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IoT本格化で存在感を増すLPWA、部品提供だけではない村田製作所のLPWA戦略

IoTの本格的な実現は眼前に迫っているが「モノをどのようにつなぐか」の問題は残っている。LPWAは水道メーターや物流トラックなどをつなぐ手段として有望視されており、電子部品大手の村田製作所はLPWAの電子部品提供だけではなく、トータルサポートを提供することで、IoTの実現を手助けする。

» 2017年09月01日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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 モノとモノがインターネットによってつながることで新たな価値を生み出すIoT(Internet of Things)はもはや概念や理論の段階を過ぎ、本格的な社会実装を目前とした段階に達している。

 しかし、そこに横たわる問題が「モノをどのような手段でインターネットへ接続するか」である。PCであればWi-Fi、スマートフォンであればセルラー網がその手段として普及しているが、より小さなモノをインターネットへ接続することを考えると、消費電力やコストなどの面からこれらの手段が適切とは言い難い。

 そこで近年注目を浴びているのが「LPWA(Low Power Wide Area)」である。このLPWAは「低消費電力・広範囲」を特徴とする無線通信技術の総称であり、特定の技術やサービスを指すものではない。

 電子部品メーカーの村田製作所もLPWAの有効性に着目しているメーカーの1つだ。村田製作所といえば積層セラミックコンデンサや表面波フィルタ、セラミック発振子といったセラミック素材をベースとした電子部品を思い浮かべるが、BluetoothやWi-Fiといった無線通信デバイスも数多く手掛けており、スマートフォン向けにおいては世界シェアの過半を占めるほどであり、近距離無線デバイスのスペシャリストともいえる。

 その村田製作所がLPWAに対して、世界規模で本格的な取り組みを開始している。有力なLPWA規格と目される「LoRa」に対応するモジュールを既にワールドワイドで量産を開始しているほか、日本ではソフトバンクとLPWAを利用したIoTサービスの推進について協業を発表。展示会ではLPWAとBluetoothを組み合わせた状態管理ソリューションの紹介なども行っている。

一連の動きの中で興味深いのは単なる部品(モジュール)の提供だけではなく、LPWAを利用したサービスの創造や導入を検討する企業に向けての用途提案までも積極的に手掛けていることだ。

 「これまでつながっていないモノが簡単に、そして、大量につながることで新たな価値やメリットが生まれるかもしれない。村田製作所はその手助けをしていきたいのです」――村田製作所の佐々木昭氏(モジュール事業本部 通信モジュール事業部 IoTモジュール商品部 部長)はこのような言葉で村田製作所のLPWAに対するスタンスを表現する。

photo01 村田製作所 モジュール事業本部 通信モジュール事業部 IoTモジュール商品部 部長の佐々木昭氏(写真=左)と開発1課 シニアマネージャーの渡辺貴洋氏(写真=右)

製品の90%が海外で販売される村田製作所とLPWAの関係

 LPWAが注目される背景にIoTという概念の普及が存在することは間違いないが、軽量なデータを低消費電力のネットワークで流通させたいという需要はIoTという言葉が顕在化する前から存在する。その査証として挙がるのが、スマートシティの構想と各種実験である。

 スマートシティに関する実証実験は欧米で多く行われ、そこで生まれた「街全体を低消費電力のネットワークでカバーする無線技術」(つまりはLPWA)への需要が、Sigfox(仏企業が主体)やLoRa(設立母体は米SEMTECH)といった規格の設立につながっていったといえる。そうして欧米でLPWAへの需要が高まる中、製品の90%が海外で販売されるというグローバル企業である村田製作所も、LPWAというカテゴリーに対する手応えを得た。

 「スマートシティに端を発したかもしれませんが、IoTは国や地域を問わずに興味を持たれており、モノをつなぐための技術としてLPWAは注目され、需要が高まっています。欧米や日本だけではなく、アジア圏や中米圏でも興味を持たれていますね」(村田製作所 モジュール事業本部 通信モジュール事業部 IoTモジュール商品部 開発1課 シニアマネージャー 渡辺貴洋氏)

 このように世界的な注目があつまるLPWAであるが、具体的な使い道としては水道やガスのメーター検針、トラックの位置情報をクラウドに送信する物流目的、小売りチェーン店頭や自動販売機の在庫管理、ホームセキュリティ、気象観測などが挙げられる(GSMAの資料「Mobile Internet of Things Low Power Wide Area Connectivity」:リンク先PDF ではLPWAでの接続数が2022年には50億を超え、家電やオフィスセキュリティ、保守管理などで多く使われると予測している)。

