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» 2018年05月22日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(49) 働き方改革(8):私を「疾病者」にしたのは誰だ? 労働と病(やまい)の切っても切れない関係 (9/10)

[江端智一,EE Times Japan]

今回のまとめ

 それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。

【1】政府主導の「働き方改革」の重要項目の1つである「病気と労働」について検討を行いました。

【2】私たちの、「通院」の頻度と「病気とけがをしているという自覚」がマッチしていないということ、そして、「通院」をしていながら、「自分は健康である」という認識を持ち続けているという奇妙な傾向をデータから読み取りました。

【3】就労世代の死因のトップ2は「自殺」と"がん"であるが、疾病を抱えている労働者の病気のトップ4は「高血圧」「糖尿病」「アレルギー」「心臓病」であり、それらが、全労働者約6000万人の疾病労働者の3分の1(2000万人)を占める主要因であることを説明しました。

【4】現代の会社組織には、「労働者」を「疾病を抱える労働者」に変えてしまう機能が漏れなく付いており、「疾病を抱える労働者」になってしまった責任が、「労働者」と「会社」のどちらかにあることを簡単に決めることはできない、という事実を説明しました。

【5】"がん"は、この問題を理解する最良のユースケースであり、「疾病を抱える労働者」が、自らの意志で離職しているケースが多いことをデータで示しました。また、現在、「働き方改革」で、政府が「疾病を抱える労働者」の保護を呼びかけていますが、企業側がそれに応じているようには見えないことも示しました。

【6】企業側が応じていない理由として、生産性の値を使った机上シミュレーションの結果を示しました。その結果、保護を行っても、得られる利益が期待できないことがあることを、数字で示しました。


 以上です。


 ことし(2018年)の1月から3月の期末までの忙しさは、人生の中でも忘れられない激務の日々でした。

 突発の特許明細書の執筆、国際学会のカンファペーパーの執筆、研究報告書の執筆、ほぼ毎日のソフト外注の方との修正プログラムの交換、そこに、B型インフルエンザで数日間の出社停止をくらい、その直後、義父の葬式に参列するために空港に走り、そして、

―― 私のプログラムが訳の分からない挙動をする。

 これがもう、絶望的に恐ろしかったです。


 詳しいお話はできないのですが、私のプログラムの中で発生した100万人の人間の中の、23万人が行方不明になったとき、私はディスプレイの前で半狂乱になりました

 こうなると、数十万人中の1人を選んで、丹念に追跡しなければなりませんが、この追跡プログラムを作るだけで、別のシステムが作れるくらいの労力が必要となります。

 それでも追跡プログラムを作って、デバッグして、コンパイルして、実行する前に、手を合わせてひたすら祈る、それを100回単位のオーダで繰り返し続ける ―― これしか打つ手がないのです。

 「予想通りに動かないプログラム」というのは、本当にもう、たとえようがないほど怖いもので、そして、そういうプログラミングを毎日繰り返し続けて、私は心身共に限界の状態にあったのです。

 食欲不振、不眠は当たり前。浅い睡眠の夢の中でもプログラミングを続け、朝、気がついた「バグ」をノートに記載し続けました。

 加えて、肉体の方にも異常が発生するようになりました。両腕の付け根あたりで、原因不明の痛みが続き、腕の角度によっては、息が止まり、しばらく動けなくなる程の痛みを感じるようになり、「パソコンのスイッチを押すために、腕の角度を気にする」ことが必要になりました。

 専門の医院(ペインクリニック)にも行って、各種の検査を受けたのですが、結果は『原因不明』という診断で、現在も、鎮痛シップで、場当たり対処中です。


 そんな「心底から疲れ果てていた」ある日のこと、私は、二人の娘(大学2年生、高校1年生)に語りかけました。

「いいか、自分の能力以上のことに挑戦してはダメだぞ」
「仕事は、自分の能力の上限の8割で設定しろ」
「自分の能力が『低く査定された』としても、それが何だというのだ?」
「『できる』と思えても、『できない』と言い張る勇気こそ、より良い人生を行きるコツだぞ」

―― と。

 娘たちは、疲労困ぱいして錯乱状態の父親を、生暖かい目で見つつ、

『分かったよ、パパ。私たち"挑戦"なんかしないから、安心してよ』

と言いました。

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