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» 2017年07月31日 10時00分 UPDATE

標準イーサネットからAWSまで:産業用IoTをいかに短期間で開発するか――“業界標準”対応に徹したプラットフォームが鍵に

産業用IoT(IIoT)の実現に向けた動きが加速する中、テスト・計測・制御ソリューションを提供するナショナルインスツルメンツ(NI)は、IIoT向けプラットフォームの強化に力を入れてきた。NIは、自社のテクニカルカンファレンス「NIWeek 2017」で、同プラットフォームのさらなる強化を図る機能を発表した。それは、標準イーサネットの拡張規格である「TSN」や、「AWS(Amazon Web Service)」など、“業界標準”にこだわり抜いた機能である。

[PR/EE Times]
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 Industrie 4.0に代表されるように、産業分野でIoT(モノのインターネット)を取り入れる動きは、加速している。こうした、いわゆるインダストリアルIoT(IIoT)の実現に向け、ナショナルインスツルメンツ(NI)は、一貫してプラットフォームの強化を図ってきた。

 同社のプラットフォームとは、システム開発ソフトウェア「LabVIEW」を中核として、「CompactDAQ」などの各種計測/制御ハードウェアやソフトウェアで構成される。

NIのプラットフォームの構成

 IIoTでは、工場などの設備や装置にセンサーを取り付け、そのセンサーで収集したデータをクラウドに上げる、というのが最も標準的だ。NIは、データ収集のところを一歩進めて、センサーを取り付けているエッジデバイスにおいてある程度データを処理し、必要なデータだけをクラウドに送るという「エッジコンピューティング」の概念を提唱している。このエッジコンピューティングを可能にするために、センサーから得たデータを処理できるよう、演算性能の高い計測機器の開発に力を入れてきたのである。

IIoTの概念図。NIは、センサーで収集したデータを、ある程度エッジデバイスで処理する「エッジコンピューティング」を提唱してきた

TSNに対応した機器をいち早く投入

 NIが米国テキサス州オースティンで開催したテクニカルカンファレンス「NIWeek 2017」(2017年5月22〜25日)では、IIoT向けのプラットフォームをさらに強化する機能が発表された。強化したポイントは主に3つある。まずは、高度なエッジコンピューティングを行うためのエッジデバイスだ。2つ目が、エッジデバイスを分散配置した大規模なシステムを中央管理/遠隔管理するためのツール。そして3つ目が、製造設備やテスト設備からクラウドなどの上位情報系システムへとデータを転送するための通信部分である。

 1つ目のポイントで最も注目すべきなのが、「NI CompactDAQ 9185」「NI CompactDAQ 9189」だ。今回のNIWeekで発表された唯一のハードウェアだが、NIのIIoT向けプラットフォームにおいては極めて大きな意味を持っている。両機種は、標準イーサネットにおいてサブマイクロ秒レベルの時刻同期を可能にするIEEE 802.11ASを搭載しているからだ。IEEE 802.11ASは、標準イーサネットで時刻同期、低レイテンシなどを可能にするために現在規格策定が進められている拡張規格「Time Sensitive Networking(TSN)」を構成する3つの規格のうち、先に正式規格となったものである。

 NI CompactDAQ 9185/9189は、大規模な分散計測において、このTSNを使って、システム間の時刻同期を取ることができるマルチスロットイーサネット計測シャーシだ。計測データをイーサネット経由で収集することが一般的になっているが、これまで標準イーサネットでは特殊な専用機材を使用することで、時刻同期のシステムを実現するしかなかった。そのため、工場内の各所のモニタリングのように測定対象が複数の場所に置かれていたり、大型プレス機といった物理的に大きな対象のモニタリングであったりした場合には、データを収集するイーサネットケーブルとは別に、時刻同期のための専用機材が必要となり、システム構成にコストも時間もかかっていたのである。

