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台湾のEV戦略、PCでの“成功の法則”は通用するのか自動車市場参入への模索(2/3 ページ)

» 2018年06月05日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

なぜTeslaは台湾に目を付けたのか

 Chou氏によると、Teslaは、まだ自動車業界においてほとんど無名だったころ、結束の固い自動車サプライチェーンになんとか参入しようと悪戦苦闘していた。そこで、同社にとって初となる商用車「Tesla Roadster」用のコンポーネントを探すべく、台湾にエンジニアチームを送り込んだ。

 Tucker氏がLinkedInに投稿した記事によると、同氏は開発チームを率いて、協力的なサプライヤーを探すだけでなく、Teslaが要求する高い基準に対応可能な、自動車分野以外のサプライヤーを開拓するという困難な課題にも挑戦したという。

 Teslaチームは、自社のニーズを満たすためのソースとして、他のアジアの国々についても検討したのではないか。なぜ台湾を選んだのだろうか。

 Tucker氏は、「確かに、私は当初、アジア全体を検討していた。中国や日本、韓国、タイなどへの赴任を経験したことで、台湾のサプライチェーンにメリットがあることが分かるようになった。台湾のサプライチェーンは、中小規模の家族経営のサプライヤーがその大半を占めているため、非常に柔軟性が高い。中国やタイ、日本には見られない特長だ」と述べている。

 同氏は、「電気自動車(パワートレイン)の場合、このような柔軟性は非常に重要だ。新技術を開発していく上で、新しいコンポーネントや組み立てを実現するには、既存の製造プロセスを変化させる必要がある。このため台湾は、電気自動車メーカーを設立する上で、最適な選択肢だったといえる」と付け加えた。

 Teslaの初期段階の技術が台湾で開発されたことは、周知の事実である。Chou氏によると、同社にとって初となるTesla Roadsterは、部品/コンポーネント全体の30〜40%を台湾のサプライヤーから調達したという。

 例えば、Roadster用のエンジンは台湾Fukuta Electronicsから、インバーターなどの制御回路はChroma ATEから、それぞれ調達したという。

台湾の電気自動車メーカー

 台湾には現在、優れた電気自動車メーカーが少なくとも2社存在する。Xing MobilityとElectric Power Technologyだ。

Royce YC Hong氏

 Xing Mobilityの共同創設者であり、CEOを務めるRoyce YC Hong氏は、「当社は、ラリー車のような電気スーパーカー『Miss R』で広く知られているが、ハイパーカーの組み立てや販売は手掛けていない。Xing Mobilityの位置付けは、電気パワートレインのサプライヤーである。最も要求水準の高い性能をターゲットとした、当社の『Electric Drivetrain』技術の研究開発プラットフォームおよび概念実証として、電気ハイパーカーを選択した」と説明する。

 Xing Mobilityは、限定生産(19台)を行っており、1台当たりの販売価格は100万米ドルだという。Hong氏は、100万米ドルという価格によって、「最先端の材料と大胆な手法を採用し、性能目標を達成することが可能になる。従来の業界水準や手法では実現できないような、バッテリーやドライブトレインなどの画期的な技術に、活力を与えることができる」と述べている。

 では、Miss Rは、Teslaが2020年に発売する予定の新型「Roadster(ロードスター)」と、どう違うのだろうか。

 既存のスポーツカーと変わらないドライビング体験の実現を狙ったRoadsterとは対照的に、Miss Rは、まったく異なる構想で開発されたと、Hong氏は語る。4つの350Vモーターを搭載するMiss Rは、わずか1.8秒で時速100km、5.1秒で時速200kmまで加速するという。最高時速は270kmを超える。

Xing Mobilityの「Miss R」 出典:Xing Mobility(クリックで拡大)

 明らかなのは、Xing Mobilityが、他のEVメーカーと競うつもりなどないことだ。Hong氏は、同氏の役目は、「クルマの電動化を検討している全てのメーカーを技術的にサポートすること」だと述べる。つまり、“世界規模の自動車メーカー”を目指すTeslaとは違い、Xing Mobilityは、「商用車、レーシングカーなどを含め、あらゆる自動車メーカーにパワートレインシステムを提供することを目指している」(Hong氏)のである。

 Electric Power Technology(以下、Eptech)は、台湾に本拠を置くもう1つのEV関連メーカーだ。Xing Mobilityとは異なり、スタートアップ企業ではない。電動工具製造会社として1987年に創立されたEptechは、電動工具や部品を製造、販売している。

 Eptechは、研究開発プログラムを開始した10年以上前から、EVに関心を示していた。2015年までに、同社は「Frankfurt Auto Show」で、「Thunder Power Sedan」のコンセプトカーを発表した。2017年、EptechはEV開発チームを、Thunder Power EVとしてスピンアウトさせている。

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