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» 2017年11月29日 13時30分 公開

熱電変換出力因子は2〜6倍:北大ら、性能を高める熱電材料の設計指針を示す (1/2)

北海道大学と韓国の成均館大学校、産業技術総合研究所(産総研)らは、窒化ガリウム(GaN)の高い電子移動度を活用した半導体二次元電子ガスが、既存の熱電変換材料に比べて、2〜6倍の熱電変換出力因子を示すことを発見した。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

GaNの高い電子移動度を生かした半導体二次元電子ガスを利用

 北海道大学と韓国の成均館大学校および、産業技術総合研究所(産総研)は2017年11月、窒化ガリウム(GaN)の高い電子移動度を活用した半導体二次元電子ガスが、既存の熱電変換材料に比べて、2〜6倍の熱電変換出力因子を示すことを発見したと発表した。

 温度差を直接電気に変換できる熱電変換デバイス向けに、優れた特性を持つ材料の研究が世界中で活発に行われている。既に、米国や中国の研究者からは熱電変換性能指数(ZT)が「2」を上回る材料も発表されているが、実用化までには性能の再現性など多くの課題が残されているという。

 北海道大学電子科学研究所の太田裕道教授と同大学量子集積エレクトロニクス研究センターの橋詰保教授、成均館大学校の金聖雄教授、産総研の山本淳研究グループ長らによる共同研究グループは今回、これまでのようなセラミックや焼結体ではなく、粒界が存在しない「単結晶」を材料に用いた。

 熱電材料を高性能化する手法として、熱電変換出力因子を増強する方法と熱伝導率を低減する方法があるという。今回の研究では、熱電変換出力因子を増強するための仮説に基づいて実験し、検証した。

 研究グループが着目したのは、GaNの高い電子移動度を生かした半導体二次元電子ガスである。半導体二次元電子ガスは、静電気によってGaN結晶中の電子を薄い領域に寄せ集めることで導電率を高める。ケイ素などの不純物を含まないため、半導体二次元電子ガスの電子は移動度が高く、大きな熱電出力が得られる可能性が高いと予測した。

上図が一般的な半導体(不純物添加)、下図が半導体二次元電子ガスの熱電出力の模式図 出典:産総研

 今回の研究では、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、GaNからなる半導体二次元電子ガスの上に、静電気力を変化させるためのゲート絶縁体として膜厚が30nmの酸化アルミニウムを積層。熱電効果を計測するためにソース、ドレイン、ゲート電極を備える3端子の薄膜トランジスタ構造とした。

上図が作製した半導体二次元電子ガスの模式図、下図は計測の様子 出典:産総研

 ゲート−ソース電極間にマイナスの電圧を加えると、二次元電子ガスの電子濃度が減少。逆にプラスの電圧を加えると二次元電子ガスの電子濃度が増加する。実験ではゲート−ソース間に一定電圧を印加し、二次元電子ガスの電子濃度を制御した状態で、2つのペルチェ素子を用いて二次元電子ガスに温度差を与え、ソース−ドレイン電極間に発生する電圧(熱起電力)を電圧計で計測した。

 測定結果から、シート電子濃度を高めても半導体二次元電子ガスの電子移動度は減少せず、1012〜1013cm-2の範囲で、1000cm2V-1s-1を超える電子移動度が維持されていることが分かった。これに対して、温度差1℃当たりに発生する電圧(熱電能)は、一般的な半導体と同様にシート電子濃度の増加に伴ってその絶対値が減少した。

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