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» 2017年11月06日 11時30分 公開

“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日(16):「不満」は健全な組織のバロメーターだ (1/3)

企業の立て直しが続く中、コンサルタントは「不満が出てくるのは、健全な組織のバロメーターでもある」と説く。大事なのは、その不満分子を不満分子として終わらせず、いかに“好転”させるかなのだ。

[世古雅人,EE Times Japan]

「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー

これまでのお話
映像機器関連の開発、販売を手掛ける湘南エレクトロニクス(湘エレ)。同社が社運をかけて開発した最新のデジタルビデオカメラについて顧客から1本のクレームが入り、それが引き金となって、経営刷新計画が始まった。すさんでいく会社を何とか変えようと立ち上がった中堅エンジニアの須藤を中心に、社内改革プロジェクトが始まる。湘エレの立て直しが何とか進む中、一連の出来事の発端となった「エバ機不正問題」も、急速に動きだす気配がみられた――。



変えるべきは「組織の風土」

 業務改革が進む一方で、これまで動きが停滞していた不正解明は、急激に動き出す気配があった。湘南エレクトロニクス(以下、湘エレ)の競合でもあるプレシジョンイメージング社(以下、プレ社)に、湘エレの技術が流出した疑いが濃厚になってきたのだ。

 杉谷・若菜:「技術流出の話を少し聞いていますが、今日はせっかくプロジェクトのメンバー全員が集まっていることもあり、意識改革から組織風土の話、不満が出てくることの健全さについて話してみたいと思います」

 以下は、杉谷の話である。


 ここ最近、日本を代表する大手企業による企業不祥事が続いていますよね。

 「日産自動車による無資格者による出荷検査」「神戸製鋼による試験データ改ざん」などです。第1回の冒頭においても、「相次ぐ大企業の不祥事」として2016年に目立ったものをいくつか挙げましたが、これら不祥事の原因として企業体質や組織風土の問題と帰結していることは、以前から何ら変わっていません。さらに、不祥事を起こした企業の体質改善に挙げられることも、「社員の意識改革を徹底する」「社内のコミュニケーションを活性化する」など抽象的なことばかりで具体性に欠けるものばかりです。

 湘エレの社風も、「ホンネで話ができない」「社内でおかしいという声を堂々と挙げることがはばかれる」など、今、取り組んでいる改革プロジェクト以前から問題視されてきていますが、真剣に向き合ってきたのは須藤さんを中心とした、ここにいる皆さんたちです。

 「どうせ言っても変わらない」……と、諦めモードの社員ばかりだったようですが、エバ機不正問題に端を発した経営施策の中で、全社員の4分の1に近い450人が希望退職せざるを得ない事態になり、最初は反発していた社員たちも、徐々に皆さんの活動に協力的になり、その変化の兆しは皆さんも感じていることでしょう。

 図1を見てください。意識改革と風土改革の違いについて示したものです。

図1:「意識改革」と「風土改革」の違い(クリックで拡大)

 意識改革は個人に働きかけを行うものですが、風土改革は個人を取り巻く環境――すなわち、組織に働きかけをするものです。大事なことは、意識が変わることよりも、具体的な行動がどう変わるかです。

 そのためには、個人の意識が変わっても、個人が動けない、ホンネで話ができない、組織内で相談できないといった社風を作っている要因を取り除くことです。こうした要因を取り除くことが、意識改革ではなく風土改革です。個人と個人の関係性を変えていくということに他なりません。

 われわれ(杉谷、若菜)は、早くから湘エレに根強く潜んでいる組織風土の問題に着目してきました。改革プロジェクトの随所に風土改革の要素を取り入れてきたつもりです。そのいくつかは第11回で示してきましたが、「見える化」だけでなく「言える化」の取り組みや、「ハード」と「ソフト」を並走させながら、一人称で行動させる仕掛けで個人の主体性を引き出す、といった手法を皆さんに実践してもらってきました」。

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