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新材料「二酸化ハフニウム」を使った強誘電体メモリへの長い道福田昭のストレージ通信(71) 強誘電体メモリの再発見(15)(2/2 ページ)

» 2017年08月25日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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強誘電体キャパシターの特性が製品化の可能性を大きく左右

 強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)のメモリセルが1T1C方式であろうと、FeFET方式であろうと、最も重要なのは、強誘電体キャパシターの特性である。強誘電体キャパシターの特性が優れていることが、全ての始まりとなる。

 既に述べたように、二酸化ハフニウム(HfO2)が強誘電体になることが公に報告されたのは、2011年末のことである。この段階では、「10nm前後とこれまでの常識を覆す薄い膜で」「強誘電体になる」ことが分かっただけで、従来のペロブスカイト系材料と同様に不揮発性メモリ製品となるかどうかなど、全く未知数だった。といっても、「10nm前後の薄い膜で」強誘電体となる材料が発見されたこと自体が、基礎研究あるいは学問としては驚くべきブレークスルーである。

 ただし厳しい見方をすれば、基礎研究から本格的な研究開発を経て製品化に至るまでの長い道のりが始まっただけであり、乗り越えなければならない課題は山積している。その課題を1つずつ地道に丁寧に解決していくことが、半導体製品の開発には欠かせない。

 その最初の段階は、二酸化ハフニウムを絶縁膜とする強誘電体キャパシターが、優れた特性を備えているかどうかを確かめることである。優れた特性とは何か。粗くまとめてしまうと、残留分極の電荷量と分極反転の回数(寿命)である。他にも抗電界(Ec)の大きさやヒステリシス曲線の形状、そもそも物理的な構造がどのようになっているかなど、調べなければならないことは数多い。

 そこで当初は、簡素な構造の強誘電体キャパシターを試作し、電圧(極性が変化する電圧サイクル)を加えて分極反転を繰り返すことが試みられた。そうして得られた特性の変化については、次回に詳しく述べたい。

二酸化ハフニウム(HfO2)の強誘電体キャパシターを作製する手順の一例。シリコン基板に下部電極の窒化チタン(TiN)を成膜し、それから二酸化ハフニウムを成膜する。そして上部電極の窒化チタン薄膜を堆積する。熱処理をしてから取り出し、電極となる白金(Pt)薄膜ドットを最上部に形成する。そして白金をマスクとして上部電極の窒化チタンをエッチングする。出典:NaMLab(クリックで拡大)

次回に続く

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