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» 2017年11月13日 10時00分 公開

なぜソニー イメージセンサーは強いのか:第一線で活躍中のエンジニアが明かす“ソニー イメージセンサーの強み”

IoT(モノのインターネット)化の流れの中で、スマートフォン、デジタルカメラから、自動車、産業機器、医療機器などあらゆる機器に搭載されつつあるイメージセンサー。さまざまな半導体メーカーが、この有望なイメージセンサー市場に参入する中で、ソニーは世界屈指のシェアを保ち続けている。なぜ、ソニーがイメージセンサーの黎明(れいめい)期から先頭を走り続けられていられるのか。ソニーのイメージセンサー開発の第一線で活躍するエンジニアに聞いた――。

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成長著しいイメージセンサー市場を常にリード

 年間約14億台という膨大な台数が出荷されるというスマートフォン。そのスマートフォンのほとんどは、リア(裏面)とフロント(表面)にカメラを備える。すなわち、カメラのキーデバイスであるイメージセンサーは、スマートフォンだけで年間28億個以上は、使用されることになる。

 イメージセンサーの用途は、スマートフォンに限ったことではない。デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラはもちろんのこと、タブレットPCやノートPC、携帯型ゲーム機などにも搭載される。昨今では、自動車やドローン、画像検査装置などの産業機器、さらにはさまざまなIoT(モノのインターネット)機器にも搭載される。あらためて言うまでもなく、イメージセンサーの市場は拡大を続けているのだ。

 成長著しいイメージセンサー市場で、世界をリードし続けているのがソニーだ。1970年から“電子の目”としてCCDイメージセンサーの開発に着手し、1980年に商品化。CCDイメージセンサーを搭載したデジタルビデオカメラ“ハンディカム”が世界を席巻し、デジタルスチルカメラの普及にもソニーのCCDイメージセンサーが貢献してきた。

 2000年代に入り、携帯電話機にカメラが搭載されるようになると、高速、低消費電力のイメージセンサーのニーズが拡大するとして、CMOSイメージセンサーの開発を本格化させる。当時、CMOSはCCDよりも高速、低消費電力であるものの、画質が劣り、安かろう悪かろうというイメージが定着していたが、CCDで培った高画質技術を生かして独自のカラムA/D変換技術を開発し、高画質を特長にしたCMOSイメージセンサーを投入する。

 さらに、それまで配線層の下に配置していたフォトダイオード(画素)を、配線層の上、受光部直下に配置し感度を大幅に高めた裏面照射型CMOSイメージセンサーを業界に先駆けて商品化し、CMOSイメージセンサーでもリーダーの地位を確固たるものにする。

従来の表面照射型CMOSイメージセンサー(左)と、裏面照射型CMOSセンサーの違い。裏面照射型では、受光部直下にフォトダイオードが配置でき、感度を高めることができる

 その後も、同一チップ上に形成することが当たり前だった画素と信号処理回路を、別チップに形成し、画素チップと信号処理回路チップを重ね合わせた構造の積層型CMOSイメージセンサーを開発。

従来は、画素領域と回路領域が同一チップに形成されたが、積層型はそれぞれ別チップに形成し、重ね合わせた構造。この構造により、画素、回路それぞれに応じた製造プロセスを適用しやすくなる他、回路規模の制約も大きく緩和され、イメージセンサー内でより高度な処理が行えるようになる。

 2017年には、画素チップ、信号処理回路チップにDRAMを加えた3層構造の積層型CMOSイメージセンサーを商品化。画素からいったん読み出した信号をイメージセンサー内のDRAMで記録することで、これまで大型のプロ用カメラしかできなかった1秒間に1000フレームという超高速な動画撮影、スーパースローモーション撮影を、スマートフォンなどモバイル機器で手軽に楽しめるようになった。

なぜブレークスルーを起こし続けられるのか

 裏面照射型や積層型など、それまでのイメージセンサー業界の常識を覆すブレークスルーを相次いで起こし、業界をリードし続けるソニー。なぜ、ソニーは、このようにさまざまなブレークスルーを起こすことができるのだろうか――。

 「いろんなもの、新しいものにチャレンジしていく――。ソニーにはそういうカルチャーのようなものがあるから」。ソニーの半導体事業会社であるソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)の社長である清水照士氏はこのように説明する。

