連載
» 2017年09月21日 11時30分 公開

Over the AI ―― AIの向こう側に(15):心を組み込まれた人工知能 〜人間の心理を数式化したマッチング技術 (5/13)

[江端智一,EE Times Japan]

バビロニアの「妻」のオークション

 実は、結婚の際に女性が持ってくる持参金の額を、男性が競り下げて(これを「逆オークション」といいます)、最も低い金額をつけた男性に譲渡されたのです。

 さて、この「オークション」と「逆オークション」、一見別々のものに見えるかもしれませんが、実は、同じオークションをやっているのです。

 「女性の魅力」を、取りあえず−100〜100点とします。マイナス値は、要するに「『この女性とは結婚したくない』という気持ちの強さを表す数値ということになります。もちろん、「女性の魅力」というのは、バイヤー(嫁を買いにきた男)にとって異なりますが、BC500年のバビロニアでは、比較的評価が単純(線形的)であったと仮定します。

 今回、当時のバビロニアの女性の売買価格リストを入手できなかったので、保険会社のWebサイトを参照して、"えいやっ"と最高額を5000万円としました(私でも、「保険料」と「女性の魅力」には全く関係ないと思います。あくまで、この話の理解を助けるための1つのパラメータと認識してください)。

 このケースでは、3000万円を持っている男性は、魅力度60点以上の女性を落札することができません。また、2000万円(の持参金)を持っている女性には、魅力度−40点以下の女性を受け入れることのない男性に落札してもらえるチャンスはありません。

 実はこれ、「マイナス5000万円を最初の競り価格としている」と考えれば、値段を上げていくオークションと同じことをやっているのです。つまり、上図の縦軸を上方向に向けて、同じオークションをしているわけです。ただ、マイナスのお金を支払う(=お金をもらえる)という特殊なフィールドがあるだけのことなのです。

 こんな面倒くさい図まで作って、私が何をいいたかったかというと、男性であれ女性であれ『仮に、あなたがモテなかったとしても、金(持参金)さえあれば、なんとかなる』……ではなくて、「性的な魅力」と可換可能な価値があれば、私たちは十分に闘えるフィールドにいるということなのです(バビロニアの例では、可換可能な価値は「持参金」で、身もフタもない内容になっていますが)。

 「じゃあ、その“可換可能な価値”って何だ」と問われると、誰もがすぐに、家柄、学齢、年齢、就職、年収、身長、相手方の両親との別居、長男あるいは長女でないこと、などを挙げそうですが ―― 私は、こういうパラダイムはもうダメなのだろうなー、と思っているんです。

 これは個人的な意見なのですが、「可換可能な価値」とは、例えば ―― 「相手に条件を一切求めない」とか「なるようになるさ」とか、「どうせ100年後には生きていないし」といったことになると思うのです。こういう諦観パラダイムこそが、これからのトレンドになるのではないかなー……と、私は考えています。

 閑話休題。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

All material on this site Copyright © 2005 - 2017 ITmedia Inc. All rights reserved.
This site contains articles under license from UBM Electronics, a division of United Business Media LLC.