連載
» 2017年10月25日 11時30分 公開

この10年で起こったこと、次の10年で起こること(19):iPhone 8の分解で垣間見た、Appleの執念 (2/3)

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]

メイン基板上のSIPから分かる、Appleの半導体開発力の高さ

 iPhone 8の全チップを解析した結果、明らかになったことの1つが、メイン基板上のチップの半数以上が、2つ以上のチップを1パッケージに収めたSIPであるという点だ。図2の左下の円グラフで、それを示している。スマートフォンのように、高度なシステムやセンサー、通信機能を小さな筐体に収めようとすると、平置きでシングルチップを置くことができない。そのため、多くのチップをSIP内に重ね置きすることで面積、体積を最小化していく必要があるわけだ。

 他のスマートフォンもiPhone 8同様に多くのSIPチップを使っているが、AppleのSIP率は半数超えと極めて高い。一般的にはせいぜい30%くらいだ。Appleが、いかに集積度を上げるために、SIP化を進めているかが、iPhone 8では明らかになった。特に通信用のパワーアンプなどをモジュール化し、BOM(Bill Of Material)やフットプリントの大幅な改善を行っている。

 モジュール化されたパッケージまで含めて、iPhone 8の全チップが、Apple専用か、他メーカー製品にも使われる汎用品かをまとめた円グラフが、図2の右下である。70%弱がApple専用としてパッケージ化され基板に搭載されている。

 専用チップやパッケージをここまで作り込んでいる点で、Appleの開発力の高さ、半導体に対する執念が見える。

 多くのスマートフォンは、QualcommやMediaTekのチップセットをそのまま活用する。それはそれで優れた方法だが、ほぼ同じものができてしまう。プラットフォームは、多くの新興メーカーの成長を支え、短期間での開発を可能にした。しかし時に「帯に短し襷に長し」になってしまうこともあるだろう。Appleは、真の意味で、「その時に実現できる最高」を常に目指していると思われる。

 スマートフォンなど最新の製品では、チップ開封を行わない限り明らかにはならないことが増えている。今後も、話題の製品、注目の商品はブラックボックスで判断せず、開封分析による判断を行っていく。A11プロセッサは、Apple独自開発のGPUやAI(人工知能)にも活用するNPU(Neural Processing Unit)が搭載されている(場所は判定済み)。

 チップサプライヤーについては、多くはiPhone 7と同じだった。ただし、1社だけ変更されている。6軸センサー(3軸加速度センサー+3軸角速度センサー)のサプライヤーは、従来は米国InvenSenseであったが、iPhone 8ではドイツのBOSCHがデザインウィンを獲得している。

35個ものチップが500円玉大に集積されている

 さて、2点目はApple Watch Series 3(以下、Watch 3)だ。こちらは多機能なウェアラブル。Watch 3になって、LTE通信チップが付加された。

 図3はWatch 3を分解し、内部のSIP「S3」を取り出し500円玉と並べた様子である。体積は若干500円玉より大きいが重さは半分以下。このS3にはメインプロセッサ機能に加え、LTE通信機能、16GBのストレージメモリ、Wi-Fi/Bluetooth通信用チップなど多くのチップが入っている。

図3:2017年9月22日に発売した「Apple Watch Series 3」(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 裏面にはセキュリティチップや通信用のパワーアンプモジュールが並ぶ。SIPには21個のチップが搭載されていて、そのSIPにパッケージオンされるチップは、パッケージ内のチップも含めてカウントすると計14個、つまりS3には合計35個のチップが実装されている。

 35個ものチップが500円玉サイズに収まっているわけだ。具体的には、Appleが独自で開発したWatch用プロセッサ(デュアルコアプロセッサ)、ディスプレイコントローラー、オーディオコントローラーなどを1チップ化したものや、「W2」と命名されたApple独自のWi-Fi/Bluetooth通信チップが搭載されている。さらに、2年前のモデルである「iPhone 6s」で採用されたQualcommのLTEモデムチップセット「MDM9635」など3チップがセットで搭載されている。モデムプロセッサ、電源制御IC、RFトランシーバーの3点だ。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

All material on this site Copyright © 2005 - 2017 ITmedia Inc. All rights reserved.
This site contains articles under license from UBM Electronics, a division of United Business Media LLC.