ソニーセミコンダクタソリューションズ 社長 清水照士氏

 「昔からソニーは自由闊達(かったつ)だと言われますが、今も、言われたことだけをやるのではなく、エンジニア、社員が思っていることを自由に言いながら、チャレンジできる環境が整っている」

 果たして本当に“自由闊達”な文化が、ブレークスルーを生みだしているのだろうか――。今回、イメージセンサー開発現場の第一線で活躍し、現在はSSSで統括部長を務める3人のエンジニアにインタビューを試みた。

垣根なく研究開発を進めることができる環境

 田谷圭司氏は、デバイス開発エンジニアとして、裏面照射技術や積層技術などの数々のブレークスルー技術の開発に立ち会ってきた経歴を持つ。「感度を高める、ノイズを抑えるなど大きな目標に対して、エンジニアがアイデアを出し合い、開発に着手し、市場で使用されるようになっている」と話す。そして、「重要なのは、アイデア。もっと新しいアイデアが欲しいと常に思っている」と付け加える。

田谷圭司氏

 新たな技術、より良いイメージセンサーの実現に向け、新たなアイデアを追い求めるのは、田谷氏に限ったことではない。「ミッションを成し遂げるために、デバイス開発エンジニア同士だけではなく、プロセスエンジニア、回路設計エンジニアとも常にコミュニケーションを図り、情報を共有し、アイデアを探している。組織や立場に関係なくアイデアを求めアイデアさえあれば、すぐに試せる環境になっている」という。

 「私たちは主にモバイル機器向けの開発を担当しているが、すぐ隣には車載や医療機器向けを担当するエンジニアがいる。互いにアイデアを交換し合うのも当たり前。アイデアを出し合い、ブラッシュアップすることで、より良い特性、より良い技術を目指している」と強調する。

 「エンジニアとして、皆、良い技術、顧客の価値になるものを作ろうと強く意識している。与えられることだけではなく、自ら考えて実行することが重要。新しいことを試せる環境が整っていて、データの裏付けがあれば、自ら考えた技術が採用される」と断言する。

新しいことにチャレンジできる風土

 「ブレークスルーとされるような革新的な技術の中にも、上司の反対を押し切って開発を続け、製品化に至ったケースがある」。こう打ち明けるのは、モバイル機器向けイメージセンサーの商品設計を担当する西海栄一氏だ。「ブレークスルーとまでは言わないものの、新しいアイデア、技術に対して上司が否定的でも、押し切って開発を続け、結果、採用されるということは多々ある。自分自身にも経験がある」という。

西海栄一氏

 10年ほど前、CCDの出力回路の設計を担当していた西海氏は、出力精度を高めることのできる新しい回路アーキテクチャを発案したが、当時の上司は、残された開発期間が短いために採用を見送ることを決断。しかし、「根拠のない自信があった」という西海氏は諦めきれず、上司に隠れて新方式の回路をこっそりと試作チップに入れ込んだ。出来上がった試作チップを評価したところ、理論通りの性能改善がみられ、結果として実際の製品に採用されたという。

 西海氏は「その後しばらくは、試作する度に上司から『今回は、隠していることはないだろうな』と念押しされるようになった」と笑いつつ、「当時の上司は、私が隠して新回路を入れ込んでいることは気づいていたはず。新技術の導入にはリスクがあることを私に理解させた上で、チャレンジさせてくれたのだろう」と振り返る。

 上司に隠れて新回路を入れてから10年ほどが経ち、上司の立場となった西海氏。「顧客など周囲に迷惑を掛けるリスクをなくしていくのが上司の役割だと感じている。けれど(部下のエンジニアには)リスクを消すために置いている防波堤を乗り越えて、ソニーの常識を覆していってほしい」と語る。

「圧倒的トップだ」という強い自負

 デジタルカメラ向けなどのイメージセンサーの商品設計を担当する角本兼一氏は、ソニーのイメージセンサー事業の強さの背景には「イメージセンサー業界で圧倒的トップだという強い自負」があることを挙げる。

角本兼一氏

 「ソニー以外の会社で勤務したこともあるが、ソニーでは、とにかく目標を高く設定する。競合が追い付けないぐらいの目標を設定する。エンジニアにとっては、難しい課題にはなるのだが、明確な事業戦略に沿った目標であり、皆それぞれ強い自負を持っているため“目標に向かってがんばるぞ”と思わせる社風になっている」と説明する。

