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IoT技術を活用した見守りサービス「otta」を進化させたBLEソリューション短期間で理想的なビーコン端末を開発

新しいカタチの見守りサービスとして注目を集めている「otta(おった)」。2017年春から商用事業開始に合わせ、IoT(モノのインターネット)技術であるBluetooth low energyビーコン(BLEビーコン)を活用した新型見守り端末もデビューした。今回は、ユニークな見守りサービスを支えるBLEビーコン端末の開発秘話を紹介したい。

» 2017年08月22日 10時00分 公開
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 誰でも手軽に使える端末で見守りサービスを実現したい――。

「otta見守りサービス」のイメージ

 大阪府箕面市や千葉県市川市などで2017年春から商用事業が始まった見守りサービス「otta(おった)」。これまでの見守りサービスとは一線を画したユニークなサービスコンセプトで、新たな見守りのカタチとして注目を集めている。

 少子化にもかかわらず子どもが犯罪被害に遭う件数は増える傾向にある。高齢化に伴う高齢者の徘徊(はいかい)が社会問題化してきている。こうした社会情勢の中で、子どもや高齢者といった社会的弱者を見守るための技術やサービスに対するニーズは増大している。実際、さまざまな見守りサービスが提供されている。

 最も代表的な見守りサービスが、携帯電話機などGPS(全地球測位システム)機能を搭載した端末を使用したサービスだろう。高精度、リアルタイムでGPS端末の位置情報を遠隔で確認できるサービスであり、利用者は広がりつつある。しかし、その多くは携帯電話サービスを利用したものであり、利用料、通信料が必要で、経済的に誰でも使えるわけではない。また、小中学校は、携帯電話機の持ち込みを禁止しているケースが多く、子どもが事件、事故に最も巻き込まれやすいとされる登下校中にGPS端末が使えないという根本的な課題も存在する――。

 そのような中で、既存の見守り端末の課題を解消し「誰でも手軽に使え、学校にも持ち込める端末で見守りを実現するサービス」として開発されたのがottaだ。

誰でも手軽に使える見守りサービス、端末

 ottaが使用する技術は、IoT(モノのインターネット)技術の1つであるBluetooth low energyビーコン(以下、BLEビーコン)だ。子どもなど見守られる側が持つ端末の基本機能はBLEビーコンの発信機能だけ。学校など街中に配置したBLEビーコン受信器(=検知ポイント)や、見守る側のotta専用アプリが起動したスマートフォン(=見守り人)がBLEビーコン信号を検知し、検知情報をクラウドサーバーに集約。保護者は位置履歴を確認できる他、学校など特定の場所に子どもが到着したという通知を受け取れる。利用者が増えれば、増えるほど、細かな網の目のように見守れるようになる仕組みで、まさに街、地域ぐるみで見守りが実現されるのだ。

「otta」のサービス概要

 GPSを使用しないため見守り端末を小型、低価格で実現できる他、電池寿命も長く、手間も掛からない。otta見守りサービスを提供する株式会社ottaの創業者で社長を務める山本文和氏は「通知受け取りや位置情報履歴の確認はスマートフォンに限らず、いわゆるガラケー、携帯電話機にも対応している」とし、徹底的に“誰でも手軽に”の部分にこだわっている。

2015年5月から実証実験で浮上した“端末の課題”

 それまでシステムエンジニアだった山本氏は「子どもが生まれたことで思い付いた」という見守りサービスを具現化するため会社を辞め、2014年10月にottaを起業。早速、見守りサービスの基盤となるBLEビーコン端末の制作に受託開発会社とともに取りかかり、2015年5月に広島地区などで実証実験を開始した。

 当時、制作したBLEビーコン端末は、洋菓子のマカロンに似た形状の丸形端末で、BLEビーコン機能とともに「端末を持ち歩く動機付けのために」と電子式防犯ブザー機能を持たせた。

実証実験用に制作した防犯ブザー機能搭載BLEビーコン端末

 「子どもが学校や塾、友人宅などあらかじめ設定した通知ポイントに到着したことを知らせてくれて便利」など、概ね実証実験は好評を博したが、端末に関する改善点も見つかった。端末の電池にはコイン電池の「CR2354」を使用したがコンビニやスーパーでの取り扱いがなく、手軽に買える電池ではなかった。山本氏は「ottaの特長である“手軽さ”を高めるにはもう少し入手性の良い電池を使うべきだと感じた」と振り返る。