 既にWi-Fiやセルラーを導入しているところへの置き換えも発生するだろうが、LPWAの特性(低消費電力、広範囲であるトレードオフとして低速度であるなど)を見極めての実装が必要となる。基本的にはLPWAの特徴を生かし、これまでつながっていなかったモノをつなげて新たなサービスを構築する手段として用いられていくことになるだろう。

認証からアンテナ設計までサポートする村田製作所の戦略

 LPWAの具体的な規格としてはSigfoxやLoRa、NB-IoT、Wi-SUN、DASH7、ZigBee、Z-Waveなど複数が存在し、このなかで本命視されているのがSigfox、LoRa、NB-IoTの3つだ。SigfoxとLoRaは運用に際して免許のいらない周波数帯(ISM帯)を利用し、NB-IoTは免許の必要なセルラー網の周波数帯を利用する。

 免許のいらない周波数帯を利用するSigfoxとLoRaは競合関係にあるように思えるが、どちらかといえば補完関係にある。Sigfoxはオペレーターが1カ国に1社という方針があるためカバーエリアの拡大はその企業の努力に左右されてしまうが、そのかわり、長距離トラックのように広いエリアを移動するモノでも接続性は確保しやすい。

 LoRaは任意企業(団体)がカバーエリアを展開できるかわりに、全国カバーのような展開がしにくい。同じ物流分野に導入しようと考えた際にも、全国展開する事業者ならばSigfox、特定地域でのサービスに強みを持つ事業者ならばLoRaと使い分けがされていくだろう。

 SigfoxとLoRaの違いを語る際、Sigfoxに下りがない(つまり、IoTデバイスの制御が行えない)ことが問題視されることがある。しかし、これは日本の法律上の問題であり、規格としては下りも存在しており、日本国内においても「早ければ2017年内には利用可能となる見込み」(渡辺氏)である。

 既にLPWAの無線モジュールを量産する村田製作所であるが、LPWAへの取り組みについては「部品の提供だけではダメだと思っている」(渡辺氏)と、まさにこれから拡大していく市場を見すえての取り組みであることを協調する。

photo02 村田製作所のLoRa対応モジュール「Type ABZ(CMWX1ZZABZ)」

 「村田製作所として、無線モジュールを販売するというビジネスが根底にあることは確かですが、これまでは無線を熟知している人を対象としていました。ですが、LPWAは多種多彩なプレーヤーが集まるIoTの重要な要素であり、これまで接点のなかった業種業界の方に使ってもらうことになります」(渡辺氏)

 「各国法律に合わせた電波認証やソフトウェア実装、無線規格ごとに異なる認証など、部品の提供だけではなく、トータルとしてのサポートを提供できるのが村田製作所の強みと言えます。こうした、LPWAの導入ハードルを下げる取り組みはワールドワイドで行っています」(佐々木氏)

 「無線モジュールを機能させるにはアンテナが必要不可欠ですが、アンテナをどのように製品へ実装するかはノウハウの塊です。お客さまのセットにアンテナを組み込んだ際、どうすれば効果的であるかコンサルティングしたり、設計段階からお手伝いすることもあります」(渡辺氏)

IoT時代の本格化で高まる、電子部品メーカーの存在感

 このように部品提供だけにとどまらず、十分なサポートを提供することで、2020年には300億個とも400億個に達するともいわれるIoTデバイスの開発と製造を支えるのが村田製作所のLPWA戦略なのだ。もちろんサポートだけではない。量産開始されているモジュールにはこれまで村田製作所が電子部品メーカーとして培ってきた知見が多く投入されている。その一例が耐久性だ。

 LPWAの通信モジュールは水道メーターや自動販売機、トラックなどに搭載され長期間に及ぶデータ収集用途に用いられることが想定されるため、長時間の安定動作が求められる。長時間、安定して駆動する電子部品をどうやって設計するかという知見も村田製作所は有している。

 「LPWAの通信モジュールに関しては、これまでWi-FiやBluetoothの製品開発で培ってきたノウハウが多く投入されています。コンデンサ1つにしてもどう使うかによって耐久性は変わってきますが、LPWAモジュールは長く使われることを想定していますので、設計ポリシー的には数年間の駆動を前提としています」(渡辺氏)


 現在はSigfoxとLoRaに対応する製品並びサポートサービスを提供する村田製作所であるが、セルラー網を用いるNB-IoTについても同様の取り組みを進めていく予定だ。NB-IoTは既に稼働しているセルラー網を利用するためネットワーク自体の信頼性が高く、その信頼性でLPWAに興味を持つ多くの企業から注目を浴びそうである。LPWAへの感心が高まれば高まるほど、無線のスペシャリストとしてモジュールからサービスまでも提供する村田製作所の存在感は高まっていくだろう。

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提供:株式会社村田製作所
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月30日

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