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世界初「ディスプレイ指紋認証スマホ」分解で感じた中国Vivoの魅力製品分解で探るアジアの新トレンド(29)(2/3 ページ)

» 2018年06月18日 11時30分 公開

有機ELパネルの裏側に4つのチップ

 図2は、X20 Plus UDを分解し、有機ELディスプレイパネルを裏返した様子である。

図2:「Vivo X20 Plus UD」のディスプレイパネル裏側 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図2に示した部分には大きく4つの半導体チップが埋め込まれている。詳細は省略するが、有機ELパネルの裏側には一部異なる形状部があり、そこにフィットする形で指紋を読み取るセンサーチップが埋め込まれている。センサーの方式はSynapticsのWebサイトに掲載されているので、ここでは省略するが、他のスマートフォンの指紋認証と原理は同じになっている。指紋読み取りセンサーの先にはセキュリティ処理用チップや指紋のパターン認識を担うデジタルチップが備わっている。ともにSynaptics製チップで2つはペアで使われるいわゆるチップセットになっており、さらにそれがフレキシブル配線まで含めたモジュールとして提供されているわけだ。

 指紋センサーで読み取った指紋が登録された指紋合致するならばメインのプロセッサの起動がかかりスマートフォンが操作できる。他2つのチップも有機ELディスプレイパネル近傍に配置される。1つはディスプレイを駆動するためのディスプレイドライバーだ。Synapticsは2014年にルネサス エレクトロニクスの子会社で液晶ドライバーを展開したルネサスエスピードライバ買収している。そのため、有機ELのディスプレイドライバーもSynaptics製、が採用されているかと思われたが、有機ELディスプレイドライバーは、顕微鏡を使ってチップ上に記されたメーカー名を確認したところ、Samsung製のドライバーであった(有機ELディスプレイもSamsung製)。4つのチップのうち、残るもう1つはパネルのタッチコントローラだ。これはSTMicroelectronics製だった。

Synaptics製チップをさらに観察

 図3左側は、指紋センサーチップと、指紋認証チップそれぞれをチップ開封後に顕微鏡を用いて、チップ上の製品型名と開発年、プロセステクノロジーを確認した様子である。

図3:左が「Vivo X20 Plus UD」に搭載されている指紋センサーチップとIDセキュリティ認証チップとその刻印。右は、「Vivo X20 Plus UD」に搭載されているカメラモジュール (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 セキュリティチップ、センサーチップともにSynapticsの社名とともに、2016、2017という開発された年を示す数字が記載されている。まさに昨年(2017年)に開発されたばかりのチップが、早々に製品へ搭載されたことになる。また図3右側は、デュアルカメラ部のメインカメラのCMOSセンサーを取り出した様子である。実際にはこれ以外にサブカメラ(深度用)、さらにディスプレイ側にインカメラの計3基のカメラが備わっている。指紋認証をディスプレイ下部に埋め込み、本体には側面に電源ボタンと音量ボタンだけが残っている、これがX20 Plus UDである。

 X20 Plus UDが採用したディスプレイに指紋認証機能を持たせる技術は瞬く間に中国の多くのメーカーに波及し、2018年を代表するメジャー技術の1つになりつつある。現時点(2018年6月)でHUAWEI製「Mate RS」、OPPO製「A59」、OnePlus製「5T」なども、ディスプレイ指紋認証技術を採用した。また本技術はスマートフォンだけでなく、車や玄関のドアをはじめ、(勝手に開けられない)冷蔵庫など応用市場も広く、数々のアイデアが生み出されているようだ(SynapticsのWebサイトにもさまざまな想定応用例が掲載されている)。

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