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» 2017年07月12日 10時00分 UPDATE

あらゆるテストにこれ1つで:ADASからパワートレインまで、自動車テストに自在に対応できるプラットフォーム

電気自動車の普及や自動運転技術の開発の加速など、変化が激しい自動車業界。ナショナルインスツルメンツ(NI) は、プライベートイベント「NIWeek 2017」で、特にADAS(先進運転支援システム)向けのテストシステムに多くの時間を割き、複雑化する一方で時間の短縮を求められるテストシステムの開発に、どう対応していくべきかを語った。

[PR/EE Times]
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 「センサー、無線通信、タッチインタフェース、ソフトウェアなどをいかにして組み合わせるかという“技術の統合”は、これまでの十数年間、主に携帯電話機の分野で語られてきた。そして今、“技術の統合”に関する課題は、自動車分野へと広がっている」――。米ナショナルインスツルメンツ(NI)でビジネス&テクノロジー部門のディレクターを務めるJamie Smith氏は、米テキサス州オースチンで開催された「NIWeek 2017」(2017年5月22〜25日)の基調講演で、このように語った。

 実際、ここ数年間で自動車関連の技術やトレンドは大きく変わっている。とりわけ、開発が加速しているのが、ADAS(先進運転支援システム)やV2X(Vehicle to everything)通信など、コネクテッドカーや自動運転車向けの技術だ。

 Smith氏は、「自動車メーカーだけでなく、半導体メーカーも、これらの分野に大きな投資をしている」と強調する。例えばIntelは、コンピュータビジョンチップのリーディング企業であるイスラエルのMobileyeを約150億米ドルで買収すると発表した。Qualcommは、車載向け半導体を強化すべく、NXP Semiconductorsを470億米ドルで買収することを発表している。

 このように自動車の開発を取り巻く大きな変化を迎えている背景を踏まえ、NIWeek 2017の基調講演では、自動車、特にADAS向けテストシステムの技術や製品の紹介に、多くの時間が割かれた。

 Smith氏は、「ADASのテストシステムの開発には、柔軟性のあるプラットフォームが欠かせない」と述べ、NIのシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」を中核とし、ハードウェアとソフトウェアで構成されるプラットフォームを活用するアプローチが、ADAS技術の進歩に大きく貢献していることを強調した。

NIのプラットフォーム。モジュール式計測器と、ソフトウェアで構成され、「LabVIEW」でプログラミングする。パートナー各社を含め、巨大なエコシステムが成立している

ソフトウェアの80%を再利用

 まず基調講演に登壇したのが、フランスに本拠地を置く自動車部品メーカーValeoだ。同社のMeasurement Equipment and Tools Groupでマネジャーを務めるDerek O’Dea氏は、同氏が携わっている自動パーキングシステムのテスト環境について説明した。O’Dea氏は、ADASや自動運転向け技術が自動車に搭載されるようになるにつれて、「車載システムにおけるソフトウェアの割合が高くなってきた。こうしたソフトウェアは、要件が最初から決まっているわけではないので、テストをしながら動的に変更していく必要がある。そのため、柔軟性のあるテスト環境をいかに構築し、いかに短時間でテストを行うかが、極めて大きな課題となっている」と語る。

 そこでValeoが採用したのがNIのPXIをベースにしたプラットフォームである。Valeoは、まず自動パーキングシステム向けのアルゴリズムを開発。次に、カメラや超音波センサーなどを取り付け、PXIシステムを搭載した自動車で実際の路上を走り、周辺の様子や歩行者、対向車などのデータを収集し、それらを元に、アルゴリズムのテストを行い、変更していくという作業を繰り返した。ただし、アルゴリズムを変更するたびに、それが正しく動作するかを路上でテストしたのでは、時間もコストもかかり過ぎる。そのため、ある程度アルゴリズムを構築した後はHILに切り替えて、テストを続けた。「HILを使い、仮想的にテストできる環境を構築すれば、一晩のうちに何千回ものシミュレーションを行える」と、O’Dea氏は強調する。

 このテスト環境の最大の特長は、最初のアルゴリズムの開発から、量産工程まで、開発したソフトウェアの約80%を再利用していた、という点である。「カメラを例に挙げると、われわれはまず、カメラと通信するためのコードや、カメラから画像を取り出すためのコードを開発したが、設計から特性評価、システムの検証、そして量産に至るまで、そのコードのうち80%を再利用した」(O’Dea氏)

 カメラ用の新しいプロトコルをテストする場合も、NIの「FlexRIO I/Oアダプタモジュール」を変更するだけで、後のシステムは変更せずに済んだとO’Dea氏は強調する。

 O’Dea氏は、全ての開発フェーズにおいてLabVIEWを使えたことが、さらなる開発の効率化につながったと続ける。「チームメンバーは全員、LabVIEWでプログラミングができる。そのため、開発プロジェクトによって、VHDLプログラマーやC++プログラマーなどを割り当て直す必要がなく、それが効率化につながった」(O’Dea氏)

アルゴリズムのテストから生産現場でのテストまで同じプラットフォームを使ったことで、ハードウェアとソフトウェアを再利用することができ、開発時間の短縮につながったという

センサーフュージョンのテストをNIのプラットフォームで

 Valeoの自動パーキングシステムのように、ADASでも、カメラや各種センサーからの情報を統合することが必要になる。こうしたセンサーフュージョンの開発は、自動車業界でますます活発になっている。だがセンサーフュージョンには課題もある。その1つが、「さまざまなセンサーを正確に同期させること」だ。

 Valeoに続き登壇したドイツのSETでCEOを務めるFrank Heidemann氏は、「レーダーやライダーなどのセンサーとカメラが同じ物を、同じ時間に見ている必要がある。つまり、センサー、カメラ、そしてそれらを接続する通信機能が全て、1つのシステムとして正確に同期しているかどうかをテストしなくてはならない」と説明する。

