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ワイヤレスジャパン2018 特集

波長1270nmを使うRoF通信技術、5Gに貢献する可能性スコットランド企業が開発中

光素子を手掛けるスコットランドのCST Globalは、波長1270nmにおける60GHz帯RoF(Radio over Fiber)を実現できると述べた。5G(第5世代移動通信)向けの要素技術へとつながる可能性がある。

» 2018年04月18日 13時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

 III-V族光素子の製造を手掛けるCST Globalは、波長1270nmにおける60GHz帯RoF(Radio over Fiber)伝送技術*)を実現できる可能性を証明したと主張する。5G(第5世代移動通信)ネットワークの要素技術へとつながる可能性がある。スコットランドに拠点を置くCST Globalは、スウェーデンのSivers IMA Holdingsの子会社である。

*)RoF:高周波の無線信号を光ファイバーにのせて伝送する技術。

 CST Globalによると、ミリ波と光ファイバーによる相乗効果を生み出すRoFネットワークは、有望な通信技術として盛り上がりつつある方式で、特に60GHz帯の広帯域無線アクセスサービスおよびフロントホール向けとして期待されているという。RoFを用いれば、何キロメートルにもわたり光ファイバーでRF信号を伝送できるようになる他、ユニティゲインのRF通信を実現できるとされている。そのため、RoFは帯域制限を軽減し、複数の同軸ケーブルを1本の光ファイバーケーブルに置き換えられるようになると考えられている。さらに、セル範囲を向上できるというメリットもある。

RoF通信の仕組み 出典:Helmut Schmidt University

 RoFでは、光伝送をするために、RF信号を光に乗せるための光変調を行う。これにより、既存の無線通信に比べて帯域幅が大幅に増え、D-A変換が必要なくなるので、結果的には低遅延のソリューションを実現できる。

 CST Globalは、EUによる研究プロジェクト「EU Horizon 2020」の一環として、「iBROW(innovative ultra-broadband ubiquitous wireless communications through tera-hertz transceivers:テラヘルツトランシーバーを介した革新的なウルトラブロードバンドユビキタス無線通信)」という調査を実施した。この調査は、スコットランドのグラスゴー大学が主導し、CST GlobalのリサーチエンジニアであるHoracio Cantu氏が管理する形で行われた。

 iBROWプロジェクトの狙いは、光ファイバーネットワークにシームレスに統合できるような、高効率かつ小型な超広帯域/短距離無線通信用トランシーバー技術を開発することだ。ネットワークに対する将来的なニーズに応えられるようにするためである。2020年には、数十ギガビット/秒(Gbps)ものスループットが求められるようになるといわれているが、既存の無線通信技術では、そのようなスループットのニーズには対応できないことを示す予測もある。iBROWプロジェクトは、こうした予測に基づいて実施された。

 現在利用されている周波数帯では、そのような将来のスループット要件に対応するのは難しい。そのため、より高い周波数帯、すなわち60GHz〜1THzのミリ波帯やテラヘルツ帯を利用する必要がある。CST GlobalのCantu氏は、「波長1270nmの特性はRoFキャリア波長として理想的である」と述べている。Sivers IMAのCEO(最高経営責任者)を務めるAnders Storm氏は、「まだまだ開発が必要だが、(1270nmをRoFに使えると証明した)CST Globalの成果によって、RoFの商用化が見えてきたのではないか」とコメントした。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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