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» 2017年09月29日 12時00分 公開

Imaginationの売却で:MIPSコアは中国の手に渡るのか (1/2)

Imagination Technologiesが、同社の売却について、2つの投資ファンドと合意したと発表した。このうち1つは、中国資本の米Canyon Bridge Capital Partnersである。中国メーカーは長年にわたり、MIPSアーキテクチャを使用してきたが、今回の買収によってついに中国がMIPSを手に入れるのだろうか。

[Junko Yoshida,EE Times]

Imaginationの売却先

 半導体業界の観測筋は、英Imagination Technologies(以下、Imagination)の売却について、その詳細に強い興味を示している。

 Imaginationの売却に関しては、2017年6月に既に売却決定を発表しているため、以前から広く知られていた。これは、同社の最大顧客であるAppleが同年4月に、「iPhone」をはじめとする自社製品において、Imaginationの技術利用を段階的に停止していくと発表したことを受けての判断だった。

 Imaginationが2017年9月22日に発表した契約によると、同社は、Canyon Bridge Capital Partners(以下、Canyon Bridge)への売却と、Tallwood Venure CapitalへのMIPS事業部門の売却にそれぞれ合意したという。これに対して市場観測筋は、いくつかの疑問点を指摘している。

 まず、Imaginationが、中国政府から一部資金提供を受けている未公開株式投資ファンドであるCanyon Bridgeに対して、MIPSのIP(Intellectual Property)へのアクセスを許可するという形で合意したのかどうかという点が挙げられる。

 さらに、ImaginationとMIPSをそれぞれ買収する2社のベンチャーキャピタルは、互いをよく知っているのだろうかという点も挙げられるだろう。

 Imaginationは、今回の売却に合意することにより、外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the U.S.)による調査を受けないまま、Canyon Bridgeに対してMIPSのIPコアや各種特許にアクセスできるよう、実質的にバックドアを開放することになるのだろうか。

 中国が長年にわたり、MIPSを熱烈に支持してきたのは、周知の通りだ。中国メーカー各社はこれまで何年もの間、MIPSを使用している。また中国政府は、「今後政府資金を投入予定の全てのプロジェクトにおいて、MIPSアーキテクチャを使用していく考えだ」と主張していると報じられている。

各投資ファンドとの合意の内容とは

 今回発表された契約の内容について、詳しく見ていきたい。

 Imaginationは、Canyon Bridgeによる5億5000万ポンド(約7億4250万米ドル、約833億円)での買収に合意したと発表した。取引は全て現金で行われるという。Canyon Bridgeは最近、米Lattice Semiconductorを買収する予定だったが、その計画は米国のトランプ大統領によって阻止されている(関連記事:投資ファンドによるLattice買収が破談に)。

 また、Imaginationは同じく9月22日に、同社のグローバルMIPS CPU事業部門を、Tallwood Venture Capitalに6500万米ドルで売却する契約にも合意したと発表した。Tallwood Venture Capitalは、米国カリフォルニア州パロアルトと中国・無錫にそれぞれオフィスを構えている投資会社だ。

 MIPS関連の特許の大半は、既に2013年に、会員制の特許保有企業であるAllied Security Trustが設立したBridge Crossingに売却されている。しかしこの時、プロセッサ関連の特許やMIPS Technologiesの特許などは、Imaginationが取得したという。

 Imaginationはプレスリリースの中で、「MIPSの売却を完了させることが、Canyon Bridgeによる買収に合意するための条件の1つとなっていた」と説明している。

 ImaginationのCEOであるAndrew Heath氏は、発表資料の中で、「Imaginationは、Canyon Bridgeへの売却により、力強い成長見通しを持って、英国を拠点とする独立したIPライセンス供与事業部門としての位置付けを維持しながら、世界中で活動することができると確信している」と述べている。

 もし、ImaginationがMIPSを保持したままであれば、Canyon BridgeによるImaginationの買収は、確実にCFIUSの調査対象となっていただろう。

 Imaginationによると、MIPSのCPU事業には、全てのMIPS IPと各種特許が含まれているという。MIPS IPと各種特許は、米国内で開発されているため、Imaginationの米国事業部門に保有権があるという。

 現時点で不明なのが、ImaginationがTallwood Venture CapitalにMIPSを売却するとなれば、CFIUSの調査対象になるのかどうかという点だ。

 業界としては、米国政府からLattice買収を阻止されたCanyon Bridgeが、何らかの合意を提示するのではないかと懐疑的に見ているようだ。例えば、Tallwood Venture Capitalから全てのMIPS IPの無期限ライセンスを取得するといったことなどが考えられる。もしそうなれば、Canyon Bridgeが、中国政府の半民間団体として、ついにMIPSを入手できる可能性が高まる。

 しかし現時点では、Imaginationが今回の2つの契約の中で、MIPS IPを手に入れたいCanyon BridgeがCFIUSの監視の目をくぐり抜けられるよう、何らかの調整をしている様子は伺えない。今回のような金銭的取引は規制当局にとって、特にはるか東方に存在する中国の企業が関与しているような場合、把握することが非常に難しいといえる。

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