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» 2018年05月22日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(49) 働き方改革(8):私を「疾病者」にしたのは誰だ? 労働と病(やまい)の切っても切れない関係 (4/10)

[江端智一,EE Times Japan]

労働者は、一体どんな“疾病”を抱えているのか

 ところで、私たちは、都合よく、「自分が平均寿命あたりで死ぬ」と勝手に決めつけています ―― まあ、そうでも思わないと、生きていけませんが。しかし、実際のところ、私たちの明日の命が保証されている訳ではありません。

 そこで、今回、年齢別の死因の第一位を調べてみました。

 私のような所帯持ちの働き手は、就業期間中に死亡すると、残された家族に与える影響(特に経済的な打撃)を与えることになりますが、上図によれば、私が退職するまでの間に死ぬとしたら「自殺」か「がん」でしたので、この2つに十分注意し続けていれば「疾病を抱えて労働するリスク」は回避できる、と考えました。

 ところが、政府の資料に記載されている「日本の労働人口の約3人に1人が、疾病をかかえながら生きている(約2000人万)」と、自殺(年間約2万人)、または、がんによる死亡者数(年間約40万人)の差が大き過ぎるのです。

 調べ直してみたら、「疾病を抱えている労働者の病気」の内容が大きく違っていました

 トップはぶっちぎりで、「高血圧」で、「メンタル」や「がん」は、4位以下となっています。

 私は、死亡者と疾病労働者を安直に関連づけて勘違いしていた訳です。これは、冒頭で述べた、駐車場のおじさんの「日本人の2人に1人は"がん"になる」が強く残っていたことと、「"がん"という言葉の重さ」を引っぱってしまったからだと思います。

 ともあれ、日本の労働人口の3分の1は、このような疾病状態です。この事実からも、先ほどのアンケート結果「自分は健康である」との回答が、単なる『自分の希望の表明(あるいは"健康ブランド"へのこだわり)にすぎない』ことの、もう一つの証拠にもなっていると思います。

 また、トップ4の疾病が、他人からは「分かりにくい(発見されにくい)」病気であるとも言えます(まあ、そもそも、病気というのは本人が申告しない限り、ほとんどの場合、見つかりません)。

 この"分かりにくい"、疾病を抱えている労働者の病気の特徴は以下の通りです。

 アレルギーを除けば、高血圧、心臓病、糖尿病も、その発病原因は、後発的で人為的な理由 ―― 過食、過酒、喫煙、肥満、運動不足、ストレス、その他 ―― が挙げられます*)

*)もっとも、加齢、体質、遺伝などもあります。

 さらに、高血圧や心臓病の場合は、「喰うな」「飲むな」「吸うな」「動け」「走れ」「クスリでしのげ」などのような、生活習慣の改善、日常の運動、あるいは定期的な医薬の摂取などで、完治しなくとも死に至る危険から離れることができ、仕事を続けられることもあります。

 糖尿病の場合は、体内のインスリンという物質を製造する機能が壊れることで、食物をエネルギーに変換できないという、厄介な疾病で、しかも、その機能は原則として回復しません。ですから、糖尿病の方の中には、食事の前に、自分でインスリン注射を行う方がいるのです。

 アレルギーの場合は薬で対処するしかなく、それでも効果がなければ、アレルギーの原因となるものから逃げ回るしかありません。ただ、人によっては、「職場のどこにいてもアレルギーの原因から逃れられない」という人もいます。こうなると、職場にいること自体が不可能となり、深刻な事態に陥ってしまいます。

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