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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

5分で設定、測定値の遠隔モニタリングシステム計測器メーカーだからこそ作れた(2/2 ページ)

» 2017年05月09日 15時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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遠隔モニタリングに必要なシステムを一気通貫で

 GENNECT Remote Basicを開発するに当たり、日置電機は「計測器に加えて、ゲートウェイから携帯電話回線、クラウドまでをパッケージとして提供すること」に、とにかくこだわったという。降旗氏は、「現時点で、ここまで一気通貫で提供する計測器メーカーは、他にないのではないか」と強調する。

 「測定値を遠隔からモニタリングしたいというニーズは大きい」と降旗氏は話す。計測器が遠隔地に設置されている場合、その場所に行くだけでも時間がかかる。さらに、客先の工場に設置している場合など、測定値を確認するには工場に入る許可を取らなくてはいけないケースもある。こうした背景から、時間と手間を減らすために、インターネット経由で測定値をモニタリングするシステムの導入を検討するメーカーは多いと降旗氏は続ける。

 だが、いざ、システムを導入しようとすると、大きな壁にぶつかる。ゲートウェイや携帯電話回線、クラウドなど、遠隔モニタリングに必要な要素が全て別々の会社から提供されていたり、クラウドとゲートウェイ間の通信プロトコルや、ゲートウェイと測定器の間の通信コマンドなどが異なっていたりするのである。「しかもクラウドや携帯電話回線は従量課金制が多いので、現場の部門にとっては予算を申請しにくい。その上、プラン変更などの手続きにも時間がかかる」(降旗氏)

 システムを構築する要素だけがそろっていても、それらを組み合わせて、実際にシステムを構築することができなければ意味はない。降旗氏は「エンジンやモーター、シャシーなど、クルマの部品を全て購入しても、クルマが作れるわけではない。それと同じだ」と述べる。しかも、仮にシステムを構築できるとしても、少なくとも数百万円規模の予算と、数カ月単位の開発期間が必要になる。「それならば、計測器メーカーである日置電機が、遠隔計測の新しいプラットフォームを作ればいいのではないか」――。そう考えたことが、GENNECT Remote Basicの開発につながったという。

従来のIoT(モノのインターネット)サービスと、GENNECT Remote Basicの違い(クリックで拡大) 出典:日置電機

 「GENNECT」は、「現場(GENba)」と「つなぐ(conNECT)」を組み合わせた、日置電機の登録商標だ。GENNECTシリーズとして、測定値のデータベース化や報告書作成などを自動で行うデータ管理ツール「GENNECT Field」や、Bluetooth対応の測定器からデータを収集して報告書を作成できる無償アプリ「GENNECT Cross」を提供している。

遠隔操作できる機能を備えたPro版も

 GENNECT Remote Basicに加え、2017年秋には「GENNECT Remote Pro」を発売する予定である。価格は未定だ。Pro版では、遠隔地の測定器に保存された測定ファイルを、現地に行くことなく手元でダウンロードできる「遠隔ファイル取得機能」や、測定器の設定をリモートで変更できる「遠隔操作機能」などを備える。

 GENNECT Remote Basicに接続する機器は、日置電機の製品だけに限定するつもりはないと降旗氏は語る。「計測機器だけでなく、現場の様子も見えるようにWebカメラもつなげたいというニーズなどもある。そういった要望に応えられるよう、他社の製品も接続できるようにすることが目標だ。“現場をつなぐ”に由来するGENNECTの名前通り、現場で何が最も必要とされているかを考え、提供していきたい」(降旗氏)

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