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» 2017年09月11日 11時30分 公開

解決の時期は不透明:AppleとQualcomm、法廷闘争に至るまでの経緯 (2/2)

[Junko Yoshida,EE Times]
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“10億米ドル訴訟”に発展するまで

2.調達契約なしに需要供給を確約

 Appleは、自らの持てる力を半導体メーカーに対してどう使うべきかを熟知した、強い影響力を持つ顧客企業だ。AppleとQualcommの両社は2009年12月16日、STA(Strategic Terms Agreement)契約を締結する。2007年〜2010年に発表された初代〜第4世代のiPhoneは、Infineon Technologiesのチップセットを採用していたが、AppleはQualcommに、STAへの合意を呼びかけた。このSTAには、「Apple製品の受託製造業者に対するQualcommの部品供給に関して、Appleが将来的に、自社製品にQualcommのチップセットを採用することを決定する」という条項が提示されていた。

 Qualcommは、「Appleに対する供給の確約を強制された」と主張するが、Appleは、Qualcommの供給部品に対する責任を一切認めていない。

3.ソフトウェアに関する契約合意

 さらに、両社は2010年9月20日、MSA(Master Software Agreement)を締結する。この契約により、Qualcommが著作権を持つソフトウェアを、Appleが限定的に使用できるようになった他、QualcommからAppleに提供されるソフトウェアが管理されたり、Appleが使用できるソフトウェアおよび関連する著作権が制限されたりするようになった。Qualcommは、これが特許ライセンスではないことを明言している。

4.半導体チップ購入の見返りにインセンティブを要求

 2011年2月11日、両社はTA(Transition Agreement)を締結する。これは、Qualcommのチップを搭載した「iPhone 4」が発表される、数カ月前のことになる。

 AppleはこのTAに基づき、Qualcommのチップセットを自社製品に採用したことに対するインセンティブ(リベート)として、Qualcommに支払いを要求した。その金額に関しては、法的書類が編集されているため、明らかにされていない。Qualcommは、Appleからチップセットの調達予定量に関する保証を全く受けないまま、この支払いに応じたという。

5.さらなるインセンティブの要求

 そして、両社は2013年1月1日、ATA(Amendment to the Transition Agreement)を締結する。このATAは、全体としてはTAの内容を保持しているが、Qualcommにさらなるインセンティブの支払いを要求するものだった。Qualcommは、法的書類において「TAとATAは、Appleに、Qualcommと独占的に取引することを要求するものではない」と強調している。

6.協力協定

 2013年1月1日、両社は協力協定を結ぶが、これが後に10億米ドルもの賠償金を求める訴訟へと発展してしまうことになった。Qualcommによれば、この協定では、「ある一定条件の下で、QualcommはAppeに何億米ドルもの支払いを要求された」という。

泥沼化する法廷係争

 Qualcommは協力協定に基づくAppleへの支払いを中止したが、その理由の1つについて「AppleがQualcommに対する規制手続きを誘発させようと、世界各国の政府がQualcommの商慣行について誤解するよう仕組んだため」と主張した。

 2017年1月に南カリフォルニア連邦地方裁判所で起こした訴訟では、AppleはQualcommがチップの過剰請求を行った他、取り決められたリベートのうち約10億米ドルの支払いを拒んだと申し立てた。Appleの主張によると、Qualcommは協力協定に基づき、取り決められたリベートを四半期ごとに支払うことに同意しているという。

 だが、Qualcommの見解では、取り決めを反故(ほご)にしたのはAppleの方だという。Qualcommは「協力協定の条項は、両社が合意した“誠意を持って協業する”という目標を反映するものであるが、Appleは契約責任を履行しなかった。その代わりに、Appleは当社に対して世界的な攻撃を仕掛けた」と訴えた。

解決の時期を見通すことは難しい

画像はイメージです

 AppleがQualcommに対して“脅し”や“非合法なたくらみ”を行っているというQualcommの主張は、一連の法的訴訟で両社が明らかにした細かな点に関連している。

 AppleとQualcommが長年にわたり、数多くのビジネス上の取り決めを問題なく結んできたことを踏まえると、最大のスマートフォンベンダーであるAppleが、チップベンダーであるQualcommに“大口のデザインウィン”という約束をちらつかせながら、一連のリベートを要求してきたというのは、にわかに信じ難い話である。

 一方、無線技術を手掛ける最大手企業であるQualcommが、委託製造業者やシステムベンダーとの特許ロイヤルティーの交渉で何年間も有利な立場を占めてきたことは否定できない。

 いずれにせよ、そのようなQualcommの優位性が、AppleがQualcommを“不法に独占しようとした”という疑いの誘因となっている。

 いがみ合っている両社の事業規模を考慮すると、どちらがどちらを強要しているのかを解明するのは難しい。結局のところ、この論争の根本は、ライセンス協定がうまくいかなくなった、というところにあると思われる。

 今日に至るまで、AppleはQualcommのFRAND条件(公正、合理的かつ非差別的な条件)下では、Qualcommの3G(第3世代移動通信)および4G(第4世代移動通信)関連の標準必須特許のライセンスを取得していない。

 両社による訴訟は、このような複雑な経緯を抱え、それぞれ異なる時間軸で進行していることもあり、解決の時期を見通すことは難しくなっている。

【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】

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