 手軽さを高めるためには製造コストを抑える努力も継続する必要があった。実証用端末では「及第点の製造コスト」を実現したものの、無償配布を前提にしたBLEビーコン端末であり、極力製造単価を抑えたいが、「これ以上のコスト低減は難しいと感じていた」と振り返る。「実証用端末は、汎用的な市販BLEモジュールを使用したが、見守りビーコン用途に最適化されたBLEモジュールを開発すれば、コスト低減を図れるかもしれないと考えた」という。

 また、少しでも電池寿命を延ばすために、電池を消耗する防犯ブザーではなく、「防犯ホイッスルで代替するアイデアも実証を通じて生まれた」という。

商用化に向け改良版ビーコン端末開発へ

 好評を得て商用化のメドがつき、実証で築いた改良点を盛り込んだBLEビーコン端末の開発に着手することになった。当時、山本氏がまとめた改良版BLEビーコン端末の開発コンセプトは次の通りだ。

  • 防犯ブザー機能の代わりに防犯ホイッスル機能を付ける。
  • 防犯ホイッスルらしく細長い形状の端末にする。
  • 市販モジュールではなく、カスタムでボードを起こし、価格を実証用端末よりも低く抑える。
  • 電池寿命は最低1年以上(ビーコン発信周期:1秒)。
  • 電池はコンビニで販売している入手性の良いものにする。
  • 初期注文台数は20万台。
  • 2017年2月の商用サービスまでに量産を間に合わせる。

 これらのコンセプトを満たす理想的なBLEビーコン端末を作ってくれるパートナー探しを始めるが、難航する。「20万台の規模で、チップを販売してくれるメーカーがなく、市販のBLEモジュールしか売ってもらえなかった」(山本氏)

知人の紹介から話が進み始めた理想のビーコン端末開発

「Renesas DevCon 2015 OSAKA」で紹介された1円玉サイズのBLEモジュール

 そのような中で、2016年春に山本氏は知人から「ルネサス エレクトロニクスに相談してみれば?」との助言を受けた。聞くとその知人は、2016年2月に大阪で開催されたルネサスのプライベートイベント「Renesas DevCon 2015 OSAKA」を訪れた際に、細長いホイッスル形状の端末にピッタリの1円玉サイズの小型BLEモジュールを使ったデモを見たというのだ。

 山本氏は知人からルネサスの担当者の連絡先を聞き出し、ためらいなく連絡を取ったという。「昔、半導体工場関連の業務を行ったことがあり、ルネサスという半導体メーカーの存在は知っていた。カスタムで基板を起こすには、半導体メーカーと直接、交渉するのが良いと思った」

 2016年4月、ルネサスと初の打ち合わせで、山本氏が改良版BLEビーコン端末のコンセプトを明かすと、ルネサス側から「実現可能だ」と即答され、ルネサスのパートナー企業であり電子機器の設計開発製造事業を展開するテセラ・テクノロジー(以下、テセラ)を紹介された。

 その後、テセラの担当者と詳細な仕様を詰めていくことになったが「トントン拍子で話が進んでいった」とし、初会合からわずか2カ月後の2016年6月には仕様が固まり、2016年8月に試作品が完成。そして、2016年10月に開催された展示会「CEATEC JAPAN」で商用サービス用ホイッスル型BLEビーコン端末のお披露目を行ったのだった。

「当初のコンセプトはほぼ満たすことができた」

 完成したホイッスル型BLEビーコン端末「otta.w」は、高さ約86mm、直径約10〜18mmの円筒形。先端部分は樹脂成形で作られた笛になっており、電池を消耗することなく、危険などを周囲に知らせるための大きな音を発することができるようになった。そして笛型の樹脂筐体の中には、BLEビーコンが電池とともに格納されている。

ホイッスル型BLEビーコン端末「otta.w」

 電池は、コンビニでも取り扱いがある単五型乾電池。実証実験時の端末と同様に電波到達距離最大100m(見通し)、ビーコン発信周期1秒間隔の動作条件で1年以上電池交換が不要という仕上がりになった。2017年2月から予定通り、otta.wを使った商用サービスがスタートしているが「半年程度経過した今時点でも、電池切れの報告は届いていない」(山本氏)と順調だ。

