連載
» 2017年04月27日 11時30分 UPDATE

Over the AI ―― AIの向こう側に(10):外交する人工知能 〜 理想的な国境を、超空間の中に作る (1/9)

今回取り上げる人工知能技術は、「サポートベクターマシン(SVM)」です。サポートベクターマシンがどんな技術なのかは、国境問題を使って考えると実に分かりやすくなります。そこで、「江端がお隣の半島に亡命した場合、“北”と“南”のどちらの国民になるのか」という想定の下、サポートベクターマシンを解説してみます。

[江端智一,EE Times Japan]

今、ちまたをにぎわせているAI(人工知能)。しかしAIは、特に新しい話題ではなく、何十年も前から隆盛と衰退を繰り返してきたテーマなのです。にもかかわらず、その実態は曖昧なまま……。本連載では、AIの栄枯盛衰を見てきた著者が、AIについてたっぷりと検証していきます。果たして”AIの彼方(かなた)”には、中堅主任研究員が夢見るような”知能”があるのでしょうか――。⇒連載バックナンバー


「AI」が人間の仕事を奪う?

 前回に引続き「AIブームの終焉 -End of the Boom-」というタイトルで講演してきました時のお話をします。

 講演後の質疑応答の際に、以下のような質問を頂きました。

質問者:「江端さんは、人工知能(AI)が人間の仕事を奪うのは、どのくらい先になるとお考えですか?」

江端:「そうですね、今回が第3世代ですが、現在のコンピュータアーキテクチャをそのまま踏襲している限り、300年後の第15世代人工知能ブームでも難しいんじゃないかと思います。というか……」

 私は続けました。

『仕事が奪われる』という未来形ではなく、既に『仕事は奪われてきた』という過去形になるのです。

そして、仕事を奪ってきたのは、"AI"ではなく、"PC"や、「ワード」「エクセル」「パワーポイント」です。

この3つのアプリケーションによって、写植の人、経理の人、そして広告やデザイナーの人口がどれだけ減ったと思いますか?


 「人工知能(AI)が人間の仕事を奪う」のではなく、既に「PCが人間の仕事を奪ってきた」のです。

 ですから、

 これまでPCがやってきたことに比べれば、「AIに仕事を奪われる」ことの恐怖なんぞ、はっきりいってゴミです。


 こんにちは、江端智一です。

 前回は、「『人工知能(AI)が人類を滅ぼす』と主張する人」の、絶望的なまでのAI技術に対する無勉強(「不勉強」ですらない)について、実例を上げて具体的に説明しました。

 今回は、人工知能に対するもう1つの大きな主張である、「AIが、私たちの仕事を奪う」について検討します。

 ―― と思っていたのですが、この連載の中で、私が、散々主張し続けてきて皆さんも食傷気味だと思いますので、ここは軽く触れる程度にしたいと思います。

 これまでの連載で申し上げてきた通り、第1、第2のAIブームに関する限り、「AIが、私たちの仕事を奪う」はデタラメだと断言できます。

 そして、今回の第3のAIブームについては、(現時点では)断言できる段階にはありませんが、これまでの第1、第2ブームの経緯と、今回の第3ブームの経緯が、『そっくりである』ことは断言できます。

 例えば、

(1)1つの革命的なコア技術の開発を、その技術と全く無関係な分野の技術まで拡張して、大げさに宣伝しはじめる奴が出てくる
(2)まだ実現されていないはずの技術を、『できたも同然』と言い出す奴が出てくる
(3)既存のソフトウェア処理を、なんでもかんでも『人工知能』と言い換える奴が出てくる

そして

(4)『AIが、私たちの仕事を奪う』と騒ぎ立てる奴が大量に出てくる

 これら4点については、本当にそっくりです。

 ですので、今回は、「AIが」という冠を取替えて、


 仮説「パーソナルコンピュータ(PC)が、私たちの仕事を奪った」


について、検証をしてみたいと思います。

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