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「有線技術なくして5Gは実現できない」 ノキア固定ネットワークの重要性を強調(1/2 ページ)

5G(第5世代移動通信)の開発に取り組むNokia(ノキア)。ミリ波やMassive MIMOなど無線ネットワーク技術が重視されがちだが、ノキアは、固定ネットワーク技術の進化なくして5Gの実現はないと強調する。

» 2018年01月10日 10時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

固定ネットワークも重要だ

 2017年12月21日、5G(第5世代移動通信)の新しい無線方式「5G NR」について、標準仕様の初版策定が完了した(関連記事:5G NRの標準仕様、初版策定が完了)。今後、5G無線ネットワークの開発がますます活発化することが予想されるが、Nokia(ノキア)で固定ネットワーク事業のプレジデントを務めるFrederico Guillen氏は、EE Times Japanのインタビューに対し、「モバイルネットワークが高速になればなるほど、固定ネットワークも重要になる」と強調した。

ノキアのFrederico Guillen氏

 ノキアは2017年11月に、ユーザー向けカンファレンス「GTFF 2017」を東京都内で開催。インタビューは、GTFF 2017にて行った。とりわけ5Gでは、ミリ波の使用やMassive MIMOなどを含め、無線ネットワークでの議論が注目されがちだが、Guillen氏は「モバイルか、固定ネットワークか、という問題ではなく、両方が重要になるので、どちらについてもきちんと議論しなくてはいけない」と語った。

 Guillen氏は、「5Gに移行するには、少なくとも今の10倍の基地局が必要になる。そして、それらの多数の基地局を接続するには光ファイバーネットワークが欠かせない。5Gでは、ギガビット/秒クラスの通信速度と1ミリ秒以下の遅延が要件としてあるが、それを実現できる基盤となるのが、光ファイバーの固定ネットワークである」と述べる。

 同氏は「日本は、世界的に見て最も光ファイバーの敷設が進んでいる国の1つだが、それでも、5Gに対応しようと思ったら足りなくなるだろう」と指摘し、今後の鍵となるのが、1本のファイバーを複数のユーザーで共有するPoint to Multi-Point(P2MP)型の固定ネットワークだと語った。「P2MPの技術なしには5Gを実現するのは難しいだろう」(Guillen氏)

 5Gの開発を進める各国もそれを認識していて、Guillen氏によれば、日本、韓国、米国、中国では特に光ファイバーへの投資が進んでいるという。

古い電話線を使って1Gbpsの通信を実現する

 ただ、光ファイバーの敷設には時間もコストもかかるのが実情だ。「例えばドイツは今、光ファイバーの敷設を進めているが、ドイツ全土に光ファイバーを敷設するには800億ユーロに上る資金が必要だとの試算もある。ドイツは、約10年前から地中にケーブルを埋め込む作業を進めているが、現在の進捗は全国の30%程度だ。100%に到達するにはあと数十年かかってしまう」(Guillen氏)

 そのため、光ファイバーの代わりに、まずは低コストで高速通信を実現する手段としてノキアは「G.fast」を提案している。電話線を利用して1Gビット/秒(bps)の通信速度を実現するという技術だ。ノキアは、世界各国で30件以上のG.fastのトライアルを実施していて、2016年6月には日本の中国地方で家庭向けにG.fastの商用展開を開始した。

「GTFF 2017」で展示した「G.fast」のデモ。電話線を利用し(左)、下りで約1Gbpsの通信速度を実現していた(クリックで拡大)

 もう1つ、鍵になるFTTH(Fiber To The Home)技術としてGuillen氏が挙げるのが、NG-PON(Next Generation-Passive Optical Network)2だ。NG-PON2は2015年に標準化された次世代光アクセスシステムである。10Gbpsの下り・上り通信が可能な波長を4波、1本のファイバー上に波長多重させるので、一般家庭の他企業、基地局など、複数の用途に対応することが可能だ。ノキアは10Gbps対応の他、25Gbps対応のNG-PON2も開発中で、将来的には100Gbps対応も開発する予定だという。

 ノキアの子会社のBell Labs(ベル研究所)で、Head of Access Researchを務めるPeter Vetter氏も、将来のネットワークは有線、無線のテクノロジーの融合が、より重要になると述べる。Vetter氏の研究チームはアクセスネットワークの将来について研究している。

 Vetter氏は、「われわれは、ネットワークの分野で“100X Shift(100倍への移行)”が起こると予想している。現在に比べて100倍の通信容量、100倍の通信速度、100分の1の遅延、100倍のモノがつながる……こういったイメージだ」と述べ、100X Shiftの時代に向け、固定ネットワークと無線ネットワークの両方で技術開発を進めていると語った。

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