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官能の人工知能 〜深層学習を最も分かりやすく説明するパラダイムOver the AI ―― AIの向こう側に(22)(2/10 ページ)

» 2018年06月04日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

前段その2

 しかし、私は、もう1つの仮説として、以下のようなことを考えています。

 個人的なエロの嗜好性のマッチングに始まり、コンビニでの購入、その保管(例:ベッドの下)、そして廃棄(例:廃品回収日に、玄関の前にエロ本を積み上げる勇気(?))に至るまで、そこには、「エロ本の『ライフサイクル』としての様式美」があるのではないか ―― と。

 ネットのない時代においては、エロ本には、その本の価値だけでなく、その所有者に対するリスペクトがありました(エロ本を友人に貸せる人間は「勇者」で、借りる人間は「ヘタレ」)。

 また、エロ本には、当時、画像としての制約(いわゆる、モザイクなどの画像処理)が加えられており、そこに一種の「制約としての官能」があったのです。

 ―― それは、あたかも、俳句が5・7・5の語句の中に、1つの世界観をパッケージするのと同様の、情報圧縮技術です。

【その2】

 少し前、嫁さんと長女(19歳)に質問をしました。

質問:ボーイズラブ(BL)は好きか? 今、好きでないなら、今後、後発的に好きになれる可能性はあると思うか?

 2人の解答は以下の通りでした。

嫁さん:「その可能性は絶無に近いと思う。もし、世の中で、BLが唯一の愛の形というのであれば、可能性はあるかもしれないが、私の世界はそうなってはいないから」

長女(19歳):「私は愛に対してこれといった信念はないので、世の中のマジョリティーがBLの愛を受けいれるようになれば、私もそこに「流される」という自信はある」

江端:「ほう。ちなみにマジョリティーって、どれくらい?」

長女:「6割くらいかな」


 ここまで読んできて、「一体何の話……? ここってテクノロジーの記事が読めるサイトだよね?」と不安になってきた方、ご安心ください。大丈夫です。

 これは、EE Times Japanが提供する、連載「Over the AI ――AIの向こう側に」の第22回で、今回のテーマはニューラルネットワークの、特に「深層学習(後半)」に関するものです。

 冒頭の2つの話は、今回の深層学習を理解する上で、非常に重要な示唆になっています。

 なぜなら、今回私は、恐らくAI技術に関する解説としては、人類始の試みとなる、

―― 深層学習を、「エロ本」や「BL」のパラダイムから解説する

に挑戦してみたいと思っているからです。

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