IEEE 802.1AS準拠のスイッチが搭載された「cDAQ-9185/9189」

 NIWeek 2017の基調講演では、超大型の重機において22台のCompactDAQと1300以上のチャネルを使い、歪みセンサーや加速度センサーなどのデータをモニタリングするITM(Integrated Test and Measurement)の事例が紹介された。

 従来は時刻同期のために計測用とは別に産業用ネットワーク機器を用意していたが、その電源やネットワーク接続の設置とトラブルシューティングのために300人時以上がかかっていた。これに対してNI CompactDAQ 9185/9189を使うと、データ収集に使っている1本のイーサネットケーブルでCompactDAQをデイジーチェーン接続するだけで済む。そのため、外部ネットワークのハードウェアやケーブリングが不要となり、ケーブリングのコストは従来の半分、メンテナンス要員のコストは80%も減らすことができたという。同じような課題を抱える日本企業にとっても、NI CompactDAQ 9185/9189は朗報となるだろう。

ITMは大型重機の荷重テストの際に、CompactDAQの時間同期のため産業用ネットワーク機器(図の右端の四角形)を外付けしていたが、そのケーブリングや機材の電源設置、トラブルシューティングに時間とコストが掛かっていた。それが、CompactDAQ9185/9189を利用することで不要になった

 TSNは、産業用イーサネットではなく、標準用イーサネットをベースにした規格であることが重要になる。標準用イーサネットなので、オープン性と互換性に優れ、ハードウェアやソフトウェアを作り換える必要がないため、低コストで済むからだ。さらに、TSNはIndustrie 4.0において積極的に活用されると報じられている。そうなればTSNの普及は加速し、TSN対応機器へのニーズは急速に増すだろう。このような背景の中で、NIはいち早く、TSN対応機器を市場に投入したのである。2016年には、TSNに対応するコントローラー「NI CompactRIO」を発表したが、CompactDAQ9185/9189は、それに続くTSN対応ハードウェアとなった。

分散システムのデバイス管理、ソフトウェア展開が可能な「SystemLink」

 2つ目のポイントである中央管理/遠隔管理ツールとしては、「SystemLink」を発表した。

 多数のCompactRIOやPXI製品などシステムノードを分散配置する場合、IIoT関連で要求されるモニタリングやテストベッドのシステムは複雑で大規模になると予想される。そうなると、大きな問題になってくるのが計測機器の管理だ。これまでは限定的な機能を持ったものを除き、一元管理するようなツールは提供されていなかった。

 NIWeek 2017の基調講演で発表したSystemLinkは、ネットワークを経由してシステムに配置されたCompactRIOやPXI、Windows PCの一元管理を可能にするソフトウェアだ。SystemLinkはオンプレミスまたはクラウド上のサーバにインストールして使用でき、Webアプリケーションとして動作するため、PCやタブレットを使ってどこからでも分散システムの管理ができる。現時点では正式にリリースされていないが、アーリーアクセスプログラムに参加すれば利用できる。

「SystemLink」は分散システムを管理するためのソフトウェア。デバイスの管理、ソフトウェアの実装、データの通信を一括で調整サードパーティーの製品についてもデバイスドライバを用意してサポートする予定だ

 SystemLinkを使うと、システム上にあるCompactRIOやPXIに対して、ファームウェアやアプリケーションを配布したり、ノードの設定の表示や再設定、状態の診断、ノードからのデータ転送自動化とそのデータ管理したりすることが可能だ。NIWeek 2017の基調講演では、打ち上げから着陸まで1つの機体でこなす再利用可能ロケットを開発しているBlue Originの事例を紹介した。

 Blue Originは、ロケットエンジンやパラシュート、アクチュエーターなどのテストにPXIを使って数千チャネルのデータ収集と制御を行っているが、SystemLinkの導入によって、非常に多くの分散したテストセルを集中管理することができたと話し、SystemLinkを使ってCompactRIOにアプリケーションをデプロイするデモも見せた。多くのテストを繰り返す場合、CompactRIO/PXI側のアプリケーションを修正していくことも多いが、そのようなときも1つ1つノードを指定するのではなく、一括で配布して確認と設定まで行えるSystemLinkが、開発の現場で役に立つことは容易に想像できる。

