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Qualcommを取り巻く状況は悪化の一途相次ぐ法廷争い(2/2 ページ)

» 2017年07月21日 13時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]
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終わりが見えない争い

 Qualcommにとって、EU独占禁止法当局によって日当罰金を課されたことの他にも、欧州における戦いは終わりそうにない。ECは2017年6月9日に、QualcommによるNXP Semiconductorsの買収提案について、詳細な調査を正式に開始したと発表している。

 このようなECの動きにより、問題の解決までには少なくとも4カ月間を要するため、QualcommとNXPの合併計画は水を差される形となった。ECによると、2017年10月17日までには判断を下す予定だとしている。

 QualcommとAppleの間で繰り広げられている特許係争は全て、未解決状態にあるQualcomm/NXPの合併問題をめぐり、副次的に生じているようだ。QualcommとNXPは、2017年末までには合併の手続きを完了させる予定だとしているが、エレクトロニクス業界の中でも特に欧州の観測筋は、この完了予定時期について疑問視している。

年月 内容
2016年12月 韓国公正取引委員会が、Qualcommに対し、独占禁止法違反で1兆300億ウォン(約1027億円)の制裁金の支払いを命じる
2017年1月 米連邦取引委員会(FTC)が、独占禁止法違反の疑いでQualcommを提訴
2017年1月 AppleがQualcommを提訴。10億米ドルの支払いを要求
2017年2月 Qualcomm、韓国公正取引委員会の制裁金支払い命令を不服として、制裁金の取り消しを求める
2017年4月 Qualcommが、2017年1月のAppleによる提訴に対し、Appleを反訴
2017年5月 IntelとSamsung Electronics、FTCがQualcommが提訴した件について、FTCに賛同する意向を発表
2017年5月 Qualcomm、Appleの製造委託業者4社を、ロイヤルティーの未払いで提訴
2017年6月 EC、QualcommによるNXP Semiconductorsの買収について詳細な調査を開始
2017年7月6日 Qualcomm、AppleがQualcommの特許を侵害しているとして、Appleを提訴
2017年7月12日 ルクセンブルグの欧州普通裁判所が、Qualcommが訴えた命令差し止め請求を棄却
2017年7月18日 Appleの製造委託業者4社がQualcommを反トラスト法違反の疑いで提訴
Qualcommをめぐる動き(米国EE Timesまとめ)

 米国の比較的寛容な独占禁止法規制当局は2017年4月に、QualcommとNXPの合併を無条件で承認した。しかし、Qualcommは現在、ECによる詳細な調査に加え、これまでにも世界の中で最も手強い審判員と位置付けられている中国商務部(MOFCOM)との交渉にも直面している。

中国における「業務上の信頼性」の欠如

 米国の独立研究機関East-West CenterのシニアフェローであるDieter Ernst氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「Qualcommが、生き残りをかけて戦う中で最重要視している目標は、NXPとの合併実現である」と述べる。

 またErnst氏は、「Qualcommには、野心的な多角化戦略を実行していく上で、NXPが必要だ。Qualcommが、中国国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Commission)からの承認を得るためには、中国において業務上の信頼性が大きく欠如しているという点を改善しなければならない」と付け加えた。

 NDRCは、中国国務院の傘下にあるマクロ経済管理当局で、経済関連の広範な行政管理や計画規制などを担っている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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