 角本氏自身も「ソニー入社時に掲げた目標は“世界を征服すること”だった」という。「当時は、ちょうど一眼レフカメラがフィルムからデジタルに置き換わりつつある時期で、デジタル一眼向けイメージセンサーの特性は競合に劣っていた。競合に追い付くために、新プロセスを導入したものの、最初の試作で全く画が出ないというようなトラブルも経験した。試行錯誤の末、新プロセス導入の効果もあって良い商品に仕上がった。その結果、自分の設計したイメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラの市場シェアが1位となり、入社当時の目標を達成することができた」という。

 「まだまだわれわれのイメージセンサーを世界中に届けたいという思いは強い。圧倒的トップという自負から、役に立つかどうか分からないというような部分にも投資するという環境も整っている。商品に強い思い入れを持って、熱く、やりきる気持ちを思っていれば、もっと世界を征服できる」と今後も業界をリードしていくという気概を示す。

イメージングそして、センシングでも

 ソニーの半導体事業売上高は、2015年度7391億円、2016年度7731億円、そして2017年度見込みは8800億円と成長を続けている。8800億円のうち8割ほどはイメージセンサー関連売上高が占めており「絶対的な事業の柱としてさらに強化する」(ソニー)との方針を打ち出している。

 一方で、イメージセンサーの主力用途であるスマートフォン市場は、需要が一巡し出荷台数の成長は年々、鈍化している。将来に不安はないのだろうか。

 田谷氏は「確かにスマートフォンの出荷台数の伸びは鈍っているかもしれないが、不安は全くない。スマートフォンに限っても、リアカメラの複眼化が進みつつあり、イメージセンサー需要は一層、増える。それに加えて、車載や産業機器などスマートフォン以外でもイメージセンサーの用途は拡大を続けている」と言い切る。

 社長の清水氏も「きれいに写すという“イメージング”の部分で成長を続けてきた。今後もこのイメージングは大きな市場であり続けるけれど、これからは、正しく認識するという“センシング”の市場が成長してくる。具体的には車載や、ロボットやマシンビジョンといったFA系だ。ソニーではこれからセンシングという、イメージングとは別の大きな流れを作ろうとしている」との方針を示す。

センシングでも次々とブレークスルー

 実際にソニーがイメージセンサーで起こすブレークスルーの範囲は拡大しつつある。

 2017年4月には車載向けのイメージセンサーとして、LED標識や信号機などの撮影時に起こるLEDフリッカーの抑制と高画質な広いダイナミックレンジでの撮影を同時に実現する業界初の高感度CMOSイメージセンサー(型番:IMX390CQV)の商品化を発表。自動運転時代を見据えたイメージセンサーであり、月明かりに相当する低照度0.1ルクスでも高画質なカラー映像が撮影できる。

低照度(0.1ルクス)時の「IMX390CQV」による撮影映像サンプル画像(左)と目視イメージ画像(右)との比較

 マシンビジョンなどの用途に向けても2017年5月には、より規模の大きい信号処理回路を搭載できる積層型CMOSイメージセンサーの利点を生かし、毎秒1000フレームで対象物の検出と追跡を行うことが可能な高速ビジョンセンサーの商品化を発表。従来のイメージセンサーは毎秒30フレームで処理するのが一般的な中で、新商品はこれまでより約33倍高速な処理を実現している。

 さらに2017年6月には、イメージセンサーを応用した裏面照射型でToF[Time of Flight]方式の距離画像センサーの開発を発表。ソニーが2015年に買収したSoftkinetic Systems(ソフトキネティックシステムズ)のToF方式距離画像センサー技術と、ソニーの裏面照射型CMOSイメージセンサー技術を組み合わせて、画素サイズを10μm角に小型化。このToF方式距離画像センサーの開発成果論文は、国際学会「VLSI Symposia on VLSI Technology and Circuits(VLSIシンポジウム)」でも採択されるなど大きな注目を集めている――。

開催決定! 「なぜソニー イメージセンサーは強いのか」に迫る勉強会

 ソニーのイメージセンサー技術者が直接、DRAM積層型イメージセンサーやスーパースローモーション技術といった最新の開発成果について、開発秘話や裏話を交えて、解説します。

 なお本勉強会は、半導体設計開発エンジニアとして従事されている方の技術知識水準を前提にして実施します。あらかじめご了承ください。


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提供:ソニー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月12日

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