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» 2017年12月22日 11時30分 公開

Over the AI ―― AIの向こう側に(18):儲からない人工知能 〜AIの費用対効果の“落とし穴” (8/9)

[江端智一,EE Times Japan]

費用対効果の検討、ちゃんとやってるんですよね?

 あらためて、「人工知能によって仕事を奪われる」という主張をしている方々に、本気で伺いたいのです。

 あんたたち、ちゃんとそれぞれのユースケースを描いた上で、現状のAI技術の能力を勘案して、その上で、AI技術に対する投資コストや、AIアプリ/サービスの費用対効果の計算を、当然にやっているんだよな?

―― と。

 私が知る限り、上記で私が検討した程度の、すぐにできるような簡単な試算すら、今まで一度も見たことがないのです(本当)。

 私の感じでは「この仕事は、いずれAIで代替できそう」みたいな、極めて曖昧で主観的で、テキトーなことを言っているとしか思えず、特に、AI技術の導入コストに基づく費用対効果は、最初から完全に無視しているとしか思えないのです。

 少しは、真面目に考えろ ―― と、私は言いたい。

(1)「あ、その荷物、倉庫に入れておいて」と人間に頼むコスト

(2)「あ、その荷物、倉庫に入れておいて」とAI搭載ロボットに頼むために、実現しなければならない、

(a)ロボットの筐体と、
(b)経路探索マップと、
(c)障害物回避プログラムと、
(d)荷物を持ち上げる可動部のアクチュエータと、
(e)無線通信を安定して行う基地局の設置と、
(f)ロボットに給電(または蓄電する)デバイス開発と……(まだまだ、いくらでも書けるけど)、

それらのトータルコスト

 これら(1)(2)の両者の比較を、ちゃんとやれ、と。

 現時点では、そのコスト差は明らかですが、これが10年後、20年後にどうなる、ということを、少しは真剣に考えてから、「人工知能によって仕事を奪われる」のプロセスを、きちんとしたマイルストーン付きで、数値を用いてロジカルに主張しろ ―― と、私は申し上げているのです。

 そして、私が政府や企業にお願いしたいことは、

 『AI技術に対する投資は、その技術の内容を、自分の頭できちんと理解した上で、適正な金額を、適正な期間、コンスタントに行って欲しい』

ということであり ―― つまるところ

『AIバブル(崩壊)に、再度、この私(江端)を巻き込むな』*)

という、この一言に付きるわけです。

*)言うまでもなく、私は、前回の第2次AIバブルの開始から崩壊までのループに飲み込まれた"孤独の観測者"です(アニメ「STEINS;GATE」オープニング曲「Hacking to the Gate」風)

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