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0.05mmの組み込みずれも許さない、カシオ新型モジュールへの挑戦G-SHOCKの新モデルに搭載(1/3 ページ)

カシオ計算機は、耐衝撃ウォッチ「G-SHOCK」の新モデル「GPW-2000」を発売する。標準電波とGPS電波に加え、スマートフォン経由で接続したタイムサーバからも最新の時刻を取得する仕組みを搭載した。その肝となる技術が、カシオがGPW-2000のために開発した新モジュール「Connected エンジン 3-way」だ。同モジュールの開発にまつわる話を聞くと、腕時計に対するカシオのこだわりが見えてくる。

» 2017年05月19日 11時30分 公開
[秋山未里EE Times Japan]

「G-SHOCK」の最新シリーズ

「G-SHOCK」の「GPW-2000」 出典:カシオ

 海外に行く時、腕時計の時刻調整を煩わしく思ったことはないだろうか?筆者には、空港で時刻を合わせたはずが、鉄道に揺られているうちにタイムゾーンを超えてしまい、下車時刻を間違えたという苦い経験がある。しかし、時刻を完全に自動で調整してくれる最新の腕時計を手に入れれば、そのような煩わしさから解放されるかもしれない。

 カシオ計算機(以下、カシオ)は2017年5月19日、「G-SHOCK」の新製品として「GPW-2000」を発売する。航空コンセプトの「GRAVITYMASTER」シリーズの最新モデルになる。本製品の目玉は、3つの時刻取得システムを搭載したことだ。このシステムを実現するために開発されたのが、新世代モジュール「Connected エンジン 3-way」である。GPW-2000の“肝”ともいえる同モジュール。従来品のモジュールとの違いはどのような点にあるのだろうか。開発者に話を聞いてみた。

“地球上に死角なし”の完全自動腕時計を目指して

 日本で時刻合わせに用いられている最も一般的な手法が標準電波の受信だ。国内では、2カ所ある電波塔から電波が発信されており、その電波を受信することで正確な時間を時計に反映できる。しかし、海外では電波塔のない地域も多く、そうした地域への渡航した際には、正しい時刻に合わせられない、という弱点があった。

 そのため、カシオは、2014年より標準電波に加えてGPSの衛星電波を受信する機能を追加し、標準電波とGPS衛星電波の2つを受信できるようにした。これにより、どこにいても正しい時刻を自動で調整できる時計が完成したかのように思われた。しかし、開発者たちはこれで満足しなかった。

 タイムゾーンが1つしかなく、しかもサマータイムのない日本で暮らしているとあまり実感がわかないが、実は世界の他の国や地域では、政治情勢などの影響で頻繁にタイムゾーンやサマータイムの変更が行われている。カシオの電波時計には、都市のタイムゾーンとサマータイムの情報をプリセットしてあるが、これらの情報は書き換えることができなかった。そのため、その時計を発売した後にタイムゾーンやサマータイムの変更ががあっても、自動で時刻を合わせることができなかったのである。

3つの時刻取得システム

 その課題を克服するため、GPW-2000には、標準電波とGPS衛星電波の受信に加え、スマートフォンをBluetooth Low Energy(BLE)で接続し、スマートフォンを経由してタイムサーバに接続する3つの時刻取得システムを採用。タイムサーバからの情報に基づいて時刻を自動的にアップデートするという方法だ。これにより、標準電波+GPSのハイブリッドシステムよりも、最新のサマータイムを反映した、より正確な時刻に、自動的に調整できるようになる。

 カシオが初めてBLE対応のG-SHOCKを発売したのは2012年。この製品は時刻取得にスマートフォン本体の時刻データを使用していた。2016年発売の製品からはスマートフォンを経由してタイムサーバに接続するため、スマートフォンの性能に依存しない分、より正確な時刻を獲得できるようになったという。タイムサーバには1日4回、自動的に接続され、時刻の調整が行われる。

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