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» 2018年04月25日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(48) 働き方改革(7):女性の活用と、国家の緩やかな死 (7/10)

[江端智一,EE Times Japan]

「女性活用」が「人口減少を加速するエンジン」になってしまう

 では最後に、「女性活用」のシミュレーション結果を示します。

 政府の「働き方改革」の「女性活用」の目的は、労働人口の増加です。少子化によって、税収入は減少する一方で、高齢化によって支出が増大しているからです。

 しかし、既に前述した通り、「女性活用」とは女性を結婚や妊娠から遠ざける」行為そのもので、人口減少を加速するエンジンそのものとも言えます。

 しかし、今さら、高度経済成長時代の「性別役割分担」というドクトリンに立ち戻ることはできません。「性別役割分担」ドクトリンは、全ての国民が結婚して家庭を持つことが大前提ですが、既に、「国民の総てが『結婚→家庭→出産』を選択すること」自体、前提条件として成立していません ―― 「サザエさん的家庭観」は、とっくに崩壊しているのです。

 では、(1)「女性活用」を推進しつつ、かつ、(2)税収の元となる労働人口を増やす、というミラクルの可能性が、たとえわずかでもあるのでしょうか ―― では、ここから、江端シミュレーションを発動してみましょう。

 本シミュレーションでは、高度経済成長時の1970年と、2010年の国勢調査結果を基本パラメータとして使いました。

 まず、年齢別の労働者人口の比率を見てください。

 これを見ていると、男性はこの40年間、全く変化なく、ほぼ100%の男性が、報酬型の労働に従事していることが分かります。一方、女性の方は、若年時に比率が高く、ある年齢になると比率がガクンと減少し、その後、徐々に増加するという「M型」という形になっています。

 これは、比率こそ違えども、今なお、「男は仕事、女は家庭」のモデルが継承されていることを示しています。

 さて、こんな計算には意味がないことは、十分に分かっているのですが、もし「1970年」の「性別役割分担ドクトリン」と、それが許される外部環境(朝鮮戦争が継続中で、日本の円安が維持され続けていて……)が維持され続けたら、一体どうなっていたんだろうか、と思い、上記の労働者人口の比率と、1970年の合計特殊出生率(2.13人)を使って、シミュレーションしてみました(ソースコードはこちら)。

 日本の人口は、今より2500万人ほど増えており、少なくとも労働人口については不安はない状態ではあるようです(まあ、別の問題(食料問題とか、住宅問題とか、インフラ不足とか)が生じていたとは思いますが)。

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