Blue Originは、Amazonのジェフ・ベゾス氏が設立した、再利用可能ロケットを開発している企業である。写真は、そのロケットのテストベッドだ

データをクラウドにつなぐ

 同期したデータをクラウドへアップするニーズも強いが、NIのIIoT向けプラットフォームでは、この上位情報系システムへの接続部分を業界標準に対応できるようにした。これが、3つ目の強化ポイントとなる。NIは、LabVIEWの最新版である「LabVIEW 2017」に追加した新しい機能で、業界標準への対応を実現した。

 まずは「LabVIEW Cloud Toolkit for AWS」だ。クラウドサービスとして利用されることが多い「Amazon Web Service(AWS)」に接続できるAPIを含むツールキットである。AWSが提供する「AWS S3」「AWS SNS」「AWS SQS」「AWS IoT」に対応するAPIを提供する。これにより、LabVIEW開発者AWSクラウドサービスの利用が容易になる。

LabVIEWを利用する開発者に、AWS(Amazon Web Services)のクラウドサービスに接続するための直感的に使用可能なAPIを提供する

 「LabVIEW 2017 OPC UA Toolkit」も、LabVIEW 2017の特徴的な機能だろう。これは、Industry 4.0の標準通信プロトコルになるとされる「OPC UA」との相互通信を可能にするツールキットである。WindowsおよびNI Linuxリアルタイムの両方で、データアクセス、履歴アクセス、アラームおよび条件といった機能をサポートする。

 IIoTシステムが大規模になり、ネットワークに接続されるセンサーの数も、そこで収集するデータ量も急速に増加していくことが予想される中、IIoTシステムをいかに短期間で開発できるかは、今後ますます重要になるだろう。それを踏まえると、標準イーサネットやAWS、OPC UAなど、“業界標準”に対応できるように強化されたNIのIIoT向けプラットフォームは、IIoTシステムをより容易に、より素早く構築するための強力な手法となることだろう。

ナショナルインスツルメンツのインダストリアルIoTとは


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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年8月30日

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NIWeek2017 レポート

リリースから31年目を迎えたNational Instrumentsのシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」は、年次カンファレンス「NIWeek 2017」において、新バージョンとして「LabVIEW NXG 1.0」と「LabVIEW 2017」の2つを発表し、参加者を驚かせた。LabVIEWはなぜ2つに分かれたのか、今後のLabVIEWはどうなっていくのだろうか。

「5G」に欠かせない要素技術の1つが、超広帯域通信を実現できるミリ波帯の活用である。だが、これまでミリ波帯は、モバイルネットワークには不向きだと考えられてきたため、電波の挙動のデータが少ないのが実情だ。5Gの商用化が迫り、ミリ波通信のテスト環境をどれだけ短期間で構築できるかが課題になる中、ソフトウェア無線がその解となりそうだ。

電気自動車の普及や自動運転技術の開発の加速など、変化が激しい自動車業界。ナショナルインスツルメンツ(NI) は、プライベートイベント「NIWeek 2017」で、特にADAS(先進運転支援システム)向けのテストシステムに多くの時間を割き、複雑化する一方で時間の短縮を求められるテストシステムの開発に、どう対応していくべきかを語った。

産業用IoT(IIoT)の実現に向けた動きが加速する中、テスト・計測・制御ソリューションを提供するナショナルインスツルメンツ(NI)は、IIoT向けプラットフォームの強化に力を入れてきた。NIは、自社のテクニカルカンファレンス「NIWeek 2017」で、同プラットフォームのさらなる強化を図る機能を発表した。それは、標準イーサネットの拡張規格である「TSN」や、「AWS(Amazon Web Service)」など、“業界標準”にこだわり抜いた機能である。

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