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GaNウエハー結晶面のゆがみ、素早く詳細に評価結晶欠陥の局所的分布を可視化

物質・材料研究機構(NIMS)は、GaN(窒化ガリウム)ウエハー結晶面のゆがみを、素早くかつ詳細に可視化できる新たな手法を開発した。

» 2018年05月21日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 物質・材料研究機構(NIMS)は2018年5月、GaN(窒化ガリウム)ウエハー結晶面のゆがみを、素早くかつ詳細に可視化できる新たな手法を開発したと発表した。

 GaNは、シリコンに比べ高耐圧で省電力などの特長を持つことから、EV用モーターの制御回路や5G(第5世代移動通信)システム向けの高周波デバイスといった用途で注目されている。しかし、現状では結晶欠陥などデバイスの特性にかかわる課題もあり、結晶面の品質を適切に評価することが不可欠であるが、従来の評価手法だと「測定に時間がかかる」「詳細な情報が得られない」といった問題があった。

結晶面の形状を約30分で評価

 そこで研究チームは、新たな評価手法を開発した。GaNウエハーを回転させ2方向以上からX線の回析強度を測定し、数学的に解析する手法である。これにより結晶面全体の「ゆがみの方向」と「大きさ」を一度に、定量的に可視化することができる。大型放射光施設「Spring-8」のシンクロトロンX線を用いて、直径が2インチのGaNウエハーを評価した。これによると、数十μmの空間分解能で一度に結晶面の形状を可視化でき、約30分で結晶品質を評価することができたという。

 評価に用いた試料は、GaNウエハーに厚み3μmでGaNを成長させている。試料の全面にほぼ単色平行のX線を照射し、結晶格子面から回析が生じるように、X線の入射角を調整した。入射X線と試料表面の角度は約0.6度である。さらに、回折強度が最大となる入射角0.6度付近で、入射角を25秒単位で変えて、その回析像を2次元X線検出器で測定した。こうした方法で、試料を表面法線周りに120度回転させ、測定を繰り返し行った。

新たに開発した測定手法の概要 出典:NIMS

 測定の結果は、結晶面にゆがみがあれば、その方向を「矢印」で示す。ゆがみがなければ矢印ではなく「点」で表示される。測定に用いた試料には矢印が見られ、局所的なゆがみがあることが分かった。矢印の傾きの絶対値を見ることで、ゆがみの分布も分かるという。解析結果から、今回の試料は、±0.03度の範囲でゆがみがあると判断した。

左が2インチGaNウエハーの結晶面におけるゆがみ方向。右はその大きさを濃淡で表示した例 出典:NIMS
結晶面のゆがみを定量的に表示した例 出典:NIMS

 NIMSは今後、パワーデバイスの特性とGaNウエハーにおける結晶面形状との関係性などについて研究を進める予定だ。

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