それら両方が先述したように、効率を最大化するよう独立したFOCによって制御される。さらに、外気温などの種々の特性を測定するセンサーがMCUに接続されている。屋外ユニットと屋内ユニットの接続には、UARTあるいはSPIなどのシンプルなシリアルプロトコルが利用できる。

 屋内ユニットでは、1個以上のファンやブロアーを制御する必要がある。これらは、静音動作と高効率を実現するためにFOCアルゴリズムにより制御される。複数個のセンサーによって室温、湿度、その他のパラメーターが測定される。屋内ユニットは、屋外ユニットへの接続に加え、集中管理式HVAC(集中暖房、排気、エアコンディショニング制御)のため、BEMS(ビルエネルギー管理システム)にエアコンを組み込むことが必要になる。これはCANインタフェースを介して構成できる。

複数のモーターを利用する産業用および家庭用の制御システム

 FM4 S6E2Hマイクロコントローラーは、高性能モーター制御、CANを含む通信インタフェース、さらにモニタリングや制御を可能にする豊富な周辺回路を有し、屋内ユニットおよび屋外ユニットの両方が必要な性能と効率を提供する。

著者プロフィール

Christian Harders / Cypress Semiconductor

Christian Hardersは、Cypressの上級地域マーケッターである。彼は、ドイツのダルムシュタット(Darmstadt)で電気工学を学んだ。Cypress入社前は、富士通とSpansionでアプリケーションエンジニアとして9年間にわたり勤務していた。



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アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年5月23日

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