 こうした小型で、長電池寿命のBLEビーコン端末の実現を支えたのが、ルネサス製のBLE対応RFトランシーバーを内蔵したマイコン「RL78/G1D」だ。RL78/G1Dで半導体に関する国際学会の最高峰とされる「ISSCC」の2015年開催で論文採択された「世界最小の消費電流を実現したBluetooth Low Energy用RFトランシーバー技術」を用いた製品であり、最大の特長は低消費電力だ。ビーコン用途で最も電力を消費するRF送信時の消費電流はわずか4.3mA(0dBm時)。単五型乾電池で1年以上という長寿命は、このRL78/G1Dの存在がなければ達成されなかっただろう。

BLE対応RFトランシーバーを内蔵したマイコン「RL78/G1D」のイメージ

 またRL78/G1Dは、アンテナ接続のための回路素子(バラン回路)やDC-DCコンバーター回路を内蔵している点も大きな特長だ。競合製品に比べ、外付け部品を大きく削減でき部品コストが抑えられ、小型化も図りやすい。

 otta.wの製造コストについて山本氏は「実証実験用端末の3分の2以下に収まった」という。「テセラさんには、製造コストを抑えるためのさまざまな努力をしてもらった。改良の余地は残る部分もあるにはあるが、当初のコンセプトはほぼ満たすことができた。機能やデザイン性、品質など仕上がりには満足している」と語る。

出会いからわずか半年後には展示会で製品披露できた理由

otta 社長 山本文和氏

 2016年4月に初めて、ルネサス、テセラと打ち合わせを行い、そこから仕様を固め、その半年後の2016年10月には展示会で新端末を披露するまでに至った。山本氏は「実証用端末開発に比べて、約半分の期間で済んだ」と評価し「テセラさんならこのスピードでできると開発当初から信じていた」と笑う。

 一方、今回の開発を担当したテセラ・テクノロジー 営業部製品企画開発課の伊藤進太郎氏は「開発期間が短めの案件で多少、間に合うかどうか不安な面もあったが、RL78/G1Dを使用した開発実績があったので、順調に開発を進めることができた」と振り返る。というのも、山本氏がルネサス、RL78/G1Dと出会うきっかけとなった1円玉BLEモジュールデモは、ルネサスとパートナー企業で構成し未来のIoTソリューション構築を目指す「IoT分科会」が作成したもので、テセラも同分科会に参加し、開発に携わっていたのだ。

 伊藤氏は「開発で時間を要するのがソフトウェア開発。通常、ハードウェア開発を待って、ソフトウェア開発に着手することが多いが、RL78/G1Dの場合、ハードとソフトの切り分けがハッキリしていて、ハード開発とソフト開発を並行できる。その上、ソフトウェアスタックも豊富に用意されており、今回の端末で必要だったビーコン、電池残量表示、OTA(Over The Air)アップデートといった機能用スタックも準備されており、ソフト開発時間自体も短く済んだ。これらのソフトウェアスタックの用意がなければ、短期間で開発、量産できなかった」と分析する。

順調に普及、新たな挑戦も

 2017年2月の商用サービス開始以後、otta、テセラ、ルネサスと3社が連携して作り上げたBLEビーコン見守り端末otta.wは、既に1万人以上の小中学生に配られ、想定外のトラブルもなく、安定稼働しているという。「通知サービスの有償契約数も順調に増えている。2017年6月から渋谷区の小学生や高齢者を社会実証が始まった。2018年中には初期ロットの20万台は底を尽きる見通し」とビジネス自体も順調に成長している。

 「現状のホイッスル型端末は児童向け。高齢者に持ってもらいやすい機能、形状の端末を開発している。もちろん、テセラ、ルネサスと連携して」(山本氏)と、otta、テセラ、ルネサス3社による新しい挑戦が既に始まっている――。

 今回の記事でご紹介した、「小型・省エネBluetooth low energy®対応マイコンRL78/G1D」の概要や評価ツール、ビーコン応用事例などご覧いただけます。

 詳しくはこちら↓

Bluetooth low energyソリューション 紹介ページ

 otta.wの開発秘話やotta見守りサービスの今後について、山本氏をはじめ、テセラ・テクノロジー 伊藤氏、ルネサス担当者らに本音を交えて語っていただいたインタビューの模様については下記の記事をご覧ください。

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提供:ルネサス エレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月21日

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ルネサス エレクトロニクスは2017年10月27日、子会社であるIntersil(インターシル)の社名を2018年1月1日付で「Renesas Electronics America」に変更すると発表した。

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