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» 2017年10月25日 11時30分 公開

この10年で起こったこと、次の10年で起こること(19):iPhone 8の分解で垣間見た、Appleの執念 (3/3)

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]
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Watch 3の解析手順

 図4は、Watch 3の解析の手順である。まずS3(図4左)の上部を除去する(図4中央)。面実装された基板内部がむき出しになる。ここにはチップ単体で搭載されたものや、重ねて搭載されたもの、受動素子などが、配置されているまま現れる。

図4:Watch 3のチップを全て開封することで、システムが明確になった(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 次の工程としてSIP上のチップや部品を分離する。分離したチップの1つ1つを洗浄し、型名などを読み取り、さらにチップ内部の観察を行う。プロセッサは配線層まで除去し内部の構成を解析する。

 最後に、開封された各チップをS3基板に再配置し、“機能面を見える化”して復元する(図4右)。チップは、機能が見えない裏面が上になるように実装されているので、内部機能を判定できない。図4右では、チップを取り外し、実際の内部パターンが見える向きに置き換えて、機能や接続関係を見えるようにしているというわけだ。

新旧混合の「Apple Watch Series 3」

 半導体チップには、設計および開発の段階で年号をチップ上に搭載することが多い。ここには実に多くの情報が書かれている。製品型番や年号、メッセージや製造工場の情報などだ。全てのチップに対して、それらの情報も観察した。

 図4の下部、棒グラフは、S3の主要機能チップの年号観察結果である。最も多かったのは年号情報が搭載されていないチップで、9つ。その他、さまざまな年号のチップが採用されていることが明確になった。年号が判明したチップのうち、最も古いものは2011年で、最新は2017年だった。

 先述した通り、iPhone 8では、ほとんどのチップがiPhone 7から置き換わっていた。年号でいうと、多くが2015年〜2017年になる。一方でApple Watch Series 3は、iPhone 6s(2年前)と同じモデムチップセットを使うなど、2モデル前のプラットフォームを活用した新旧混在の製品となっている。

 iPhone 8およびApple Watch Series 3の分解では、他のスマートフォンやスマートウォッチでは見られない、多くの最新実装技術やチップセット、モジュールを見つけることができた。「見えないところ」にも最善を尽くすというAppleの姿が垣間見える。

 同時に解析を行ったApple TV 4Kもしかりであった。テカナリエは、日本メーカー製品も数多く分解、解析しているが、Appleのような手の込んだものを見ることは、皆無である(これはこれで切ない気持ちになる)。

 iPhone Xにも、注目の技術が使われているに違いない。次回は、iPhone Xの解析結果を紹介できればと思っている。

「この10年で起こったこと、次の10年で起こること」連載バックナンバーは、こちら

筆者Profile

清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント

 ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。


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