 さらに、このテストシステムは、HILを用いる必要があった。あらゆる走行のシナリオをテストするのに、何百キロメートルも実車を走らせて、センサーやカメラのデータを取得するのは、時間的にもコスト的にも非現実的だからだ。

 そこでSETとKonrad Technologies、measX、S.E.A.の4社は「adas iiT」という団体を設立し、NIが提供するHILテストシステム向けのオープンプラットフォーム「HILシミュレータ」をベースに、センサーフュージョン向けのテストシステム「ADAS HiL Test System」を開発した。

 面白いのは、この4社がいずれもNIのパートナー企業だという点だ。SETとKonrad Technologies、S.E.A.はそれぞれ、HIL、センサーシミュレーション、V2XやGNSS(全地球型測位システム)向けテスト・制御ソリューションを手掛けていて、measXはデータ管理ソリューションに強みを持っている。4社が提携してADAS向けテストシステムを開発できたのも、「NIのプラットフォーム」という共通項があったからだろう。

「adas iiT」が開発した「ADAS HiL Test System」の外観

 Konrad TechnologiesのCEOを務めるMichael Konrad氏は、「ADASのテストには、全てのセンサーの入力を統合できる、包括的なテストシステムが必要になる。われわれは、完全な自動運転車へとつながるADASの実現に向け、4社の知識とスキルを活用して、拡張可能なテストシステムを設計することを目指した」と語った。

 ADAS HiL Test Systemは、HILシミュレータ上で動く、NIのリアルタイムテスト向けソフトウェア「VeriStand」と、IPG Automotiveが提供するHIL対応のバーチャルテスト環境「CarMaker」を使い、NIのRFジェネレーターや、実機のECU(電子制御ユニット)、カメラ、センサーを組み合わせて構成されている。

 まず、CarMakerで、仮想的な道路や物体を作り出す。それらの情報がVeriStandに送られると、VeriStandはNIのRFジェネレーターに指示を出し、レーダー信号を生成する。レーダーは、その生成された信号を受け取り、その情報をECUに送る。すると、ECUは、「道路上に物体がある」と認識する。同じように、ライダーやカメラについても仮想的な環境を“本物”と認識させることで、実際の路上を走行した時のようなデータが各種センサーから得られるので、センサーフュージョンをテストすることができる仕組みだ。

ADAS HiL Test Systemの構成。図の左側が、NIの「HILシミュレータ」。ECUやカメラ、レーダー、ライダーは実機を使っているが、各種センサーが“見ている”環境だけはバーチャルということになる

 NIWeekの基調講演では、このテストシステムのデモを披露した。ECUは、仮想環境上で生成された全てのセンサーデータを基に、ブレーキをかける、減速する、レーンを変更するといった制御を行う。

 さらに、このシステムは、センサーフュージョンだけでなく、センサー単体の特性評価にも使うことができる。

デモの様子。左=画像の左側には、前方にあるトラックが写っていて、緑の枠と白い枠で囲まれているが、これは、カメラ、レーダー、ライダーの全てがトラックを認識していることを示している/右=トラックを認識したことで、クルマは減速し、レーンを変更している

自動車関連テストでも「One-size-fits-all」のソリューションを

 基調講演では、ADAS向けテストシステムの他にも、電気自動車のモーターやインバータといったパワートレインシステムの動作をシミュレーションするHILテストシステムや、バッテリパックの電圧をテストする計測器モジュールなどが紹介された。HILシステムには、NIの計測・制御機器「CompactRIO」が、バッテリパックのテストには、NIのデータ収録プラットフォーム「CompactDAQ」を使用している。

 今回の基調講演で紹介されたテストシステムは、ADAS、パワートレイン、バッテリパックと、テストする対象こそ異なるが、NIのプラットフォームをベースに構築したという点は一致している。NIのプラットフォームが、「自動車」というたった1つの分野だけにおいても、いかに幅広く対応できるかが分かるだろう。さらにValeoのように、設計から評価、ハードウェア/ソフトウェアのテスト、量産まで、一気通貫で対応できることも、時間とコストの削減には大いに役立つ。

 2014年のNIWeekには富士重工業が登壇し、ハイブリッド車「XV HYBRID」に搭載するECUの評価時間が、NIのプラットフォームを用いたことで20分の1に短縮したという事例が紹介された。Smith氏は、これと同じような大きなインパクトを、自動車のテストシステム開発に与えたいと強調する。

 テストシステムは分野やテスト対象によって要件が大きく異なるので、1つで全てに対応できる「One-size-fits-all」型のソリューションを提供するのは難しい。だが、テスト用のハードウェアやソフトウェアを柔軟に変更できるNIのプラットフォームは、その「One-size-fits-all」に最も近いといえるだろう。

自動車業界向けテストシステムについて


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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年8月11日

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NIWeek2017 レポート

リリースから31年目を迎えたNational Instrumentsのシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」は、年次カンファレンス「NIWeek 2017」において、新バージョンとして「LabVIEW NXG 1.0」と「LabVIEW 2017」の2つを発表し、参加者を驚かせた。LabVIEWはなぜ2つに分かれたのか、今後のLabVIEWはどうなっていくのだろうか。

「5G」に欠かせない要素技術の1つが、超広帯域通信を実現できるミリ波帯の活用である。だが、これまでミリ波帯は、モバイルネットワークには不向きだと考えられてきたため、電波の挙動のデータが少ないのが実情だ。5Gの商用化が迫り、ミリ波通信のテスト環境をどれだけ短期間で構築できるかが課題になる中、ソフトウェア無線がその解となりそうだ。

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