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» 2018年06月15日 09時30分 公開

福田昭のデバイス通信(150) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(10):シリコンフォトニクスで使われる主な光変調器

前回、光信号の振幅や位相などを連続的に変化させるデバイス「光変調器」の基礎を説明した。今回からは、光変調器の具体的な解説に入る。

[福田昭,EE Times Japan]

2つの原理に基づく3種類の光変調器

 半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前々日に「チュートリアル(Tutorial)」と呼ぶ技術セミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、6件のチュートリアルが開催された。

 その中から、シリコンフォトニクスに関する講座「Silicon Photonics for Next-Generation Optical Interconnects(次世代光接続に向けたシリコンフォトニクス)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者は、ベルギーの研究開発機関imecのJoris Van Campenhout氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前回は、光信号の振幅や位相などを連続的に変化させるデバイス「光変調器」の基礎を説明した。今回からは、光変調器の具体的な解説に入る。

 前回でも述べたように、シリコンフォトニクスで使われる光変調器には、主に3種類の方式が存在する。その中で2つの方式はいずれも同じ原理に基づく。シリコンのキャリア(伝導電子と正孔)濃度を制御して屈折率を変える「エレクトロリフラクティブ効果」を光の変調に利用する。残りの1方式は別の原理である、シリコンに電界を加えて光の吸収率を変える「エレクトロアブソープション(電界吸収)効果」を利用する変調器である。

エレクトロリフラクティブ効果を利用する変調器(ER変調器)

 エレクトロリフラクティブ効果を利用する変調器(ER変調器)には、マッハツェンダ(Mach-Zender)型干渉器を利用した変調器(「マッハツェンダ変調器」あるいは「MZ変調器」)と、シリコン光導波路のリング共振器を利用した「リング変調器」がある。

 マッハツェンダ型干渉器とは、波長と位相のそろった光ビームを2本の対(ペア)となるビームに分割(分波)し、それぞれに異なる位相を与えてから合流(合波)させる素子である。位相差の違いによって、合波した光ビームの強度が変わる。強度が最大となるのは、位相差がゼロあるいは360度のときである。強度が最小となるのは、位相差が180度のときだ。

 シリコンフォトニクスの 「マッハツェンダ変調器」では、光ビームが通過するシリコン光導波路に電流を流して屈折率を変化させることで、2本の光ビームに位相の違いを与える。

 「マッハツェンダ変調器」の特長は、光変調の帯域幅が広いことと、温度変化に対して安定であることだ。そして弱点は、外形寸法が長さ方向で1〜3mmとシリコンフォトニクスとしては大きめになることと、変調時の消費電力がかなり大きくなることである。

 「リング変調器」は、シリコン光導波路と光導波路に近接配置したリング共振器で構成される。リング共振器の共振波長では光がリング共振器に閉じ込められるので、吸収が大きくなり、共振波長に相当する光の強度が低下する。光を変調するときは、リング共振器に電流を流して屈折率を変化させることで、共振波長をずらす。

 「リング変調器」の特長は、外形寸法がすごく小さいことだ。リング共振器の直径は約10μmしかない。そして変調時の消費電力が小さい。弱点は、光変調の帯域幅が1nmと極めて狭いことと、わずかな温度変化によっても共振波長が変化することである。

シリコンフォトニクスで使われる主な光変調器とその利害得失。左が「マッハツェンダ変調器」、中央が「リング変調器」、右が「EA変調器」。出典:imec

エレクトロアブソープション(電界吸収)効果を利用する変調器(EA変調器)

 エレクトロアブソープション(電界吸収)効果を利用する変調器(EA変調器)では、「フランツケルディッシュ(Franz-Keldysh)効果」を利用した変調器が一般的だ。「フランツケルディッシュ(Franz-Keldysh)効果」とは、半導体に高い電界を外部から加えると、バンドギャップに相当する波長(基礎吸収端)が長波長側にずれる(見かけ上はバンドギャップが狭くなる)現象を指す。この効果を利用すると、バンドギャップよりも少しだけ波長の長い光の吸収量を、電界の大小によって大きくしたり、小さくしたりできる。すなわち光を変調できる。

 「EA変調器」の特長は、外形寸法が50μmとかなり小さいことと、変調時の消費電力が低いことだ。弱点は、光変調の帯域幅が30nmとやや狭いことと、温度変化によって光の吸収量が変わることである。

(次回に続く)

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