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私を「疾病者」にしたのは誰だ? 労働と病(やまい)の切っても切れない関係世界を「数字」で回してみよう(49) 働き方改革(8)(7/10 ページ)

» 2018年05月22日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

離職の理由は「自罰的」?

 ここからは、「疾病を抱える労働者が離職する理由は、自罰的なものである」という仮説を立てて、これを検証して行きたいと思います。

 まず、この反例としては、「疾病を抱える労働者であっても、働き続けてもらいたいという使用者(経営者)が存在する」ことを示すことができれば、上記の仮説は、容易につぶせると考えました。

 そこで、Google検索を使って、以下のような調査を行ってみました。

 結論として、私はそういう使用者(経営者)を見つけ出すことはできませんでした。調査前から、『少ないだろうなぁ』とは予想していたのですが、まさか、ヒット数ゼロになるとは思いませんでした。

 政府は、この「働き方改革」で、疾病を抱える労働者の保護を実現しようと頑張っています。その目的は、ひとえに、労働者(特に熟練労働者)の保護を図ることで、国内の生産性を維持したい ―― この一言に尽きます。

 しかし、私が調べた限り、疾病を抱える労働者の保護を訴えているのは、(A)疾病を抱える労働者自身と(B)政府だけです。

 この問題は、政府より、むしろ企業の方が、深刻かつ緊急の課題であるはずなのですが、それが、どうにも見えてこないのです。

 そこで今回、私は、非常に簡単な机上シミュレーションを実施してみました。内容は、

疾病を抱える労働者は、どこまでパフォーマンス低下が認容されるか」です。

 もちろん、このようなパフォーマンス比較が、人道的な観点からアウトであることは承知の上ですが、私は、自分を納得させるだけの理由が知りたかったのです。

 まず、基本となる労働者のパフォーマンスを、生産性(生産能力)として把握することにしました。生産性は、賃金との強い連動があると考えて、当初は、以前使った以下の線形式を使おうと考えていました。

 しかし、日本の賃金形態はいまだに、年功序列の制度を維持しており、生産性と賃金が単純な線形の関係にあるとは思えません(ちなみに、私は私のリタイアまでは「能力主義」に断固として反対し、リタイアの次の日から賛成派に与(くみ)する予定です(著者のブログ)。

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