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» 2017年06月29日 15時30分 UPDATE

光電子分光測定装置を開発:燃料電池の電極触媒、大気圧下で挙動観測可能に

自然科学研究機構分子科学研究所は、硬X線による大気圧下での光電子分光測定方法を開発した。燃料電池の電極触媒について、実動作環境でその挙動観測が可能となる。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

触媒の反応や劣化メカニズムを高精度に観測

 自然科学研究機構分子科学研究所は2017年6月、硬X線による大気圧下での光電子分光測定方法を開発したと発表した。これを用いると、燃料電池の性能に関与する電極触媒について、実際の動作環境における挙動観測が可能になるという。

 今回の研究は、燃料電池の高度な解析/評価技術や新しい材料設計指針の創出に向けたプロジェクトとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2015年度より実施しているテーマである。このプロジェクトでは、自然科学研究機構分子科学研究所の高木康多助教や横山利彦教授らによるグループ、電気通信大学燃料電池イノベーション研究センターの岩澤康裕教授らのグループ、名古屋大学物質科学国際研究センターの唯美津木教授および、高輝度光科学研究センター(JASRI)の宇留賀朋哉主席研究員らが、研究に取り組んできた。

 光電子分光測定は、試料の状態を観測する手法で、試料から放出される電子エネルギーを測定する。さまざまな物質を原子レベルで分析可能なため、燃料電池の開発においては電極触媒の研究に用いられてきた。ところが、これまでは測定試料の周囲を真空状態に保って測定する必要があり、実動作環境の状態でその挙動を観測することはできなかった。

 研究グループは今回、放出される電子の運動エネルギーを高くするなどして、大気圧下でも電子エネルギーを測定できる技術を開発した。この技術を、大型放射光施設(SPring-8)の「先端触媒構造反応リアルタイム計測ビームライン」(BL36XU)に設置された光電子分光測定装置に適用した。この結果、測定検証試料である金薄膜を対象として、大気圧下での光電子分光測定を行うことに成功した。

開発した技術を適用した光電子分光測定用装置の外観

 今後は、電極触媒の反応や劣化メカニズムについて高精度な観測を行い、さまざまな知見を触媒開発にフィードバックしていく。実使用環境に合わせて測定条件を調整し、白金など燃料電池に用いられる電極触媒についても測定を行っていく計画である。研究成果をベースに燃料電池の高機能化を加速することによって、燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池の市場拡大を支援していく。

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