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» 2017年12月14日 09時30分 公開

EVの普及は電力供給が課題:新しい半導体の流れを作る、IoTと5G (1/2)

新しい半導体の流れを作るとみられる「IoT&5G」。IHS Markitは中国が取り組む新たな戦略や、IoT(モノのインターネット)と自動車市場をめぐる半導体メーカーの取り組みなどを紹介した。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

EVでゲームチェンジ狙う中国

 市場調査会社のIHS Markitは2017年11月30日、「IoT&5G市場分析セミナー」を東京都内で開催した。新しい半導体の流れを作るとみられる「IoT&5G」。同セミナーの中から、中国の新たな戦略や、IoT(モノのインターネット)と自動車市場をめぐる半導体メーカーの取り組みなど、その概要を紹介する。

南川明氏

 同社テクノロジー・メディア・テレコム部門のディレクターを務める南川明氏は、「IoT普及に必要な5G(第5世代移動通信)インフラ投資〜中国の新たな戦略とEVの影響を分析する」というテーマで講演した。

 世界の電子機器市場は2010年以降、それまでのPCや携帯電話に代わり、産業機器や車載エレクトロニクスがけん引するという。IoTの主戦場もFA機器やロボット装置などの産業機器や車載システムの分野に広がった。

 この結果、機器に搭載する半導体チップの構成も変わる。産業機器や車載システムでは従来のマイコンやメモリ、ロジックICだけではなく、アナログICやセンサー、オプトデバイスなどの需要が拡大する。これに伴い、レガシープロセスを用いた製品比率が、2000年代後半から徐々に拡大しているという。しかも、8インチウエハーや同ウエハーを用いた生産ラインの能力が不足しているため、需給バランスはタイトな状態が当分は続く見通しである。

半導体IC別の売上高実績と予測 (クリックで拡大) 出典:IHS Markit

 自動車市場について南川氏は、「EVの時代は簡単に来ない」と、一般的な予測とは異なる見方を示した。当面は、エンジン出力をモーターの出力でサポートするマイルドハイブリッドカーの出荷台数が増える、と予測する。

新エネルギー車のなかで、当面はHEVが主力と予測 (クリックで拡大) 出典:IHS Markit

 この背景には電力供給の問題があるという。現在、電力会社は15%の余力を持って電力供給を行っている。これが10%の余力になると、停電など電力供給の問題が懸念されるからだ。日本で保有される自動車の半分がEVに置き換わると、通常の充電を行った場合でも原発3基分に相当する電力が新たに必要になると試算している。つまり、電力インフラの視点から、「早急にEV出荷比率を全体の30%まで高めることは困難」と判断した。

 ただし、「中国市場は別問題」(南川氏)という。国策として一気にEV化を推進することでゲームチェンジを行う。これによって、中国の自動車産業を世界レベルにまで高める狙いがある。電力不足を解消するため、原発50基の建設計画も明らかにしているという。

 自動車に搭載されるIC需要は、EVよりも自動運転車が、はるかに大きいことも示した。車1台当たりの半導体搭載額を調査した結果、ガソリン車は220米ドル、EVは400米ドル、HEVは480米ドルに対して、自動運転レベル3の車両は、800米ドルに達することが分かった。自動運転レベルが向上すると半導体搭載額もさらに高額となる。

自動車用半導体の売上高推移 (クリックで拡大) 出典:IHS Markit

 世界的な電力消費の増大は、EVの普及だけではない。IoTによりデータセンターなどでの増加も影響する。こうした課題を解決するため、消費電力が従来の1000分の1というAIチップの開発が進められている。また、5Gへの移行は、4Gに比べて高速伝送や低遅延といった特長だけでなく、消費電力が小さいというメリットもある。「IoTや5Gへの移行は、新しい半導体の流れを作る」と述べた。

 最後に南川氏は、「IoTの広がりが日本企業のプレゼンスを大きく高める」とも語った。電子部品や電子材料分野における日本企業のシェアは高い。小型モーターなどアクチュエーター製品でも日本企業は強みを持つ。これらの電子部品と半導体技術を融合することで、もっと小型で高性能なアクチュエーターなどを開発することができるという。車載システムや産業機器において、これらの技術力は存在感を高めることになる、と強調した。

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